表彰状
事件のあと、膳所、トーマ、上野の3人は私を助けたことと犯人の捕獲に功績があったとして、警吏庁長官から表彰を受けた。私はそこに同席して、彼らに拍手することができた。
その式の後、私は膳所達のところへと駆け寄る。
「ありがとうね、あの時、とてもかっこよかった」
「いや、こっちも必死で何が何だかな」
言いつつも、トーマと上野の2人はわずかに距離を取っていく。周りには私たちだけしかいないような錯覚も覚える。
「ね、あとでちょっといいかな」
「おう、あまり時間はないけどな」
膳所が答えてくれる。そう、私の気持ちがやっとわかった。膳所の気持ちがやっとわかった。私は彼が好きなんだ。彼と一緒にいたいんだ。それが分かった。だから、それを伝えたい。きっと彼も同じ気持ちだ。相違信じてる。
祝賀会のような立食パーティーが終わると、私と膳所は二人だけで道を歩いていた。満月が空に浮かんでいる。たくさんの人が道路の歩道を行き交っている。でも、今は私と膳所の二人だけだ。
「月が、きれいだね」
ふと膳所が空を見上げてつぶやく。私も思わず空を仰いだ。空には星が光っているが、月が真ん中で私たちに微笑みかけてくれている。
「……私、死んでもいいわ。そう答えてほしい?」
膳所の言葉に私は答える。使い古された言葉。でも、まだまだ新しい。気持ちはすでに高ぶっている。これまでにないほどに。どんどんと膳所は近くなる。
「…そうだね。それがほしい答えではあるね」
膳所の一言。それが私をさらに上げる。もはや月は手に届きそうなところにある。
「好き。大好き。愛してる」
瞳から、月が一滴落ちる。それがこぼれる前にやさしく、膳所は親指で拭ってくれた。
「僕も、だよ」
やさしい言葉。それが聞きたかった。ああ、やっといえた。やっと聞けた。
「……ね、付き合おう」
「答えは知ってるだろ」
もう、言葉はいらない。魔法もいらない。何もいらない。そう真剣に思えるほどの幸福感。
昔、授業で習った。感情は魔法で扱うことはできない。脳を直接いじっても、それは幻想の産物だと。でも、この感情は違う。恋愛魔法ともいうべき、恋の魔法だ。きっと彼との終わりを迎えるまで解けることのない、きっと一生解けない魔法に、私はいつの間にかかかっていた。