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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
6.フロイド
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5.一層目を突破するユーヤ

 草原だった。そう、草原だ。草花がちらほらと風に揺れている。広い、広い草原だ。


「草だ」


 屈んで毟った草の匂いと味を確かめ、本物の草であり、モンスターでないと確信した。

 背の低い叢が続いており、遠くにモンスターが見えている。


 大迷宮と呼ばれる洞窟の中にいるはずなのに、光があるのか。頬を照らす光は確かに温かい。陽の光だ。

 ここは穴の中だぞ。そうじゃなくても、ここは地下だ。天井に穴がないのにもかかわらず、どこから光が入っているんだ?


 いや、原理なんて知らない。分からなくていい。僕は強くなりたくて、強い奴と戦うためにここまで来ているんだ。

 明るいなら戦いやすい。それでいいじゃないか。


 僕はスタートを切る。


 ここの恐ろしさは広さだ。どんなに目を凝らしても端が見えてこない。もしかしたら、コギト島と同じくらい広いのではなかろうか。


 走る、走る、走る。


 モンスターは見えている。しかし、襲ってこない。僕の気配を本能的に感じ取っているのか、どんどんと去っていく。

 見えているモンスターはリスや鹿、狼か。僕の姿を感じ取るたびに、すぐいなくなってしまう。


 僕の方が足が速い。追いかければきっと追い着いて攻撃できるだろう。


 しかし、それはやらない。

 だって、弱いんだもん。


 ケイが言うに、僕は今伝説級上位か神話級下位の実力らしい。この階層にいるモンスターは下級。全く釣り合っていない。

 だから僕も戦う気など、限りなくないと言っていい。とっとと二階層へ行こう。


――――――――――


 二時間が経過した。

 僕はいまだに草原の中を走っている。何と困ったことに、二階層への階段が見つからないのだ。


「……どこだよ、ここ」


 伝う汗を拭いながら、辺りの景色を睨む。


「おい、ガキンチョ。お前迷子か?」


 声を掛けられ、顔を向けると、そこには茶系の毛並みをした大柄な女性が立っていた。その女性の後ろには五人の男女。


「私はチーム『鳥獣牙刃(ちょうじゅうぎば)』、リーダーの猿獣人のエライザだ」

「俺様は獅子獣人のレオン」

「アタシは猫獣人のミリーリャ」

「アタイは鳥獣人のトンファー」

「私は蛇獣人のアラストレミア」

「僕は象獣人のバンバ」


 困ったぞ。もう獅子獣人の名前が思い出せない。


「お前の名前はなんだ、ガキンチョ」

「僕はユーヤ」

「よし、ユーヤ! お前は迷子か?」

「迷子って?」

「おいおい、そんなんで怒ってんじゃねぇよ。俺様みてぇな、スーパーな存在にゃなれねぇぜ?」


 ちなみに僕は怒っていない。今の自分の状況が迷子だと思っていなかったため、衝撃を受けただけだ。


「僕は迷子じゃない。だって、まだ二時間しか経っていないからな」

「ハハハ。これが価値観の違いというやつですかな?」


 蛇獣人が己の額をハンカチで押さえながら発言した。


「アタイ等は上に行くけど、一緒に来るかい?」

「いや、下に行きたい」

「ならあっちよ」


 鳥獣人は鉤爪で方向を示した。進む方向はあっていたらしい。単なる距離の問題か。


「上に行くってことは攻略してきたのか?」

「うん? あぁ、そうだぞ」

「下はどんなところ?」

「三層からは地獄だね。攻略に時間がかかったのも頷ける。それより先は知らない」

「よし」


 それだけ聞ければ僕は満足だ。

 僕には分かる。あのまま鳥獣牙刃と一緒にいると面倒なことになっていた。仲間はどうしたんだってな具合に。

 そりゃあ僕だって、自分がガキである自覚はある。ガキが一人、難攻不落に挑もうなんて無茶無謀をさせるわけがない。

 粗暴といえど常識はあるのだ。


 捕まると面倒だ。


 僕はぐんぐんと速度を上げていき、一層目をゼロ撃破で踏破した。


 草原の中に突如として現れた洞穴に階段がある。これは下への階段。二層目へと足を踏み出した。

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