授業後
授業で教わったことと言えば、感情と魔法の関係だった。
人は感情を持っている。感情とは、想いのこと。その想いは、魔法で左右するこということはできない。魔法は、物質的なものに左右されるものであり、それが原理だという。そもそも、魔法と言うのは、魔術粒子と呼ばれるものが作用して行われているらしい。だから、量子力学とかが問題になるそうだ。
そんなこと、私に言われてもちんぷんかんぷんだ。
「ねえ、先生が言っている意味、分かった?」
すぐ横にいる友人に話を聞こうとして、そちらを見る。すでに上野は机の上で腕を組んで、そこに顔をうずめるようにして寝ていた。私は頼りにならない友人を見捨て、先生の話に集中することにした。
先生はきっかり1時限目終了時刻の10時半まで授業をした。チャイムが鳴り、授業終了を知らせると同時に、キリが良いタイミングで授業も終わったのだ。それは慣れているからだろうとしか思えないほどの手際のよさだった。そして、驚くべきことに、ぴったりこの時間に起きた上野であった。
「いやあ、よく寝たぁ」
がたがたとみんなが動いていて、私も片付けているさ中、やっと起きた。一旦伸びをしてから、何やらまだ眠そうな顔をしている。
「次、授業入ってる?」
「ううん、ないけど」
どうしたの、と私が聞くと、上野はニヤッと笑っていた。どうしようか悩んでいると、私に声がかけられる。
「東洛さん、いたんだ」
「あり、膳所さんじゃん」
上野は声をかけた正体を見破るなり、すぐにいう。私が振りかえると、膳所が手を振って、すぐ後ろの列の席に座っていた。
「そこだったら、はっきりと分かるでしょ」
私がカバンを持ちながら言うと、膳所は笑っていた。
「まあまあ。次、入ってないんでしょ。どうする、駅前までいってご飯かなと思ってるけど」
「駅前って、手野駅?」
手野駅は、手野鉄道の駅の一つで、私たちがいる大学がある手野市の主要駅でもある。市役所やバスロータリーが駅前にあり、商店街や、手野鉄道の百貨店なんかもある。今は、手野百貨店とか言う別会社になっているらしいが、部外者にとっては同じことだ。
「あー、もしかして百貨店?」
駅前と聞いてピンと来たようで、上野が膳所に聞く。膳所が喜んで微笑んでいるところから見て、どうやらそのとおりらしい。
「手野百貨店でしょ。なにがあるの」
「ふっふっふー、それはお楽しみ」
語尾にハートマークが付きそうな、そんな甘い声を出している上野と、相変わらず微笑んだままの膳所に少し心配になりつつも、私は二人についていくことにした。5限目の午後4時45分の授業には間に合うだろうと思いつつも。