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絶句

作者: あいねこ

今日は、いつもよりも長くなってしまいました。

今朝私の家族が、死んだ。

家族の、飼い猫のユニが。

私が赤ん坊の時から、優しい瞳で、私を守ってくれたユニ。


「もうじきさね・・」

と、母が言っていたから「家族の一人が欠けたら、私の生活はどうなるのだろう」と考えた。

でも浮かばなかった。

だって、そんことありえないって思っちゃうほど、大切だったから。

だから母の言葉なんか聞かずにいつもどおり、いつもどおりユニと接していた。

「おはよ~!学校行ってくるね!」「ただいまぁ・・はぁ・・つかれたよ~」

とか、昔と変わらず接した。

だって、ユニがもうじき死ぬなんて、考えられないの。

でもやっぱり、体が弱っていって・・

気がつけば、歩くのも大変で、遂に寝たきり。

それを心配した母は行きつけの動物病院へ。

ガン、だった。


遂にユニは、与えられたご飯を食べなくなった。

食べさせようとしても、拒んだ。

まるで

「もう必要ないでしょう」

と、でもいうかのように。

朝だったか夜だったか、母は、泣いた。

静かに黙って泣いてた。

それを見た私は怒った。

「それじゃぁ、すでにユニが死んじゃいました、みたいじゃない!やめてよ!!」

だって、そうじゃない。

ユニはこうして生きている。

動けなくなっても、呼吸してるし、現に私の事を見つめてる。

「いいんだよ、お母さんのことは、そっとしておいてあげな」

私をなだめるようないつもの優しい目で。

何よ、みんなして。

ナンデそんなに、しんみりしてるの。

明日も明後日も、明々後日も、ユニはいるのでしょ?



そう思ってたのに。


テスト勉強中の私は、夜中まで起きていた。

そのせいで今日は中々起きれず、又休日ということからいつまでも布団から抜け出せずにいた。

ぬくぬくしてて、あぁ、ユニもぬくぬくなんだよね~。布団はユニに似てるね。

なんて考えてたら

部屋のドアが開く音がした。

振り向くと、ドアの向こうから母が、目を潤ませて、赤く腫れぼったくて、どこか感情が消えているような目で

「ユニがね、今日、死んじゃった」

って。

私は、そのとき、

泣くとか、わめくとか、しないで

確か

「ふぁい?」とか「なんだってぇ?」

と、答えてた気がする。

私は母の「死んじゃった」の意味がわからなくて

ただただ布団の中で

どういうこと?

って、頭ん中が真っ白になって、布団からもっと動けなくなった。

何だかぬくぬくしてた布団がイキナリ冷えて、鉛のように重く感じられた。

30分、1時間・・・、まだ、布団から出られない。

頭の中はずっと変わらずクルクルと、私をからかうかのようにリピートしている。


やっと出られた。

ふぅ。

なんて安堵のため息をついた。

母はさっき何ていったんだろう?

やっぱり布団から出ても理解はできなくって。

とりあえず朝食をとるためにリビングへ向かった。

母がいつもと変わらない様子で

「今日はうどんだから、スープは温めてね」

て言って風呂に入りにいった。

なんだ、寝ぼけて変な夢でも見ただけだったんだ。

そう思ってスープを温めて

うどんを頬張り、アニメを見る。

うん、おいしい。

もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ・・・・。

私ってば結構おなかすいてたんだなぁ

って思って夢中に食べてたら

風呂から母が出てきた。

それで私を見てポツンと言ったんだ。

「ユニに、挨拶しないの?ユニ、さびしがっちゃうよ」

私はいつもの習慣だった『ユニに挨拶する』事を忘れていた。

それに、母の言葉はところどころ、震えてかすれてた。

やっぱり、夢じゃ・・なかったの?



目はパッチリとさえてて、もう眠くないのに、死んじゃったって言われて

死んじゃったって、わかったのに。

涙一つ出なかった。

私はリビングで乾いた笑みをこぼしただけだった。

なんで笑ってるの、ねぇ何で泣かないの?

私、どうしてさびしくないの?本当はさびしいの?悲しいの?

ねぇ、ねぇ・・・・。

いつだったかな。

昔、ユニがご飯をつまらせて死にかけたことがあった。

そのとき、私はボロボロと涙をこぼし、「ユニが死んじゃったらどうすんのさぁぁ!!」と激しくわめいた。

なのに。

今は涙一つでず、テレビをみてあっはっはって豪快に笑ってる私。

すぐ、隣の部屋で、ユニがいるっていうのに。

私はリビングから離れて自分の部屋に戻った。


「・・・・・・・・・・・」

ふと、友達の言葉を思い出した。

『もし、もしだよ。もし、だからね!?・・・ユニがいなくなったら、泣きなさい。泣いて、わめいて、感情全部吐き出しちゃいな。わかった?絶対、だからね』


プチン

って何かが切れたみたいな感じがして

目があつくなってきて

視界が揺らぎ始めた。

ポタポタ

涙が一つ、二つと、出てきた。

それでやっと、私は本当に理解できたんだなって思った。

ポタポタ、ポタポタと。

涙は止まらなかった。




ねぇ、ユニ。

私さ、母も父もお兄ちゃんも嫌いで憎たらしくてさ

でもユニだけは、大好きだったし、愛してたの。

家族で一番愛してたの。

なのに、どうしていっちゃったの?

私まだユニに朝の挨拶できてないよ?

私、まだ、まだユニといたいよ?

帰って、きてよ。

お願いだから。


お願いだから、帰ってきて。

私を一人にしないで。

ユニ・・。















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― 新着の感想 ―
[良い点] 感動!!!超良い話でした!! [一言] マコトsこれからも頑張って下さい!! byりょー
[良い点] 愛していた猫=ユニの死を受け入れたくない、認めたくないという主人公の気持ちが凄くリアルに表現されていて、とても説得力が有りました。 [一言] 命に対峙する視点や距離感が印象的!これからも、…
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