4.フロイドに呼ばれるユーヤ
この手紙は何だろう。
僕は朝日に手紙を取らしながら畑の横を通り過ぎる。
「クライネ、手紙を読んでくれ」
「手紙ですか?」
「なぁ、先に飯を食おうぜ」
クライネに手紙を渡す中、アイネは足を投げ出し、腹を鳴らしていた。
「いや、でもケイ達がまだ」
「待ってても無駄だろ。どうせその手紙に書いてあるんだろ? 読んだらそっちに集中しちまうから飯を食べられなくなるだろ? 先に腹に何か入れようぜ」
僕が先に二人を探そうとするが、アイネが止めた。そしてサラダの葉物を摘まんで口へ放った。
「……分かった。先に食べよう」
「分かりました」
僕とクライネも食べ始める。
しかし、食事中にもかかわらず、頭の中は二人のことでいっぱいだ。
食事が終わるとクライネが手紙を開いた。
「……どうなんだ」
「……申し訳ありません。私はレイベルス語なら読めるのですが、これは読めません」
「え、これは何語なの?」
まさか、頼りのクライネが読めないとは。え、どうすればいいんだ?
「読めませんので確定的なことは言えませんが、おそらく二人宛てでありますので、マレットス語ではないかと」
「成る程」
そもそも国によって文字とか言葉とかが違うのか。
「あん? マレットス語なら私が読めるぞ」
「え!? アイネって勉強できたんだ……」
「おい、どういう意味だ、テメェ」
アイネに頭頂部を叩かれてしまったが、これは僥倖。手紙はアイネに読んでもらおう。
「しゃ~~ねェ~~なァ~~」
アイネが手紙にざっと目を通す。段々と口が開いて行き、眉根が寄っていった。
「どうした?」
「あ~~、成る程ね。とりあえず今、読んだやつを私なりに噛み砕いて話すぞ」
「おう」
「隣国との戦争に負けそうだから帰ってきてくれ。多分二人は国に帰った」
「ハァ?」
僕はキレた。なぜいなくなったんだ? ケイは少なくとも僕のことを知っているだろ?
「ゆ、ユーヤ様」
クライネが怯えている。それを振り返って初めて気づいた。
「フゥー」
息を短く吐き、オーラを抑えていく。今の僕は怖い状態になってしまっている。
「行くか?」
「当たり前だ」
「お、お待ちください」
アイネの誘いに乗り、外出しようとすると、クライネが止めてきた。
「どうした?」
「い、いえ。ただ、私達はマレットスのものではありません。そう簡単に行くことができるのでしょうか?」
「飛んで行きゃいいだろ」
「今は戦争中、もしくは戦争準備中ですよ。空からの侵入など撃ち落とされますよ」
「じゃあ、どうすんだよ」
苛立ちが表に出てしまった。やはりクライネは怯えてしまっている。
「済まん」
「い、いえ、私も不躾なことを」
「全力で走って、船で行って。無理に港を開かせるしかねぇぞ」
三人で頭を悩ます。どうすれば安全に早く辿り着ける?
「お~困りで~すか~?」
「誰だ?」
裏口にはクラシックなメイド服を着た女性がいた。背は僕よりも20㎝高い。何者だ?
いや、見たことあるわ。
「お前、大迷宮の底にいた」
「はい。その通りです。何やら私の力が必要である思いまして、ここにやって参りました!」
少女は元気よく返事をし、こちら側に身を乗り出してきた。
「大迷宮の底」
「てことは、凄い強そうだな」
説明が面倒なため、僕はそのまま話を進める。
「お前なら何とか出来るのか。そもそも大迷宮の外に出られたんだな」
「大幅な弱体を受けているため、今の私は上級程度でしょう。何とか出来るか? 当たり前です。そうでなければ名乗り出ませんよ」
「た、確かに」
「上級?」
当然のことを言われ、僕は黙らせられてしまった。アイネはその強さに懐疑的である。
「あの二人も私を頼ってきましたからね」
「マジか」
少女は恭しく礼をしながら、右手で進む道を示す。
「どうぞこちらへ。私が送り届けて差し上げましょう」
少女の笑みはどこか楽しそうであった。




