手野百貨店
第3キャンパスの勇王キャンパスから、手野バスに乗って約40分。手野駅前にやってきた。手野市の中心地となっているだけあって、日中といえども相当な賑わいだ。市役所や手野百貨店もあり、近くには手野市駅前商店街がある。カラオケ屋だって何軒があるほどだ。
「それで、どこに行くの?」
「楽しみは後で取っておく?」
上野はにやにやしながら膳所と話しあっている。膳所も上野と同意見のようだ。秘密にされると、とても気になるものだが、私は結局なにも言うことはなかった。代わりに、お昼は私が好きなお店をおごってもらうことに成功した。
「さて、お昼も食べたし。そろそろ話してもらおうかね」
私は店から出てきたばかりの2人に聞く。互いに目配せをしてから、こっちこっちと私を百貨店の方へと連れて行った。
手野百貨店は地下2階、地上10階建。1926年、大正15年にこの地に建てられて以来、3度にわたる大改装を経て、今の姿になっている。当時から変わっていないのは玄関部分で、総大理石でつくられた高さが3階部分にかかるほどあるアーチは、誰もが見上げるほどの見事な花々の彫刻が施されている。私たちはそんな1階のアーチをくぐり、店内に入る。ちょうどいい室温が保つための送風機だろうか。そよそよと微弱の風が漂ってくる。その一方で、活気に満ちていて、4メートルほどある通路は、やっと1人が通れるほどの細さまで、人の壁があった。
「こっちだよ」
上野が案内してくれたのは、エレベーターだった。何も言わず、その9階へと向かう。エレベーターが3回ほど過ぎてから、やっと私たちが中に入ることができた。
エレベーター内の案内板で9階部分をじっと見ると、どうやら催事場のようだ。そこで、壁を首の向きを変えてみると、博覧会をしているらしい。それも、どうやら魔術の博覧会のようだ。これがお楽しみということだろうか。