11.逃げるユーヤ
どうも、ユーヤです。今僕は走っています。何で走っているかって?
今、めっちゃ追いかけられているからだよ! 僕を追いかけているのは、これまた歪な奴だ。戦ってもいいのだが、全くと言っていいほど攻略法が思いつかないのだ。流石の僕も、策なしで初対戦するほど無謀しない。少しくらいの情報が欲しい。
このモンスターの姿はまるでキメラだ。牛か羊かのような体と蹄をしており、ところどころが毛むくじゃらであり、そこ以外はつるつるだ。牛か羊かのような体の首に当たる部分から人のような体が生えている。
人の体の腹に当たる部分にも口がある。その口は肉食獣のように牙だらけであるが、かなり平面的だ。食うためのものじゃないのか?
背中から鹿や馴鹿のような刺々しい角のようなものが生えている。手は人外の手。ついている爪は人の爪だったり猛禽類の爪だったりして、手のバランスが悪い。
頭は人間のようなパーツが揃っている。捻じ曲がった角が生えており、虎のような牙が口端から飛び出していた。頭上には猪の頭を被りものにして乗せている。
体高は五メートルほどか。
こいつもこいつで歪すぎる。四足モンスターと呼んでおこう。
ドゴンドゴンと重い音を響かせながら追いかけてくる。時折炎を吐いてくるが、走っていれば躱せるため問題なし。
しかし、体の傷や血、疲れまでは戻っていない。いつ、この足が縺れるのか分からない。それまでに情報をより多く集めなくては、というか、距離が縮まってないか? これ、思ったより時間ないな?
角を高速で曲がる。そこには別のモンスターがいた。
こちらも一言で言い表せない異様な姿だ。
ハリネズミのように硬そうな体毛を有している。
口端から牙が見えている虎の頭に、背には白翼。あまりモンスターで見たことがないたるんだ腹。
なぜか虎の頭からは角が生えており、両手には大きな菜刀を思っている。
道具を使っている時点で、かなりの知性がありそうだ。
菜刀を振るってくる。僕は剣を当てて、そこに軸として回転する。そして着地し、股下を通り抜けた。
突如、地面から植物が生えてきた。僕の脚を巻き込んで。
「くっ!?」
『グォ!!』
虎顔モンスターがやったことなのか⁉
マズイ。攻撃が来る。
しかし、やってこない。見ると、虎顔モンスターの背中が燃えていた。そこにいたのは先程追いかけてきていた四足モンスターがいた。奴の炎か。
虎顔のモンスターは標的を変えて四足モンスターを襲った。
虎顔の菜刀を、四足が片手で受け止める。人外の手に、菜刀が半分ほど埋まった。
虎顔も四足もそこで止まらない。
四足は後ろ脚の二本で立ち、虎顔のたるんだ腹を蹴飛ばす。僕が喰らっていたら、間違いなくこの体は弾けていただろう。
虎顔は表情を超えることなく、菜刀を振り下ろした。四足は肩で受け止める。今度は全部入った。人間に置き換えれば、鎖骨を真っ二つにされているだろう深さの傷だ。
それでも止まらない。
痛覚がないのだろうか。それともそれらを抑えつける程の自制心があるのだろうか。どちらにせよ、それを僕は見たことがある。
ミデリーだ。
ミデリーはイアウカと戦った時、相当痛かったはずだ。それを表に出さず、笑顔で戦った。
僕はどうだろうか。笑顔で戦えたことがあっただろうか。
答はない、だ。僕は戦っている時、いつも苦しい顔をしている。
ギリギリの戦いでも笑顔。
これが僕に足りていない。
四足は炎を吐く。虎顔は菜刀をクロスさせて受け止めると、四足を植物で絡め取った。
四足が植物を引き千切ろうとする。虎顔はその隙に、もう一度菜刀を振り下ろした。四足の左肩を切り飛ばす。
『ピィギィイイイイイイイイイイイ!!』
耳を劈くような甲高い声。四足の鳴き声のせいで耳が壊れそうになる。咄嗟に耳を塞げられてよかった。
四足は右手をブンブンと振り回す。虎顔はそれに合わせて菜刀を振るい、右手首も斬り飛ばした。
上の口も下の口も、唾も舌も撒き散らして突進する。虎顔は地面を削りながら耐え、猪頭を被った人間の頭を落とした。
それでも止まらない。
四足は虎顔を押し、遂には壁へと押し付ける。そして、そこでも止まらず進み続け、虎顔を押し潰した。
ゴロゴロと悪天候時の雷のような声で鳴き、虎顔も力を失った。
虎顔が力尽きたことで植物は枯れ、僕は解放された。
もしあの中に僕がいたとしたら、果たしてどこまで食い下がれただろうか。
僕は弱気な自分を振り払うように走り出した。
もう今の僕は自暴自棄となっていた。




