表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
7.ヴァスカンブル
88/145

7.ややこしくするエル

「まぁ、私は別にいいぞ」

「ありがとうございます」


 髪にも瞳にもグラデーションのある少女が頭を下げていた。頭を下げてきたことに目を丸くする。

 頭を下げると思っていなかった。


 もしこの少女があの大迷宮そのものだとするならば、私もケイも抵抗を許されずに殺されているだろう。この大迷宮は一体何をしたいんだ?


 瞬きをすると、自室に戻っていた。


「あれ、どうすんだ?」


 私は用意していた酒をグラスに注ぐ。ワインの入ったグラスをケイに渡した。

 ケイはグラスを受け取り、酒を一口含んだ。


「あの娘はおいおい僕から言っておくよ。大事にしない方がいいよ。何か地下倉庫的なものとでも言って誤魔化そう」

「何でだ?」


 私はボウルに木の実を入れて出す。いわゆるおつまみである。

 ケイは木の実を一気に三つ口に入れた。


「バレたら大問題だよ。国が動く。とっても面倒なことになるよ。迷宮なんて国の管理下に置く習慣があるんだから」

「確かに面倒そうだな」


 私も三つ一気に木の実を口に入れる。口の中で果汁が溢れそうになった。ケイはこれを制したのか。


「じゃあ、あれはケイに任せることにするよ。私はこういうの苦手だからな。事務とか交渉とかな」

「知っている。誰かがそこを埋めてあげなきゃエルは暴走するからな」

「間違いない」

「僕は得意だから、任せておけ」


 二人で同時に酒を口に含む。だんだんと体中にアルコールが回る。

 ケイが私ではなく別のところを見ている。その視点の先にあるのはユーヤ宅の玄関より奥。ユーヤとアイネが戦っている場所か。


「何かあったのか?」

「何かはあるね。アイネの破壊劇画」

「大丈夫なのかよ、ユーヤは」

「死にはしないよ。まだ大丈夫さ。あ、駄目かも」

「おいおいおい。酒飲んでねぇで行くぞ」


 妙な酔い方ができるから安酒が好きなのだが、その酔いが一気に吹っ飛んだ。

 集中すると、アイネとクライネの言い合う声が聞こえてくる。そこに男の声が入ってきた。ユーヤのものではない。じゃあ、誰だ?


「何だが、外が騒がしいな」

「あぁ、来訪者だね。え~っと、あ~、あの子か。へぇ~、ここまで来たんだ」

「誰が来たんだ?」


 私がドアを開けながらケイに聞く。ケイを促すように手を招く。


「どうだろ。見たら思い出すかもね」

「あ~、じゃあ後で確認するか。誰だろ」


 焦らされてしまった。


「お~~? ユーヤの奴、刺さってんじゃん」

「オロロロロロロ、抜いてあげんと!」


 ケイが小走りでユーヤに近づき、足元に屈む。


「ユーヤ、抜くぜ」


 一声かけると、足を掴んで引き抜こうと力を入れた。ビクともしない。まぁ、だろうな。


「エル~~、助けて~~、私の筋力じゃ抜けないよ~~」

「だと思ったよ」


 私はケイの上からユーヤの脚を掴んで引き抜いてやる。


「凄。顎貫通してんじゃん」

「口の中に土が入ってきちゃ」

「治してやるから、口の中の土を掻きだしておかないとな」


 アイネとクライネの口論は続いている。強さへの頑固ちゃんとユーヤへの頑固ちゃんの言い合いだ。まだまだ続くだろう。


「お! エル、見つけたぜ!」


 来訪者の声だ。


「ここにいるって聞いていたが、来てよかったぜ!」

「あ~~、それなんだけどよ」


 ちょっと居心地が悪い。


「私はケイに言われたから必死に思い出そうとしたんだけどよ、済まん。全然分かんねぇんだ」

「ヘッ? ハッ……?」

「ほんまごめん」

「え、まさか」

「オメェ誰よ?」

「……ハァ!?」


 赤銅色の肉体をした青年は、目を剥いて叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ