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貧乏少女と異世界転生  作者: 岩瀬 空
1章:終りの始まり
2/7

セルアド家の事情01

02


遠くで鳴く鳥の声が窓を開けた室内に届く。穏やかな日差しの午後。近くの大人達が楽しそうにティーパーティをしている姿を観察していた。(え、私はどうしてるかって…?生憎とこんな姿だから)


目線を下にすると紅葉の様に小さな自分の手のひら。気づいたら赤子になっていた。話を聞いてる限り異世界に来てるらしい…というかこの場合転生か。しかし元の記憶がなぜ御約束事に消えないのだろうか?世の中本当に何があるか分からないが、少なくとも勇者だの魔王だのというキャラになるつもりは全くない。穏やかに平和に生きていけたらいいなと思っている。前世の記憶持ちという小説のカテゴリがあるのは知ってたが、会話や感情にズレが生じるのではないかと心配だった。


「まぁ貴女の所も何とかやって行けて良いですわね?私の所なんて今では――」

「うちもゆとり何てないですし同じですよ?」

「そうですな…本当に口惜しい…あの連中のせいで…」



(また始まった…)


こっちで気付いた時から何度となく聞いてる会話。大人の事情なんて子供は分からないって元が大人だったから理解できてしまう。


「あんな新参者や卑しい者まで徴用して、我らを中央から遠ざけるなど許されぬっ!」

周りの大人がそれに同意する。


「前の王の時は良かったのに…本当にどうして我らが…」


彼らは…ぶっちゃけ役職から外され田舎に左遷された人たちだった。彼らの身に何が起きたのか。


この国は周辺国の中でも歴史ある大国だった。平和主義で戦争を極力起さず、外交の手腕と政略結婚で順調に領地拡大して成功してきた例だった。けれど長く続く国に付き物の腐敗も内部に存在していた。前国王はその象徴だった。


身分を傘に来て同調する貴族たちと共に不正や腐敗を繰り返し続けた結果、現在の王によって打たれたらしい。で、酷いのは王と同じくの末路だったけどそれ以外は大体が中央からの左遷って訳。現王の国民による評判は言わぬまでも高くて、彼らは中央に行く機会を待ってるけど上手くいかないからってこうやって愚痴をこぼしてるのだ。前は過激なのを聞いたけれど、ここ最近は下火らしい。



「ふふ、貴女のお嬢さんこっちを見てるわ。可愛いわね。」


突然話題を振られたのに私は慌てた。子供の為に用意されたベッドから眺めていたのだが、この伯母さんは良く気がつくらしく以前もこんなことがあった。


「あら、駄目じゃないの。今はお休みの時間でしょう?」と諭されまた布団の中に潜った。


「夫が死んでしまったけれどあの子たちが居るから気弱にもなれないわ」

「そうよねぇ、昔は箱入り天然だった貴女なのにねぇ」


体は子供でも頭脳は大人(某アニメ)それでも年相応の睡眠は必要だったらしく、いつの間にか寝入ってて気付いた頃にはすでに辺りは暗かった。



・・・


「びえぇぇん…!!」


小さい子独特の甲高い鳴き声が屋敷内に鳴り響いた。月日が経ち私は5歳になりました。この国の貴族は6歳から本格的な勉強を始めますが、我が家には父が居ないので将来の不安から早くに勉強を始めていました。まぁ、私はついでだったと思ったりするんですけど。ちらりと泣きじゃくってる双子の弟を見ると溜息を吐いた。サラリとした金の糸を思わせる髪に深い湖底を思わせる蒼の瞳。まだ幼いので端正と言う言葉はしっくりこないが、姉の私が言うのもなんだが絶世の美少年だろう。うるうると潤む瞳には保護したいと思わせるお姉さまが後を絶たないだろうなぁなど思ったりするのだが、姉の意見からするともっとしっかり逞しく育って欲しい。(まぁ相手は5歳なんだから年相応なのかも…けどなぁ)母に怒られてる弟ユーゼフを見て思う。


美しいと言う表現は当たっている。が、この子はどうも女性らしさが強いのが玉に傷というのだろう。やることする事女子が好むものが好きなのだ。刺繍やまま事、果ては料理などおよそ争いごとや駆け引きなどは嫌いらしく、歴史の授業をしていても教師に戦争とはいけない物だから自分は覚えたくないと困らせていた。まぁそれは一般的には心の清らかな少年で通るのかもしれないが、うちは田舎とはいえ領地がありコレが将来の領主なんだからそれでいいはずがない。と言う訳で、今日も母から説教を食らっていた。


「酷いよ母様…僕はお店を一杯にして経済で栄えさせていくからそういうのはいらない。お店が増えれば税金も沢山入って来るしそんな心配いらないじゃない。」


「貴方はね…!発展の仕方とか言って嫌だから逃げてるだけでしょうに!とりあえずこの国の貴族として常識と言われる物は覚えときなさいと言ってるのです!得手不得手はあるでしょう。けどっ、ハナっから嫌だから覚えないとは何事ですか!!やってから言いなさい!!」良い分としては母が正しい。


「やだ…やりたくない」


鬼の形相に変わった母の怒声と鳴き声。いつ頃からか頻繁になった日常。あれは当分続きそうだ。とりあえずうるさいから部屋を出て行った。


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