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吸血女王  作者: 妄想日記
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第三話 目覚め再び

 目を覚ますと、そこは荒地だった。

 腰ほどの高さまで草が生い茂り、地面がよく見えない。


「あ、あれ?何で私生きてるの……?」


 確か私は賊たちにナイフを投げつけられて死んだはず。

 顔や身体をぺたぺた触って確認してみるも、傷らしい傷は見当たらない。

 でもほぼ全裸。私の身体に包まっていた毛布は…………く、腐ってる!!!


 私はすぐに毛布を脱ぎ捨てて全裸になった。

 うぅ、こんな野外で全裸になるなんて思ってもみなかった。この物凄い開放感が嫌過ぎる。私はどうやら裸族にはなれないらしい。とは言っても、今の私は誰がどう見たって裸族か露出狂だけど…………。


 でも本当になんでだろう?

 もしかして私を殺したふりしてどこかに捨ててきた?

 いや、そんなはずはない。だって私は自分の身体に刺さったナイフの感触を覚えている。

 とりあえず立ち上がろうとすると、手にコツンと何かが当たった。

 見ると一本の錆びたナイフが落ちている。

 私が持っていたのもちょうどこんな感じだったけど、それにしても錆が酷い。

 これじゃあ切れ味もなにもあるわけないけど……一応持っとこう。


 立ち上がって周りを見ると、私の腰くらいまで伸びた草が視界一面に広がっていた。

 草原?荒野?

 全裸でこの草むらを歩くことを想像すると、鳥肌が立ってくる。

 あ、でも草ばっかりでもないみたい、草の中にぽつぽつと木の建物が立っている。

 でもこの荒れ具合、もしかして廃村なのかな?


 私は錆びたナイフを片手に草を掻き分けながら一番近い小屋に向かった。

 中に入るとなんとなく見覚えがあるような気がする…………というか、私の着ていた服が床に落ちてぐちゃぐちゃになっている。

 まるで踏まれまくった後に何年も放置されたかのように。

 手に取ると服はすぐに破れ落ちてしまった。

 えぇぇぇぇぇぇぇぇ。

 いやいや、いくらなんでも私の服はこんなにボロボロじゃなかったから!

 とは言えこの小屋本当に見覚えがあるんだよね。

 あの机なんか私が思いっきりぶつかって痛かった机にそっくりだし。

 うーーーーん。

 よし、服を探そう!

 どうせ考えたって分からないしね!

 せっかく生きてるんだからとにかく人間らしい格好がしたい!


 というわけで私は近くの家を全部まわってみた。

 当然人がいる気配なかったけど、元々人が住んでいた形跡はあった。

 形跡というか白骨化した遺体がいくつもあった。

 もしかして賊に滅ぼされた村なのかもしれない。

 それなら村のものを私が有効活用しても大丈夫だよね?


 私は南無阿弥陀仏を唱えながらタンスから女性用の衣類を拝借しようと思って諦めた。

 理由はどれもこれも腐ってるか虫が酷かったからだ。

 やはり私は裸族になる運命なのかもしれない。

 とりあえず着るものがないので、裸を隠せるようにと皮で出来たマントで身体を覆い隠す。皮はまだ埃を手で払いのければ使用に耐えられるレベルだったから助かった。


 とりあえずこの廃村には目ぼしいものがなかった。賊に襲われたんだから当たり前と言えば当たり前かな。

 いつまでもこんなところにいたって仕方ないし、早く移動しよう。

 もしかするとまた賊が立ち寄ることもあるかもしれないし……。


 私はローブの中でナイフを握り締め、草むらを適当に歩き続けた。

 方向も道も分からない。

 でも私に出来ることは歩き続けることしかない。

 きっといつかは人のいるところに出られると信じて。


 信じて…………。


 信じて…………………………………………。


 信じ……………………………………………………………………………………うがああああああああああ!!!


 人なんていないじゃない!

 歩き続けて四日目に突入した私はついにキレた。

 お腹は空くわ喉は渇くわ疲れるわで全く碌なことがない!

 夜は怖いし、獣には警戒しないといけないし、警戒したところで襲われたらどうしようもないからただ怖いだけだし。

 やってられない!

 心がどんどんささくれたっていく。

 何で私だけこんなことに!

 今なら全世界の人の不幸を願うことだってできる気がする!


「うぅ、世界中の人が私よりちょっぴり不幸でありますように!」


 どうだ!参ったか!


 しかし天はやはり私を見放してはいなかった。

 もしかすると昨日のお祈りの効果があったのかもしれない。

 歩き初めて五日目。ついに私は見つけ出したのだ!道を。

 そう、街道である。

 どう見ても人や馬車が通り慣れて草の生えていない街道がそこにはあった。

 つまり後はこの街道を真っ直ぐ進むだけで必ずや街に辿り着けるというわけである。

 問題は右に行くか左に行くかだけど、遠目に街が見えるわけじゃないからどっちでもいいか。

 私はナイフを地面の上に立てらせてそのまま手を離した。


 ポテッ。


 よし!左!

 私は街道を左に向かってスキップした。

 軽やかな足取りで道をどんどん進んでいくと、そのうち城壁のようなものが見えてきた。

 今度は結構大きい街みたい。

 街道をすれ違う人たちがこっちをちらちらと見てくる。

 うーん、ぱっと見が裸足にローブだから目立つのかな?

 とは言え全裸になるわけにもいかないし。

 そこでふと私は足と止めた。

 ちょっと待って。このまま進んだら私、兵士とかに捕まるんじゃない?

 仮に捕まらなかったとしても、また危険な目に合うかもしれないし……。

 人間は学習する生き物である。

 そして私は学習した。

 男はカスであると!


 私はそっと街道を横道にそれていった。

 兵士に会うのは避けよう。街なんてこっそり入ればいい。

 どうせ中に人がいっぱいいるんだから、私一人紛れ込んだところで分からないでしょ。


 そう思って街の周りを歩いて見るが、城壁がずっと続いていては入れそうなところがない。

 となるとよじ登るしかないわけだけど…………登れるかな?

 高さは大人二人分よりちょっと高いくらい。

 石積だから手を掛けるところはあるけど、人の体重を支えられるほど出っ張ってはいない。

 ダメ元で登ってみよう。


 石積に手を掛けると、意外と簡単に掴めた。

 もしかして私って結構握力あったりするのかな?

 段差になってるところがちょっときついけど、登れないことは……ない……かな……ぐぐ。

 そしてついに城壁の頂上へ頭を出すと、見張りの兵士がいたので慌てて頭を引っ込めた。

 あぶな~……。

 見つかって、ないよね?

 それから壁に張り付いたまま二分ほどまって再び頭を出すと、兵士が見えなくなっていた。

 チャンス!

 私はすかさず城壁の天辺を飛び越え、そのまま飛び降りた。

 風圧を受けてローブがめくれ上がる。

 ちょ、私の裸!!!


 地面に無事着地した私は羞恥に打ち震えていた。


 死ねる!今の姿を見られたら色々な意味で死ねる!

 とにかく今はここを離れよう。とりあえず服を手に入れないことにはどうしようもない。

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