表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
7.ヴァスカンブル
84/145

3.告白するユーヤ

「愛しているぜ、ユーヤ」

「僕もだ、ケイ」


 ケイが目を丸くする。未来が見えるのに、何に驚いているのだろうか。


「何が、”も”なの?」


 ケイは子供のようにニヤニヤしながら、こちらを覗いてくる。ケイは心が読める。僕が何を考えているのか分かっているくせに、僕の口から言わせようと促してくる。


「僕も好きだ、ケイ」

「ムフン」


 ケイがドヤ顔で薄い胸を張っていた。

 おや、頬が赤いな。


「僕は大迷宮で死にかけたんだ。完膚なきまでに負けて、あと一歩で死ぬってところまでいったんだ」

「良く生きていたね」

「本当に。今でも夢みたいだ。でも、あの時、顔が浮かんだんだ。ケイの顔が」

「うん」


 ケイが顔を俯けた。耳まで真っ赤だ。


「エルもアイネもクライネもアリスも浮かべた。僕にとって皆大切な人達だ」

「全員、ね」

「僕は気付いたんだ。僕は凄く独占欲が強いって。それに、愛情を欲しているんだ。飢えていると言ってもいい」


 ケイは背を椅子に預け、深く溜息を吐いた。


「やっぱり過去?」


 ケイの質問に対して、僕は理解と返答を考えるのに数秒黙り、小さく頷いた。


「僕は一人暮らしだ」

「うん」

「母さんは僕を産んだ後、それが原因で体力を使い果たしたみたいでさ、そのまま衰弱死しちまったんだ。早くに失くしてしまったがために、僕は母さんのことを知らない」

「僕もさ。もう二百年も前になるかな。母さんを亡くして、ほとんど思い出も掠れてしまったよ」

「淋しい?」

「この件だけで言えばね。総合的に視れば、それ以上の楽しい思い出があるという証明さ。よかったというつもりはないけど、淋しいというわけじゃないよ」

「そうなんだ」


 やはりケイは凄い。人生の楽しみ方を知っているのだろう。暗いままで済ませることをしない。僕もこういう生き方をしたいが、なかなかできない。

 僕は直情的だからな。


「何事も経験さ」


 ケイは手をヒラヒラとさせる。


「父さんとは母さんの死亡を機に、凄く不仲になってさ。今はもうどこにいるのかさえ分からないよ」

「探してやろうか? 私の魔眼なら見つけられるよ? 何と激早三十秒」


 早っ!? 魔眼の力って改めて凄いな。いや、ケイの練度が凄いのだろう。流石、ケイ。

 心を読んだのか、ケイが頬を赤らめている。


「いや、いいよ。いらない」

「そう? ならいいや。ま、探したけりゃいつでもいいな。僕には苦じゃないからさ」

「ありがとう」


 ケイが両手を後頭部にやり、足を組んだ。


「僕はさ、皆に愛を感じているんだ」

「そりゃあな。僕だってこんなに愛してんだ。愛の深さで言えば、一番は僕! と言いたいところだけど、ここはクライネかもね。種類は違うけど、皆愛しているぜ」

「僕はそれを手放したくない。僕は強欲なんだ。全てを手に入れたいわけじゃないけど、全てを手放したくないんだ」

「いいじゃん、それ。僕もいいと思うよ。僕もその考え好きだぜ。来る者拒まず、去る者は作らずってね」


 ケイがニカッと笑う。その太陽のような笑みを見ていると、こっちまで笑顔になる。二百年以上の年の功があり、様々な経験をしてきたはず。だというのに、これほどの明るさ。羨ましい。憧れる。


「好きだ、ケイ」

「僕もさ、ユーヤ」


 静かになる。行きの馬車の中と同じくらい静かだが、あの時と比べ物にならないほど気まずい。

 次、何を話せばいいんだよ。


「おい、ユーヤ」


 小さな声で呼ばれる。ケイは目を閉じ、少しだけ唇を尖らせている。何してんだ?


「ユーヤ? ユ~ヤ~~~」


 目を閉じたまま何回も僕の名前を呼ぶ。何だろ? 僕はケイと違って心が読めない。何がしたいんだ?


「おい!」

「え、何?」

「待ってんだろ!」

「何を?」

「キスだよ、キス。チュー!」


 ……?

 おっといけない。呆けてしまった。キス? いや、意味は知っているぞ。あれだろ? 唇を相手に付けることだろ、確か。え~っと? 待っていた? 何で?


「マジか」

「え?」

「このあたりの教育はどうなっているんだ?」

「……?」


 何かよく分からないが、ケイが目を丸くし、肩を落とした。僕は何かしでかしてしまったのだろう。


「これから学んでいこうな」

「……おう! 何かよく分からないが、ケイが落ち込んでいるのを見るのは嫌だからな!」


 ケイは額に腕を当てて、天井を見上げた。


「こりゃ、大変だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ