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蝙蝠の獣人に拒絶される私が、実は溺愛されていた話  作者: 早乙女姫織


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8/9

暴走

「どうして……そんなことしたの?」


レオンは唇を噛み、視線を逸らす。


「……ミオが……あいつを見てるのが嫌だったんだよ」


その言葉に、ミオは胸を痛めた。


けれど、レオンの背後――校舎の影で、


黒い翼が震えていることには気づかなかった。


ソーはそこにいた。


拳を握りしめ、爪が食い込むほど強く。


(ミオ……泣きそうな顔してる)


胸が焼けるように熱くなる。


呼吸が荒くなる。


翼が勝手に広がりそうになる。


――危険だ。


――近づくな。


頭ではわかっているのに、


体が言うことを聞かない。


レオンがミオに一歩近づいた瞬間、ソーの視界が赤く染まった。


「……ミオから離れろ」


低く、震える声が響いた。


レオンが振り返る。


「なんだよ、お前……また出てきたのか」


ソーはゆっくりと歩み出る。


翼が風を切り、影が地面に伸びる。


「ミオを……傷つけるな」


「傷つけてねぇよ。俺は――」


「嘘だ」


ソーの声は低く、怒りで震えていた。


レオンの噂、ミオの涙、全部が胸の奥で爆発しそうだった。


「ミオを泣かせた。


それだけで……許せない」


レオンの耳がぴくりと動く。


「……は? ミオを泣かせた?


お前だろ、泣かせたのは」


その言葉が、ソーの心臓を刺した。


瞬間、翼が大きく広がる。


風が巻き起こり、砂埃が舞う。


「黙れ……!」


ソーの声は、もはや獣の唸りに近かった。


レオンも負けていない。


狼の耳が立ち、牙が覗く。


「やる気かよ、蝙蝠野郎」


次の瞬間、二人の影がぶつかった。


レオンが飛びかかる。


ソーは翼で風を起こし、横へ跳ぶ。


爪と爪がぶつかり、火花が散る。


レオンの拳がソーの頬をかすめ、


ソーの爪がレオンの腕を裂きかける。


「やめて!!」


ミオの叫びが響くが、


二人には届かない。


ソーの視界は赤く染まり、


レオンの姿しか見えていなかった。


(ミオを……泣かせた……)


怒りが胸を焼く。


翼が暴れ、風が渦を巻く。


「ミオに……近づくな!!」


ソーが叫び、レオンを吹き飛ばす。


レオンは地面を転がり、砂埃が舞う。


「っ……くそ……!」


レオンも立ち上がり、牙を剥く。


「ミオは……俺が守るんだよ!!」


その言葉が、ソーの心を完全に壊した。


「違う……ミオは……僕が……!」


ソーの翼が大きく広がり、


風が爆発するように吹き荒れた。


ミオは思わず目を覆った。


「ソー!!」


その声だけが、暴走する心を貫いた。


ソーの動きが止まる。


翼が震え、爪が地面に落ちる。


ミオが駆け寄り、ソーの腕を掴もうとした瞬間――


ソーは反射的に後ずさった。


「ミオ……だめ……触れたら……!」


ソーの瞳は恐怖で揺れていた。


怒りではない。


ミオを傷つけることへの恐怖。


レオンは息を荒げながら立ち上がる。


「……あいつ、本気で暴走してたぞ……」


ミオは首を振った。


「違う……ソーは……私を守ろうとして……!」


ソーは苦しそうに胸を押さえ、


翼を震わせながら後退した。


「ミオ……ごめん……


僕……君の前に立つ資格なんて……」


そのまま、影のように走り去っていった。


ミオは伸ばした手を、


ただ空に残すしかなかった。


「レオンくん、私は誰にも守られたいと思ってないわ。あなたの考え方は傲慢よ。しかもこんな卑怯なやり方で。あんたみたいなやつが一番嫌い。早くどっか行って。大嫌い。」


レオンは唇をかんだ後、走り去っていった。

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