あの方に拾われた私の卒業式。
なろうラジオ大賞用小説第三弾
今日、私はこの学校を卒業する。
今まで……本当に、いろんな事があった。
家を失い。
親を失い。
そして……自分の命まで失いかけた。
だけど、そんな私をあの方が拾ってくれた。
『卒業生代表、前へ!』
卒業式の司会者の先生が声を張る。
そしてその指示に私は従い……壇上に上がる。
上がると保護者席の方にいるあの方が見えた。
私の晴れ舞台を見て嬉しそうな顔をしている。
それを見て、私は今まで頑張ってきた事は無駄じゃなかったと知った。
『みなさん、こんにちは。本日は――』
そして卒業生代表の挨拶をする中で。
私は改めて今までの事――拾われてからの事を振り返る。
最初は辛かった。
生活するための手段どころか。
戦うための手段まであの方は私に教えた。
なんでそれまで習わなきゃいけないんだと何度も思った。
だけど、あの方が私を拾ってくれたあの日……あの方が重い何かを背負っている事を知ってしまったから。
だから私は、どれだけ辛かろうがその全てに耐えた。
あの方が背負っている何かの重さを、少しでも軽くしてあげたくて。
そして、今まであの方から習った全てをこの学校で活かし……なんと首席で卒業する事ができた。
学内はライバルだらけだった。
誰もがあの方――この国にはその名を聞かない者がいないくらい有名なあの方の影響で、思った以上の強者だった。
途中で何度、その強者達に苦汁を飲まされた事か。
けれど私は、諦めず……多くのライバルを倒し頂点に立った。
『続きまして、卒業生合唱!』
合唱が始まり歌声が響く。
その間に私は、多くのライバルの事を思った。
あの方の偉業を模した者。
一子相伝の奥義を極めし者。
さらには東方の神秘とでも言うべき奇妙奇天烈奇々怪々な奥義を使ってくる猛者もいた。
誰も彼もが私にとって、良きライバルだ。
そしてそんな彼ら彼女らとはこれから先も。
たとえ道が違えようとも良いライバルでいられるだろう。
ああ、私は幸運だ。
一生分の運を使い果たしたんじゃないかってくらい幸運だ。
一度どん底を味わったけど、そんな私の運命をあの方は変えてくれた。
そう思うと、感動のあまり涙と涙声が出た。
よく聴けば、周りの卒業生の歌声も涙声に変わり。
保護者席からの涙声も加わり……本日は涙の卒業式となった。
そして使用人学校の卒業式の終了後。
帰りの馬車の中で私はあの方――お嬢様に改めて告げた。
「ジュリアお嬢様」
「何かしら、ヘレン?」
「一生、何があってもおそばにいさせていただきますね」
BGM『Trust You Forever』