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第1話 原罪

 世界は魔王が牛耳りその配下である魔物が人々の命を奪っていた。その中で人々は魔法と剣術、さらには、人類の希望である【勇者】が現れた。しかし、魔を統べる【魔王】に挑み帰ってくる勇者は現れなかった。そして今、魔王に挑む直前の勇者達がいた。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「いよいよですね…勇者様」


 僧侶であるシリアが話しかけるが、勇者は黙って魔王城を見つめている。


「まさか相棒、ビビってんのか?」


 戦士のタリオスがニヤニヤしながら茶化しているのを魔法使いのマーニスが反応する。


「まさか、アンタはこの5年間で勇者君の何を見てきたの?」


「そりゃあ!剣を握れば悪を切り!盾を構えば万人の城となる!それが相棒だ!」


 まるで自分のことのように褒めるタリオスは、何処か嬉しそうだった。


「皆さん気を緩めずに、勇者様を見習ってください」 


 優者と幼馴染の賢者パリスが注意を促す。


「ここは一度野営をするべきかと、万全の状態で挑むべきです」


 パリスが野営を提案する。


「そうだな!相棒もそう思うだろ?」


 タリオスの言葉にコクリと頷く勇者。


………


魔王城前 夜


 魔法でテントを取り出し魔物が近づかないよう結界を張り、5人が焚き火を囲む。


「…………」


 勇者は静かにテントの中に入る。


「相棒の元気がないぞ……」


 残された4人は勇者について話す。


「勇者様…やはりあれが原因でしょうか…」


 シリアが話を切り出す。


「おそらくね…勇者君のお父様のことだろうね」


 空気が暗くなるのを感じる4人。


「勇者様のお父様は44代目勇者で、私も随分お世話になりました…でも…」


 パリスは握り拳を作る。


「魔王に殺されました…」


 少しの沈黙が4人を包み込む。


「ですが、もうすぐ全てが終わります!」


 シリアが重い口と腰を上げ3人をほ鼓舞する。


「そうだ!俺たちが相棒の敵討ちを手助けするんだ!」


「勇者君には一生払えない借りがあるからね」


「私も友として勇者の仲間として守らしてもらいます」


 それぞれの意思が一つにまとまりつつある。


「明日俺たちは世界を救う、誰も怖気づいていないな?」


 4人の手が一箇所に集まる。


「神々の加護があらんことを。」


 シリアがそう言い各々がテントに戻る。


………


魔王城前 朝


 僧侶が必死になって起こす。


「大変です!!」


 シリアが半泣きになりながらタリオスの身体を大きく揺らす。


「シリア?どうしたんだ?」


 困惑するタリオスにシリアが告げる。


「勇者様がいなくなりました!」


 タリオスが物騒がしく勇者のテントを向かう、その物音で他の仲間が起きる。


「!!!」


 勇者がいるであろうそのテントの中には散らかり、滅茶苦茶になった勇者の所有物と飛び散った血が残留していた。


「なんだこれは……」


 タリオスの顔色が悪くなっていく。


「まさか…」


「………」


 後から来た2人がその光景を目のあたりにする。


「もしかして」


 嫌な予感が4人をよぎる。


「魔物に襲われたのか……?」


 各々が考え無理やり否定していたことをタリオスが口に出す。


「勇者君に限ってそんなことがあり得るかい…」


 マーニスがタリオスの発言を否定する。


「完全な奇襲を食らえば勇者様もダメージを負うでしょう、それに勇者様は昨日体調が良くなかった………」


 パリスが推測する。


「私のせいです!」


 シリアが泣きながら叫ぶ。


「私の結界が弱かったから!!!」


 すべて自分に非があるかのように、胸を抑えながら泣いている。


「まだそうだと決まったわけないだろ!」


 まだ冷静さを保っているタリオスがなだめる。


「でも……」


 シリアは泣き止まない、目の前の光景が全ての希望を否定する。


「勇者君……」


 テントの中にあった勇者の血まみれになった白銀のナイフを見る。


「勇者君は最後まで勇敢だったよ」


 血まみれの白銀のナイフを手に取り周りに見せる。


 シリアは膝から崩れ落ちた。


………


 数十分が経過した。


「これからどうする?」


 マーニスがみんなに問いただす。


「勇者様を探しに行きますよ……」


 鞄を持ち今にでも探しに行きそうにする。


「いや…我々だけで魔王を討伐しましょう…」


 パリスが落ち着いてそう告げる。


「どうして!パリスさんはそれでいいんですか!?」


 シリアが叫びそういう。


「いいわけないでしょう!!!でも…」


 歯を食いしばる。


「我々もこれ以上魔界に居てはいけません…これ以上は食糧が乏しい…保って後3日です」


 シリアにそう言いそっと下を向く。


「そうだ…パリスの言う通りだ…」


 タリオスが口を開く。


「タリオス様まで………」


 シリアがタリオスを見つめる。


「今出来ることは相棒の仲間である俺たちが魔王を倒し、相棒を英雄にすることだろ…」


 タリオスが淡々とそう口に出す。


「そうだよシリア…本当に勇者君のためを思っているなら魔王を倒し世界を救うんだ…勇者君もそれを求めるはずだ…」


 マーニスがシリアに語りかける。


「……少しの間一人にさしてください……」


 その場をしのごうとするシリアの肩をパリスが押さえる。


「言ったでしょう…時間がないと」


 険しい表情の2人が数秒顔を見つめ合う。


「さぁ…いきましょう」


 マーニスが杖を持ち魔王城に身体を向ける。


「あぁ、2人共すぐに準備を済ませるんだ」


 険悪な空気の中4人は魔王城へ向かう。


………


 魔物が蔓延る暗い森を一つの人影が走り抜ける。


 次々と襲いかかる魔物を白銀に輝く剣で斬りつける。


「はぁ…はぁ…」


 全力で走っているからか息を荒くするその勇者は本来進むべき魔王城とは真反対の方角へと進んでいた。


「もう…無理なんだ…」


「もう…限界なんだ……」


 首を中心とした血まみれの体で森の中で倒れ込む。


「もう解放してくれ………」

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