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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
6.フロイド
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7.三層目で迷子になるユーヤ

 洞窟だった。迷宮と言われれば、誰もが想像するような、薄暗い洞窟。壁が若干だが、光っているおかげで視界が通る。

 この空間を満たす空気感で分かる。ここからが本番だ。

 一、二層目と違い、天井が低い。ジャンプで躱すのは、相手によってしまうだろう。


 三層目を歩き始めて五分。足音がだんだんと近づいてきた。四足歩行。それが複数。

 タタッと軽やかな足音とともに現れたのは、黒毛の狼。僕の身長が百四十五センチメートル程度のはずだから、体高百二十センチメートルか。


 黒毛の狼は、リーダーと思しき個体が鳴くと、見事な連携で襲い掛かってくる。

 リーダーを含めて五体か。


 僕は最小限の足捌きで最初の二体をスルー。三頭目の首を下から切り飛ばす。そして、四頭目の頭を砕き割る。

 地面から微小な震動を感じ取る。下から来る。僕は横に跳んだ。

 直後に、下から地の槍が出てきた。完全に腹を貫くルートだった。


 魔法も使ってくるのか。


 少し羨ましく思いながら、着壁。一直線に飛んで黒毛の狼のリーダーの首を切り飛ばす。

 統率者を喪ったモンスターは互いの首に噛みついた。


 そういえばエルが言っていた。モンスターの中には、リーダーを失くした際に、最優先でリーダーを決める種がいる、と。

 だから、か。


 そして、黒毛の狼は両者が互いの喉笛を噛み千切って倒れた。


 僕は黒毛の狼に尊敬の念を向けながら、剣を収める。その誇りは見習うべき部分だ。


『ガヴ』


 道の奥、その暗闇の中から声がした。成る程。余韻の一つも感じさせてくれないのか。

 現れたのは、こちらも体高百二十センチメートルほどの四足歩行。こちらは黒毛ではなく灰毛だ。前髪がオールバックという特徴に目がいく。

 どこか笑っているように見える口元。牙が鋭い。あれで噛みついてくるのだろうか。いや、途轍もなく筋肉質な前脚だ。あれで攻撃してくるかもしれない。


 前脚の筋肉が強張る。僕は素早く剣を抜く。モンスターが前傾になりながら口を開く。やはり牙。僕は腰を落とし、次の行動を持つ。モンスターが魔法が放つ。

 空気が波立つ。その振動が体を襲い、後ろに飛ばされそうになってしまう。腰を落としていなければ危なかった。

 僕が耐えているところを隙と見たモンスターが、飛びかかってきた。僕は足腰背筋を意識して、両手で剣を振り上げる。モンスターの前脚を切り飛ばした。モンスターは上手く着地することができない。

 切断面が地面を滑る。顎が地に着いているモンスターの首を切る。


 あまり余韻に浸ることを許してくれないだろう。


 僕は剣の血を拭って収めた。歩きながらそれをするのは初めてだが、意外とうまくいった。


 三分後。すでに僕は迷っていた。僕の目の前は壁である。

 僕がペタペタと壁を触っても、特に何も起こらない。完全に行き止まりだ。


「何処で間違った?」


 僕は首を傾げながら、来た道を戻る。最初の交差点に差し掛かろうとした時、動きを止めた。

 鼻を掠めるように炎が通った。何か、いる。


『グルル』


 三層目の接敵率が高い。確実に殺しに来ている。


 これが大迷宮か。


 少しだけ覗き込むと、モンスターが見えてくる。口の端から炎を吐き出している獅子の頭、何かを探すように首をもたげて鼻を鳴らす山羊の頭、尾は蛇の上部分となっている。何だ、あの見た目。本当に生き物か?

 体高が二メートルはある。一振りで殺せるか?

 いや、殺さなきゃいけないんだ。あの合成の獣を一撃で殺せなくちゃいけない。あれを一振り一殺出来なければ、イアウカなんて挑めない。

 あ、いや。一撃じゃなくていいのか。無傷で圧倒瞬殺すればいい。


 僕は石子を拾い上げ、路に投げ入れる。反射的に山羊が口を開き、風を吐き出した。それは突風と呼ぶには優しい部類のものだった。

 細かな粉塵が巻き込まれ、空気が色づく。風が止むのを待とう。


 三秒後に風が止む。


 僕は目の前の壁に向かって走り、壁を蹴って反転して向かう。急に出てきた僕に獅子頭が炎を吐こうと息を吸った。

 それは悪手である。僕は撫でるように左手を滑らせた。中指に石子を引っかけて飛ばす。

 口の中に異物を入れられたモンスターの口内が爆発する。


 蛇の頭がこちらに伸びてくる。


 僕は背に溜めていた剣を解放し、山羊頭を割った。そのまま回転し、蛇頭の首を掴む。そして、引き千切った。

 僕は蛇頭を捨て、左手を見る。


「チ」


 手が血だらけだ。気持ち悪い。この状態では両手で剣を持てばぬるぬるで触れないだろう。

 ズボンで手を拭う。これで……いけるか?


 ドン、ドンと重い足音。


 あぁ、しまった。僕はやはり頭が悪いな。留まっていれば、モンスターが集まってくるじゃないか。そう学んだはずじゃないか。

 現れたのは赤い肌をした人型のモンスター。黄色の瞳に口端から覗く牙。強面だという印象しかない。

 十二体はいるモンスターの中に一体だけ、頭一つ分だけ大きいモンスターがいた。

 小型のモンスターが向かってくる。大型のモンスターはリーダー格か?


 十二体もいれば僕はボコボコにされてしまうだろう。一体一体真面目に相手していることはできない。

 唾を撒き散らしながら襲ってくる一体ものモンスターの足元を崩した。二体目も同様に転ばせる。

 これでモンスターたちはこの二体を飛び越えなければ、僕の元まで到達できない。


『ゴ、ゴ?』

『グ、ゴゥ』


 モンスターが困惑している。倒れている奴等が立ち上がろうとする。


 ドゴォォォオオオンッッッ!!


 大衝撃。大震動。大打撃。


 大型モンスターが動き始める。棍棒を振り下ろしたのだ。地面には赤い花が咲き、大きく罅割れている。え、部下じゃないのか?


『ゴォア!』


 怯えの眼をしながら小型モンスターが襲ってくる。僕は剣で受け止め、膝を落としながら往なした。棍棒が通り過ぎた途端にモンスターの首を切り、すぐに後退する。すぐに後退したおかげで、棍棒に当たらずに済んだ。

 大型モンスターが棍棒を横薙いだ。部下達を巻き込んでいる。僕よりもモンスターを殺していないか?

 大型モンスターがそのまま一歩踏み出す。背に棍棒を溜める。いや、これは投擲の姿勢か?


 大型モンスターが投げつけるように棍棒を振り下ろした。


 大打撃。大衝撃。大震動。大鉄鉢。


 攻撃力が高すぎる。イアウカに比べれば弱いが、全体で見ればかなり強い。受け流せたとしても腕が痺れそうだ。


『ゴォワッ!』


 唾を撒き散らしながら、大型モンスターが襲い掛かってくる。僕は剣を斜めにして受け止めた。

 下から舐めるような棍棒が剣に当たり、剣を滑るように上へ逃げていった。


 腕は痺れている。でも大丈夫だ。振れる。


 大型モンスターの腕はもう振り切れている。すぐに戻ってこない。魔法は分からない。これまでに戦った奴は使ってこなかったが、こいつが使わないかどうかまでは分からない。早めに決着を。


 僕は爪先だけで回転して、大型のモンスターの首を切った。

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