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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
7.ヴァスカンブル
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2.馬車で会話するユーヤ

「魔眼は魔力を使うんだよ。常に発動しているわけじゃないんだ。あ、もう一本食べるかい?」

「見てんだろ」

「今はね」


 ケイが袋を差し出してくる。僕は三本ひったくってやった。


「ありがとよ」

「ん~~? 何に対してかにゃ~~?」


 イラ。


「ま、ままま、待て! ちょっと、待て! 僕は襲われれば全く抵抗できず、ただ取り押さえられちゃうだろうね! いや、確実に取り押さえられる。僕を取り押さえるのには、君の腕一本あれば十分さ。それにさえ勝てないクソザコメスガキちゃんだぜ。それは過剰戦力だ! それにここは馬車内だし、御者さんにだって迷惑がかかっちまうぜ⁉」


 僕が長剣に手を掛けた瞬間に、一気に言い訳をしてきた。未来をいろいろと見たうえでの煽りか。メンタル激強かよ。


「ほ、ほら~~、僕は無害だよ~~」


 動く馬車の中でケイが床に寝転がり、犬のように腹をこちらに晒している。踏んでやろうか。

 ケイはすぐさま腹をしまい、向かいに座った。


「踏むなよ!」

「踏まないよ」

「いいや、踏むね。一割くらいの未来で僕は踏まれた」

「未来のことなのに過去形」


 ケイは楽しそうにケタケタと笑っている。つられて僕も笑う。


「まぁ、こんだけ魔眼の能力を活かす相手なんて、強い奴しかいないよ。私を抱く権利をくれてやろう」

「冗談止めろよ」

「……冗談なもんかよ」

「は?」


 声音がふざけていない。顔を上げて、ケイの顔を見る。ケイは微笑んでいるが、真剣な顔をしていた。

 ケイは僕の顔を見ると、小首を傾げた。


「疑う?」

「ケイは、冗談を面白そうに言うことはあっても、悪意ある嘘を言うことはないだろ」

「真正面から言われると恥ずかしくなるな」


「フー。ちなみに僕はユーヤが好きだ。ユーヤ、君を愛していると言ってもいい」

「……本気か?」

「本気さ。君と逢ってたったの三か月。それでも僕は君と一緒にいたいと思えた人だ。初めてなんだよ、心が読めると分かっていても敬遠されない空間が。人はいたんだ。でも空間は初めて。異性っていうのも初めてだね」

「そうなのか」

「エルにだって裏はあるぜ。もちろんある。でも、構わないって僕と付き合ってくれている。アイネは裏表がない。直情的ともいえるね。裏がなくて気持ちのいいやつさ。いや、裏がないから気持ち悪いやつかもな」

「フッ」


 聞かせられない。もし知られたら、半殺しで済むだろうか。


「おっとこれ以上話して本人に聞かれていたり勘づかれたりしたら大変困るから、ユーヤは黙ってておくれよ」

「別にいいよ。話す理由とかないし」

「よし、言質とった」


 ケイが顎をしゃくらせ、嬉しそうにガッツポーズを取った。


「クライネは?」

「クライネ? アイツは凄いやつだよ。ユーヤが許せば自分も許すってスタンスだ。お前がカラスが白だと言えば、アイツも白って答えるよ。恐ろしいやつさ」

「カラスは黒だろ」

「例えだよ、例え。アリスは怯えてやがる。僕に読まれた過去がどう扱われるのか分かんなくてびくびくしているんだよね。どうにもしないっての。でも、それが普通の反応なんだぜ、ユーヤ」

「ほ~~ん」

「うわ、興味なさそう。まぁ君は心を読まれたところでって最初っから思っていたけどさ、今はもう読まれても僕なら悪いことをしないだろうって信じてくれてさ」

「止めろよ、恥ずかしい」

「止めたければ、この唇でも奪うんだな」

「……どゆこと?」


 からかってくるケイの言葉の意味が解らず、目を逸らした。


「僕はね、君のいるところが心地いいんだ。エルがいたからボッチではなかったけど、人がそんなにいなかった。いつでもエルがいてくれるわけじゃないし、心の休まる時はなかった。でもね、君の隣はずっといたいと思えるほど心地いいんだ。というか、いたい。もう一回言うぜ、愛しているぜ、ユーヤ」

「僕もだ、ケイ」

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