そのご いたって平穏な一日。
テレビの内容は次の試合の選手の名前を告げた。
「時雨君また私達だよ。」
「そうですね、まぁ、仕方ないですよ。僕たちの相手はどうやらシャドさんみたいですよ。」
名無しの影と対戦相手の名前欄に書かれている。
大会本部
『さぁ、二回戦始まりました!今回のお題は歴史ですっ!選手の方は今すぐ校舎にいってください!』
歴史かぁ。シャドさんなんか得意そうな顔してるなぁ。
「瀬里奈さん、歴史得意ですか?」
「うーん、普通かな?」
ちなみに僕は得意科目の一つである。
僕たちの座っている机に紙が渡される。
『・・・それでは始めて下さい。時間は50分です。』
えーと、なになに?『第一問、ガンダ○は何を参考にして作られたか』。
この問題難しいな。近くを見ると残りの二人は頭を抱えていた。・・・当然だろう。
答えは『ザ○』かな?
その後もかなり難しい歴史の問題は続き、残りの二人は頭を押さえて必死に頑張っていた。
「・・・どうだった、瀬里奈さん、シャドさん。」
暗い顔つきの二人。
「サッパリわからなかった。一番わからなかったのはブライ○が戦艦の指揮をとったのは何歳かだ。絵がかなりふけてたから30歳と書いた。」
「うーん、私も全くわからなかったなぁ。シ○アの異名はなんですか?がわからなかったなぁ。」
後は結果を待つだけだなぁ。僕たち二人だから平均点数になるみたいだな。
『それでは!結果発表をしたいと思います!』
シャドさんはこっちに来てこういった。
「・・・時雨殿。これがおわったらちょっと付き合ってくれないか?買い物がしたいんだ。」
もはやどうでもいいのかな?
『・・・瀬里奈選手、0 名無し選手 0 時雨選手 49 です。結果勝利者は瀬里奈選手です。』
「シャドさん、もう未練ないの?」
笑いながら頷くシャドさんの顔は幼い顔だった。
「ああ、いいんだ。影の私がみんなのトップに立っても無理だ、それに今は護るべき時雨殿がいるからな。・・・・私は時雨殿より弱いからな。あまり役に立つ事はないだろうがな、だから私は時雨殿の世話をすることにしたのだ。」
うーん、清々しい笑顔だなぁ。
「・・・・ちょっと、時雨君。馬みたいな顔になってるよ!」
はっ!しまった!
「今回はいいもん!後で見てなさい、時雨君。」
そういって帰ってしまった瀬里奈さん。
「さて、それでは付き合ってもらうぞ?」
僕の腕を強引に取り、歩き出す。
「シャドさん!柔らかい何かが腕に当たってるよ!」
シャドさんをみたらびっくりした。
ずーっと笑っているのだ。
「さ、いくぞ時雨殿。」
その後、街でデートになったのは間違いない。
もう少しで家につくときシャドさんは話し出した。
「・・・何故、時雨殿を狙った本当の理由をいってなかったな。」
「本当の・・・・理由?」
静かに話し出すシャドさん。
「私の家族がある人物から命令を受けた。・・・・・・夜中奇襲をかけたらあっさり負けてしまった。その人物はな、私の家族を逃がしたそうだ。『この時雨に勝ちたいならもっと強い奴をよこせばよかったな!ぺったんが相手では面白くないわよ?』とまで言ったのだ。」
・・・・それは間違いなく千夏姉さんだな。
「シャドさん、ごめんね。」
一応謝ろう。
「ふふっ。別にいい。」
真剣な顔になるシャドさん。
「・・・・私を貴方の影にして欲しい。」
そしてもじもじしながら更に答えた。
「・・・・その、なんでもするからな。時雨殿が望むならな。」
「・・・・じゃあシャドさん、これからもよろしくね?」
ぱあっと明るくなるシャドさん。
「いいのか!私は時雨殿を襲ったのだぞ?」
「じゃあなんで僕の影をやってたの?」
「あれはお試し期間だ!」
知らなかったな。
「時雨殿がいいなら契りを結ぼう。」
ちぎり?
「わかんないからシャドさんがやってくれるかな?」
顔が赤いシャドさん。
「そ、そうか。まず目を閉じて欲しい。」
こうかな?
「へっへっへ、時雨。よかったな?」
どういう意味かな?
「・・・・それでは行くぞ?」
「・・・・!?んんっ!」
シャドさんが僕を抱きしめてくる。
「時雨はよくやるよ、紙でもいいのにな。」
目を開けるとシャドさんは消えていた。
「あれっ?」
「奴は影だろ?影は主人を護るものだ。名前を呼べば出てきてくれるさ。」
成る程、知らなかったなぁ。
家に帰るとあの瀬里奈さんが仁王立ちで僕の帰りを待っていた。
「あ、ただいま瀬里奈さん。どうしたの天使化なんてしちゃって。」
身長は高くなり整った顔は妖しく笑っている。
「・・・これなら時雨君も文句ないでしょ?あの忍者並に胸あるんだからさ!」
「な、何言ってるんですか!瀬里奈さん。」
ニヤリと笑う瀬里奈さんは怖い。例えるなら死神が笑いながら将棋をしているぐらい怖い。(意味がわからないな。)
「・・・さっき忍者とキスしてたでしょ?」
うーん、確かにしたような気がする。
「・・・私が近くに一番居るのに時雨君は新しく出てくる女の子とばっかりキスしてさぁ!今日は許さないから!」
せ、瀬里奈さんの身体から怒りのオーラが湧き出てる!
「・・・覚悟なさい!時雨君。」
「話を聞いて下さい!瀬里奈さん!」
瀬里奈さんに玄関で押し倒された。
ピンポーン!ガチャ。
「やぁ、時雨君。この時間からいちゃいちゃかい?相手は誰かな?・・・天使化した瀬里奈姉さんか。」
そういって扉を閉じた剣治。
「終わったら言ってくれ。」
止まっていた時間が動き出す。
「落ち着いて下さい!」
「問答無用!」
シャドさんは助けに来てくれなかった。
『我と契約し罪人よ!契約を破る事があれば罪人を更に紅く染めよ!』
「・・・んんーん!」
その頃、外にいた剣治は。
「やれやれ、時雨君は女難だなぁ。」
「さて、契約したからこれから時雨君は他の女の子と契約したら羽が更に紅くなるわよ?」
天使化を解いた瀬里奈さんは・・・・大人のままだった。
「な、なんで幼くならないんですか?」
「おいおい、突っ込む所は違う所だぞ?」
天使がそう言うが僕にはそっちのほうが気になった。
「・・・うふふ、誰かと契約したら力が安定するんだ!だからこれからはずっとこの身体でいれるんだ。
「小さいほうがよかったな。(ぼそっ)」
ニヤリと笑う瀬里奈さん。
「大丈夫、いつでも小さくなれるからね?・・・・時雨君て小さい子がいいんだ?」
「いえ、そういう事じゃないんです。」
ギャーギャーと騒いでいると剣治が入って来た。
「さて、中で話しをしようかな?二人共。」
「時雨君、君は箱を送り返してきたね?あれはなんでかな!」
何となく怒っているような剣治をみるのは初めてだ。
「僕は少しだけでいいから自分の足で立ちたいんだ!」
ふっと笑う剣治。
「そうか、じゃあ一緒に来てくれ。瀬里奈姉さんはそこにいてくれ。」
剣治に連れられ外にでる。
「・・・時雨君は捨てられたメイドがどうなるか知ってるかな?」
「うーん、わからないな。」
剣治が指差す方向をみてびっくりした。
「・・・野良メイドになるんだ。」
箱に入り
「拾って下さい」
と叫んでいる。誰も見てないと知るとダンボールからでてきた。 そしてダンボールの中から何かを取り出し変装する。
「・・・泥棒になった。」
みるからに怪しい人がいる。
「さて、時雨君はいつからそんなに心が荒んでしまったのかな?」
メイドさんを見ていると心が痛む。
「く、わかったよ!説得してくればいいんだよね?」
僕は見るからに怪しい人物に話し掛けた。
「あのう、すいません。」
びくつく泥棒。
「なんですか貴方は?警察さんですか?私はまだ何も盗ってないから捕まえる事は出来ませんよ!今からあのマンションの部屋に忍び込もうとしてるだけです!」
指差す方向には僕と瀬里奈さんが住んでいる部屋があった。
「・・・・なんでそんな事をする予定なんですか?」
「実は食べ物を探していたら後ろからガツンとされて記憶が無くなったみたいなんです。生きる為にはもうこれしかないんですよ!」
犯人は間違いなく僕だ。
「・・・わかりました。僕の住んでいる所に来てお手伝いさんになってください。」
「いいんですか?」
・・・・悪いのは僕だ。
「はい、いいんです。」
瀬里奈さんが僕を串刺しにしようとしなければいいんだけどなぁ。
剣治は手を振り帰って行った。
僕も覚悟を決めて部屋に帰る。
「た、ただいま瀬里奈さん。」
「失礼します。」
ごごごごごごご。
「ひえっ!瀬里奈さん!危ないですから手に持っている大きな包丁を下ろして下さい!」
「・・・・時雨君、少し話しがあるわ。ちょっと来てくれないかな?」
串刺し所かミンチになりそうだな。
「なあんだ!そうだったの?」
瀬里奈さんを納得させる事に成功!明日も僕は元気に生きる事が出来そうだ。
「じゃああのメイド名前は何て言うの?」
メイドは困った顔になり知らないことを告げた。
「・・・わかりません、私記憶がないから・・・」
うーん、とうなる瀬里奈さん。
「・・・・じゃあ名前を考えるわね?そうね、メイってどうかな?」
メイドのメイ?かなり適当じゃないかな?
「・・・メイ、いい名前ですね。」
これで決定してしまった。
メイさんは背の高い瀬里奈さんと同じくらい高い。あれは瀬里奈さんに負けるだろう。髪はポニーテールである。
「・・・・はぁ、まぁいいかな?」
部屋は残っていた部屋を使ってもらうことにした。
しかし問題がひとつある。メイさんに払える給料はないのだ!
「・・あの、メイさん。悪いけど給料払えないんです。」
「結構です。拾ってもらったからそれだけで十分うれしいんです。」
「・・・すいません。」
そして夜。自分のベットに寝転がりぼーっとしていたら何かがふってきた。
「うわっ!なんだシャドさんか。」
シャドさんは僕に頭を下げた。
「・・・すまん、時雨殿。あれからコンビニに行っていたのだ。」
だから助けてくれなかったのか。
「・・・なんでですか?」
もじもじするシャドさん。
「・・・私は、その、始めてあんな事したから・・・・・恥ずかしくなったから・・・。」
成る程、恥ずかしかったからいなくなったのか。
シャドさんは僕の隣で寝転がり始めた。
「シャドさん。な、何やってるの?」
赤くなるシャドさん。
「これも時雨殿を護る為だ。・・・・ただ一緒に寝たいと思った訳ではない。それに・・その、時雨殿があれを望むなら・・・」
話しがおかしいほうに向かっている!何とかせねば!
「あははっ!ちょっとトイレに行ってくるよ。」
危なかった。あのままいってたらどうなる事か・・・・・。
深呼吸してまた部屋に入る。
「・・・スースー。」
あれ?シャドさん寝てる?
「時雨、早く寝よう。」
天使が耳元で喋る。なぜかその声は面白そうである。
「・・・うん、わかった。」
シャドさんの隣に寝た。近くにはシャドさんの顔がある。・・・・気が変になりそうだ。
突然、部屋の扉が開いた。
瀬里奈さんが身体から凄いオーラを出している。
「・・・・時雨君、一緒に寝ない?ゆっくり寝れるわよ。そしてずーっとね。」
僕は震えながら首を横に振った。
「い、いえ!大丈夫です!僕もう高校生だから一人で寝れます。」
瀬里奈さんは僕の隣を指差した。
「・・・じゃあこれはなにかなぁ?」
言い訳も出来ない。
「あわわっ!」
僕は瀬里奈さんに連れ去られた後、彼女のベットに押し倒された。
「ひひひひひひっ!」
もはや瀬里奈さんではないような気がしております。
・・・・嫌な夢を見たなぁ。瀬里奈さんに襲われる夢だ。
隣ではシャドさんが寝息をたてながら横たわっている。服がはだけてるっ!
「おはよー時雨君。よく眠れたかなあ?」
瀬里奈さんが入ってきた!急いで布団を被せて隠す。
「ああああ。おはようございます!」
「?うん、おはよう。朝食が出来たらしいから早く来てね?」
そういって部屋を出ていく瀬里奈さん。・・・・・・危なかった。
「・・・・うーん。」
布団からシャドさんがはい出てくる。
「・・・・・・シャドさん、早く服をきちんと着てください。」
「わかった。時雨殿!」
服をきちんと着たシャドさんは消えてしまった。後で何か食べてもらおう。
今日は大会がなく、一日自由であるので料理の勉強をしに管理人さんのところに向かう。
「あ、時雨さん。料理の勉強に来たんですか?」
「はい、お願いします。」
中にはシスウェルさんが何かしていた。(管理人さんと一緒に住んでいるようだ。)
「編み物ですか?」
頷くシスウェルさん。赤い毛糸で長い何かを作っている。多分マフラーである。
「時雨の首を絞めようと思って作っているの!」
それはそれはかなり物騒な編み物ですね。
そして今日はフライパンの使い方を習った。
いたって平穏な一日であった。
そして夕方。シャドさんと共に買い物に行く。(お金は大会本部から送られてきた。)
「うーん、シャドさん何か食べたいものあるかな?」
静かに隣に現れ返事をする。
「時雨殿、私は林檎が食べたい。」
林檎?
「わかったよ。じゃあ持ってきてほしいな。」
「わかった。」
消えてしまったシャドさんの帰りを待っていると長くて黒い帽子(魔法使いがかぶるような奴)を被った人がこっちにやってきた。 普段から見ているが、その人は僕を見ている。
「・・・あのう、僕に何かようですか?」
微笑む謎の魔法使い。
「これは失礼。ふふっ、なかなか美味しそうな身体ですね?・・・・冗談です。私の名前はイクス・リベナ・マッカーロニと申します。以後おみしりを・・・・・時雨さん?」
「はぁ、よろしく。」
イクスなんたらーマカロニさんはそういってどこかに行ってしまった。
「とうとう魔女が出てきたか。そろそろファンタジーに変わったらどうだ?」
「天使、今日はマカロニを買って帰ろう。」
「時雨殿、林檎を持ってきたぞ!」
「シャドさん、何もワゴンごと持ってくる必要はないと思うよ?」
「そ、そうか?じゃあ返してくる。」
まだ、これからも何かが起こるかもしれないな。
今回は大体キャラが出揃った感じに仕上がりました。