6.いきなり男性がやってきた困惑するユーヤ
「良いじゃん。めっちゃ強くなってんじゃん。こりゃ、遊びじゃすまなくなっちまうかもな!」
「うがァ!!」
雄叫びを上げて爆発的な加速を敢行した僕の長剣が、アイネの首の皮一枚のところを一過した。アイネは余裕綽々。僕の攻撃を楽しそうに躱している。
頬を埃と血で汚している僕に対して、楽しそうに笑みを浮かべるアイネ。
舌打ちしながら僕は、アイネに長剣を払う。彼女は素早いジャブを僕の顔に打ってきた。また血飛沫が飛ぶ。
この連続だ。攻撃を躱され、カウンターを入れられる。その結果、すでに僕の体はボロボロだ。上体に着ていたシャツはもう消失し、ズボンはパンツが見えてしまう程穴だらけになっている。
四肢が重い。全身が鉛のようだ。ダメージを受けすぎたか。
アイネは曲芸師さながら逆立ちからの上段蹴りを放ち、僕の胸を蹴って距離を取る。
アイネの口端が裂け、手が振り払われる。その瞬間、鼓膜が破れそうになるほどの砲声が轟いた。
そして、後に待つのは醜悪な捕食者による蹂躙だ。
視界を染め上げる紅の火炎、その直撃を浴びる。
「ぐぉあ⁉」
爆発、そして飛び散る僕の叫喚。
女性の嗜虐的な笑みが目に入る。炎撃のせいで後退させられ、どんどん遠くなっていく。
もう何発目とも知れない爆炎の花が咲き乱れる。
壊す気はないって? 嘘だろ。
煙を吐きながら倒れるのを踏み止まる僕は、口から血の塊を落とした。
手足に力を込めきれない。
アイネのことを見る。悦楽に浸った顔をしている。壊さないってのは何だったのか。理性が本能に負けているじゃないか。
僕は奥歯を噛み締め、四肢に力を込める。そして一気にスタートダッシュを決めた。
低空を走り、剣を溜める。
「うん? どう来る?」
全力で長剣を解放。低空で行くと思ったか? 残念、上だ。
低空から跳躍。首を狙って横薙ぎを繰り出す。相手の意識外の攻撃。これしか通す方法はない。
しかし、目を丸くしながらも屈んで躱した。見てから躱したのだ。
アイネは顔を少し上げ、僕のことを見る。長剣が通り過ぎるのを見届けると、膝を伸ばしていく。
アッパーのように腕が振り上げられ、顎を掴まれる。勢いがありすぎて指が貫通した。これ、後でケイが治せんのか?
アイネはそのまま大回しし、僕を顔面から叩きつけた。顔が完全に地面に埋まった。
「あ!」
籠に収穫したばかりの野菜を乗せたクライネが声を出した。
「アイネ様は壊さないと……」
「壊してねぇ! この程度なら大丈夫だ! むしろ多少の痛めつけがなけりゃ、次に進めねぇよ!」
アイネとクライネが言い合っている。どちらも頑固で譲ろうとしない。
「ですが、それでもし取り返しのつかないことがあれば」
「そう言って手加減して保護すんのは違ェだろ!」
僕はアイネの意見に賛成だ。だから早く頭を抜いてほしい! とりあえず四肢をじたばたとさせてアピールする。
気付いてくれていないのか、抜いてくれない。早く助けて?
「エルがいるのはここか⁉」
声が聞こえた。クライネの声でもアイネの声でもない。男性の声だ。
誰だ? 顔が地面に埋まっているせいで何も見えない。
誰だ?
いったい誰が来たんだ!?




