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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
6.フロイド
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10.同業と出会うユーヤ

 少しばかりの休憩を取った。

 死んだように座っていたが、そこを狙ってくるような者はいなかった。


 チラリとヲラン・コースッドを見ると、何かがきらりと光ったように感じる。何だ?

 痛む体に無理をさせ、光ったものを確認する。容器だ。どこか硬い容器。これはどう開けるんだ?

 僕は容器を持ち上げて、しげしげと観察する。これは何だろう。中に液体が入っているようだが、なぜ彼の内臓から出てきたのか、これが分からない。

 自分の真上まで持ち上げ、明かりに照らしてみる。容器が茶色の半透明のせいで、中身がよく分からない。


 バリ。


 あ。


 眉間に皺を寄せることで、全身に力が入ってしまっていたらしい。僕の顔に破片やら液体がかかってしまう。口の中にも入ってしまった。ペッペッ。

 破片は吐き出せたが、液体は飲んでしまった。


「ん?」


 左手を見つめる。

 傷が消えた。痛んでいた体がなくなった。あれは体を回復させる薬だったのか。


「よし、いける」


 僕は左手で拳を作り、五層目へと向かった。

 三分後、僕は息を潜めていた。心臓の音がうるさいと思ったのは初めてだ。

 目の前にいるのは勿論モンスターだ。熊のように大柄な体をしていながら、雨に濡れた毛深い犬のような見た目をしている。


 今回は明らかに格上。じっくりと観察しておこう。


 毛深いと評したが、毛はまばらに生えている。一本一本が長く、粗雑。背や首、尾には生えているが、腹や足には生えていない。

 体高約五メートル。体長は十メートルありそうだ。尾は尾で十メートル分あるだろう。

 足が六本ある。一本一本の筋肉量が違うのか、太さが違う。かなり歪で気持ち悪い。しかも足の指は三本ずつ。これも開き具合や爪の有無、指の太さがそれぞれ違い、歪なものとなっている。これが本当に自然の生物なのか?

 少し長い首が地面に近づく。目は一つ、口、鼻、耳は見当たらない。そういった器官がないのか? どうやって周りを認知しているのだ?  目だけか? それだけではここまで強くなれないのではないのか? もしかしてケイのように魔眼持ちか?


 モンスターが首を持ち上げ、キョロキョロと辺りを見始めた。


 何だ? 何かを探しているのか?


 そこでモンスターの顔がぐりんとこちらを向いた。一切見られていないはずなのに、気付かれた!


 六本脚が乱雑に動き、僕の隣へ瞬間的に移動してきた。脚の一本がこちらに振られてくる。

 僕は剣を合わせて止めようとしたが、一切止まらない。水平に飛ばされる。


 さっきのヲラン・コースッドの時もそうだったが、僕の体が軽すぎる。

 どうするかを考えようとした直後、壁に激突した。僕の体の厚み以上にまで埋まってしまう。

 骨がミシミシ言っている。攻撃力が、いや重さがヲラン・コースッド以上だ。


 何とか脱出して、血を吐き出す。もう補足されている。逃げ出すことはできない。

 乱雑な動きで足を動かし、こちらへの距離を食ってくる。そして、右足の一本をこちらに繰り出してきた。

 彼よりも速い。僕は冷や汗を掻きながら、何とか脚撃を躱す。そして、カウンターとしてその足首を切り落としてやる。

 モンスターは先を失くしたにもかかわらず、ゆっくりとした動作で足を戻していく。モンスターは足首から流れ出ている血液を飛ばしてきた。毒でも含まれているのかと考え、僕は浴びないように後退する。

 そこに、モンスターは狙いを定めていたようだ。暗黒属性の魔法で狙撃してくる。


「くっ」


 大部分を躱すことができたが、脇腹を少し掠めた。僕は傷口を押さえながら、少しだけ距離を取る。

 僕は足元が少しだけ揺れたのを感じ取り、横に転がる。一秒もしない程の時間後、自分がいたところに土の槍が出現した。動かなかったら串刺しだった。


 モンスターが単眼の前に魔法陣を出現させ、そこから炎を放射してくる。

 僕はくるくると回して楯状とし、炎を防ぐ。しかし、その炎を隠れ蓑にして、モンスターが脚撃を繰り出してきた。

 押し込むような蹴りを喰らってしまう。間に剣を挟んでいるとはいえ、威力が強すぎる。まだ膝が伸び切っていないのに、壁に押し付けられた。


 マズイ。このまま押し込まれたら潰れる。


 僕は潰されないように、全てに力を入れた。


 ドゴン!


 壁を貫通する。力を入れていたおかげで、内臓へのダメージだけで済んだ。

 僕の体は地面に着くことなく、対壁にぶつかり、落ちる。

 足へのダメージはない。まだ立てる。


 そこに、モンスターが尾を振るってきた。尾が鞭のように体を捉え、壁へ押し付けてくる。僕は間に剣を入れ、尾を切断した。

 しかし、駄目だ。力だ出ない。体の傷は消えても疲れは消えていなかった。ここまでの連戦が応えいる。血を失いすぎたせいもあるかもしれない。

 モンスターはまだピンピンしている。逆転できるか?


 その時、モンスターの体が横に跳んだ。重々しい打撃音とともに。


 何だ!?


 痛む首を無理に動かし、それをした者を視界に入れる。


「あぁ? こんなとこにガキがいるたぁな。大迷宮ってのぁ、いつからキッズルームになったんだ?」

「……ふざっけんな。割って入ってきやがって」

「あぁ? うるせぇな。手の込んだ自殺願望者かよ。ふざけんな、俺様の目の前に死体なんか作ってんじゃねぇ。足の踏み場を変えなきゃいけねぇだろ、雑魚」


 切れそう。キッズルームとか何とか言っているが、言っている意味が解らないが、貶されているのは分かる。


「雑魚じゃねぇ!」

「うるせぇ雑魚。ここに倒れている時点で雑魚だろ。雑魚のくせにこんなとこにいんじゃねぇ。帰れ! ママのミルクでも吸ってな」

「ここに入る前でも言われたな、その台詞。流行ってんのかよ。それに、母乳は、ある程度の成長をした子供には栄養不足なんだぞ!」

「……その反応、違くね」


 男は少し呆れたような声を出した。


「……名前は言わねぇぞ。これから死ぬやつに名乗りたくねぇ」

「ハッ。僕だって知りたくねぇどうせ覚えられないからな」


 男は鼻を鳴らすと、去っていった。五層目、いや四層目も含めて、唯一の探索者。流石の腕前といったところか。

 僕は痛む体に舌を打って、五層目の探索へと戻った。

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