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第6話 齟齬

「さて、この全知全能の神である僕に……」


「何が聞きたいの?勇者君」


 その勇者の目は深淵のように暗く、悍ましかった。


「魔王の倒し方」


〜〜〜


 守神は腹を抱えて笑う。


「ははは!魔王の倒し方……ね」


「そうだなぁ…おっ!」


「ここにサイコロがあるだろう?」


 そう言い、どこからか2〜6 そして、一面だけ星が描かれたサイコロを取り出した。


「さぁ振って、星を出してみてよ」


 サイコロを振る。


「おぉ、運がいいね」


 赤の星、六分の一を引き当てた。


「さぁ後、連続99回だ」


 やはり……神というのはどいつもこいつも頭がおかしい。


 何故みな揃いも揃って直接的な言い方をしないのか。


「ここで生涯を終えるつもりはない」


 守神は顔を寄せる。


「これは、確率の話じゃない」


「確かに百回連続で星を当てる行為、これは天文学的な低確率だ」


「だが…試行回数が無限ならどうだろう?」


「連続百、千、万何回だろうと、無限にやれば必ず成功する」


 笑えるような、笑えない、馬鹿げた話だ。


「そしてもう一つ、サイコロに星の面を増やす」


「星が2面に描いていたらどうだろう?」


「このサイコロの星を増やす、そして全ての面が星になったとき…」


「もはや君を邪魔する面はどこにも無い」


 守神は静かに見つめる。


「しかし、星を増やせるのは一人につき一つまで」


「君には仲間が必要だ」


「君のサイコロに星をつけてくれる仲間を」


 守神は空に手を掲げる。


「さぁ!見つけに行きなよ!」


「俺に仲間は要らない」


 守神は勇者を見つめる。


「どうやら、君は魔王をよく知らないね」


「僕は…今現在までの全ての物語をこの目で見てきた」


「君たちが語り継ぐ最強と呼ばれた初代勇者も、この目で見てきた」


「初代勇者、彼は神の加護を一身に受け一最も勇者として完成していた」


「ここまでは君たちが受け継いでいる話と同じだろうがここからが違う」


「初代勇者は惨敗した、無ずすべもなくね」


「世代が進むだけ、勇者としての神の加護が薄まっている」


「これは周知の事実だろう、君も感じているが、気づかないふりをしている」


 勇者は黙って話を聞く。


「そして、もう一つ君たちが間違って受け継いだ話、初代勇者は死んでいない」


「愚かな人間は、その戦いを見ていないにもかかわらず、話を美化したいがために初代勇者は接戦の末に戦死とした」


「だからこそ、今なお生きている彼を初代勇者を仲間にするんだ」


「彼の力は君の助けになるだろう」


 勇者は固い口を開いた。


「初代勇者はどこにいる?」


「いいね…乗り気だね、目指すはあそこだ」


 守神が指す方向には漆黒の山が雲を貫いていた。


「あそこ【ヘルティオラ】」


「ここ、サンクチュアリに来て始めて見ることができる不思議な山だ」


 その山は、はるか昔におとぎ話として聞いたことのある架空の山のようだった。


「感謝します、守神」


 守神は、少し首を傾げてる。


「ふーん……なんだか」


「君にこの話を誘導されていたような気もするね」


 守神は、勇者の頭を見つめる。


「まるで今から君に渡す、【守神の加護】を貰うために話を聞いてるみたいな……」


 沈黙が続く…………。


「まぁいいか、全知全能、全てが分かってもつまらない物だからね」


 勇者は、また跪く。


「献身的だね……【守神の加護】君に贈呈する」


「これは僕を見つけ、対話を可能にした偉業から贈られる」


「【汝、有象無象の天災をも、『感知』できようこの力、神の名もと加護をせしめす】」


 黄金の光が勇者を、包み込む。


 やがてのその光は勇者の中に入り込み。


 勇者の、瞳に黄金の筋が現れる。


「僕ほどじゃないけどイケメンになったんじゃない?」


「さぁ…行きなよ、ちょうどいい暇つぶしになった」


 勇者は、そのままヘルティオラへと走り出す。


「あぁ、行っちゃった」


「全く…また寂しくなるね、一人じゃ何も出来ない、それは僕が一番知っているのにね」


 サンクチュアリは、また静寂に包まれた。


〜〜〜


 こうしている今も勇者の悪評は広まりつつある。


「それは真か?」


 見るからに気品が滲み出ている人物が豪華な椅子に座っている。


「はい、45代目勇者、敵前逃亡による極刑を求めます」


「この【タリオス】の名にかけて」

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