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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
6.フロイド
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4.迷宮の入口で舐められるユーヤ

「お客さ~ん、着きましたよ~」


 御者に言われて箱馬車を下りる。長旅のせいで硬くなった体をほぐすように伸びをし、腰を捻った。

 馬車の方では、ケイがチップを支払っている。


 ここはもうすでに大迷宮の前。これまでに運河を越えて、二国間を抜け、何か上級のモンスターが揃っている森を抜けたところにある街にいる。

 ケイが言うには、この町も大迷宮の一部なのだとか。誰も知らないかもしれないから言わない方がいい、とも言っていた。その魔眼、いったいどこまで見えているんだ?


 この町の名前は迷宮都市ワレイホヨ。大迷宮へ挑む者のための町だ。保存食、武具、消耗品、何だって売っている。それに鍜治場、宿、酒場などの施設もある。


「さて、まずはどうすんの? もう攻略する? 一旦休む?」

「もう行く」

「あ、そう。じゃあ食料は多めに持っていくといいよ。空腹ってのは体だけの問題じゃなくって、心の問題でもある。心まで飢えたら負け組になっちまうぜ」

「……分かったよ。じゃあ、ケイはどうすんの?」

「う~ん、そうだな~。僕はワレイホヨのグルメでも堪能していこうかな~」


 下唇に指を当てながら答えるケイは、そう言うとフラフラと酒場に入っていった。もうかれこれ二か月は家にいるが、帰らなくて大丈夫なのか?


 まぁ、ケイは強いから、自分で何とかするだろう。


 今は自分のことだ。どのようにして自分を強くするのかが重要。僕は強くなるためにどうするべきかを考えなくてはいけない。考えなくして成長はない。

 強くなるために強い奴と戦う。それをするためにここまで来たのだ。早く迷宮へ行かなくては。それでもって、早く下まで踏破するのだ。


 僕は口を引き結び、一人で大迷宮の入口へ向かう。周囲にいる大迷宮攻略挑戦者達の目は冷ややかであり、また苛立ちを持っている。

 原因は僕の姿、詳しく言えば年齢だろう。こんな幼いガキが大迷宮に挑戦しようだなんて、自分達の沽券にかかわることだ。

 自分達は子供と同じように攻略できていません、などというレッテルを貼られたくない。当たり前だ。


「何、こんなところに来ているんだ~~?」

「ガキは家でママのおっぱいでも吸ってな」


 ギャハハと下品に笑った。つられて周りの者達も笑っている。


 ママか。僕が物心つく前にはすでに故人だった。だから母乳の味は知らないし、温もりも知らない。父さんは育児放棄気味であったため、近所の牛乳を貰っていた。

 母の乳の味か。


 煽りにはきちんと乗ってやろう。


「じゃあ、お前が連れてきてくれよ」

「あん?」


 僕は煽ってきた男のこめかみを、鞘に収めたままの剣でぶん殴った。


「……は?」


 何も理解できていないままの男も叩き潰す。


「僕の母さんはもう死んじゃっているんだ。家でママのおっぱいを吸ってやる。だからお前等が連れてこいよ」

「何、を……」


 何か反論して来ようとする前に、脳天に鞘を叩きつけた。


 周りで笑っていた輩から笑顔は消えていた。

 二人十発ずつ殴ったところで煽りへのお返しを止め、大迷宮へと向かう。僕の後ろの方で、何やらワイワイ騒いでいるが気にしない。


 僕の前にシュッとした、端整な男女が立ち塞がった。


「……何か?」

「…………いや」

「おい、サンナ?」

「行っていいぞ」


 女は僕に何を感じたのか、男の胸を押して道を通してくれた。僕は素直に歩くことにした。


「お、おい、サンナ、何で通したんだよ」

「あれは死にたがりの眼だ。関わるのは止めた方がいい」

「な、成る程」


 おい、聞こえてんぞ。


 僕はオドオドしている男と強気な女の会話をばっちりと聞き、舌打ちをした。

 そして、僕は大迷宮という洞窟内の階段を下りた。

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