恋愛魔法
「えー、付き合いだしたの?」
翌日、私が上野に言うと、思いっきり真顔でそういわれた。
「うん、もともと膳所も私のことが好きだったらしいし。だから、いっちゃえって」
「いっちゃえって、またすごい思い切りの良さだね」
「ねぇ、でも、そう思ったのよ」
私は、大学のすぐ外にある喫茶店で軽めの昼食をとっている。今日はなんだか学内で食べる気にならなかったのだ。まあ、みんなの視線が冷たいということも関係している。
私が膳所に告白したっていう話は、いろいろ歪曲され、脚色され、尾ひれがついたうえで加工されて伝わっていた。なにせ聞いた話では、私が外国に身売りされそうになっていたところを、銃器を撃ちまくりながら膳所が一人で駆けつけて、救出したというものまであった。どうしたらそうなるのかを、一度じっくりと聞いてみたい。
「でも、後悔はしない?」
「うん。後悔なんてしない」
占ってみようか、という上野の誘いを私は断った。
「いいの。だって、魔法にかかってるんだから」
「はぁ?」
何言ってんのという顔つきだが、私はきにしない。そこに店に誰かはいってきた。膳所とトーマだ。私が玄関を観れる位置にいたから、手を挙げて合図をする。
「やっと授業終わったぁ」
「お疲れ様」
当然のように、私の横に膳所が座る。上野の横にトーマが座ったら、上野が話し出す。
「それでぇ、一体全体お二人はどこまで進んだんでぇ?」
意地悪な顔つきになって、上野が聞く。トーマも、なぜか興味津々だ。そして私の手が、自然に膳所の手に触れる。ゆっくりと指を絡めて、そしてしっかりとつなぐ。
ああ、今日もどこか遠くで恋愛魔法がかかる音がする。




