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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
6.フロイド
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2.頼られるケイ

「ん」


 僕は覚醒した。ぱっちりと目が開く。

 寝ながら首を隣に倒すと、エルがぐっすり眠っている。寝顔が可愛い。天井は木張り。体を包む毛布と敷布の感触が気持ちいい。


 今は真夜中の時間帯。月がもうすぐ天辺に来るくらいの頃。

 窓から月明かりが差し込んでいる。窓辺にはエルの血の入った皿が置いてある。そこから発せられるオーラのおかげで蟲やら獣やらが寄ってこない。


 僕は緩慢な動作で、隣を気遣いながら起き上がった。


「ふぁ~~」


 欠伸をしながらベッドを出る。大人っぽい黒のレースがあしらわれた下着をなおしながら、肋骨辺りをコリコリと掻く。

 くぅと、僕の腹部から可愛らしい音が鳴った。体が栄養を欲しているようだ。


 部屋を見渡す。エルの部屋は何もないに等しい。小物が適度に置かれている物置とそこそこに集められた本が入れられた棚。本なんて集めるほど知的だったっけ。後は酒の収められているケース。


 食べ物ないなぁ。


 お腹が空いて夜に起きるなんて初めてだ。


 僕は夜眼が利く。魔眼があるからね。

 僕はランプではなく上着を手に取って、そのまま下着の上から羽織る。そして外に出る。


「ホゥ」


 掌に息を吹きかける。

 息が白い。流石厳冬だ。下着にカーディガンは選択ミスしたな。

 自分の肩を擦りながら、ユーヤ宅に侵入する。


「キッチンに何かあるかなぁ」


 少し屈んで、キッチン下の棚を探る。別に魔眼を発動していないので、どこにあるのか不明だ。


「お、大根だ。直食いは辛いけど、お腹は膨れるか」


 ガリと齧り付く。中から水分が出てきた。顎を伝って喉までくる。

 甘いな。大根特有の辛みはあるが、同時に甘みもある。これは新鮮な野菜のそれなのか、クライネの育て方が理由なのか、それは分からないが、美味い。育て方が理由なら、うちの国に教えてほしいな。


 コテン。


「アイテ」


 頭頂部が叩かれた。どうせこれはユーヤの仕業だ。無視無視。

 僕は大根を食べ進める。美味い。美味すぎる。大根ってのはこんなに美味かったのか。


 コンコン。


 刃を潰した剣の背で叩いてくる。


「大根って美味くね?」

「そうだな。で、ケイは何してんの?」

「腹ァ減っちゃって」

「……そうか」


 ユーヤは刃を潰した剣を壁に立てかけた。そしてベッドに座った。


「ユーヤは食わねぇの?」

「別に腹減ってないし」


 僕が右目を閉じてユーヤを見る。


 僕は反転してキッチンに凭れる。大根を一口齧り、ユーヤの顔を見下ろす。目の下に隈がある。眠ってないのか?


「思い詰めてんなァ。溜め込んでないで発散した方がいいぜ。僕でよかったら聞くよぅ?」

「いや、別に僕は……」


 大根を一口食べ、あ、食べ終えちゃった。


「僕に隠し事? この僕に?」


 僕は自分の目をトントンと叩きながら、ユーヤに圧をかける。ユーヤは僕の方を見ずに、ただ肩を震わせた。

 瞳をキョロキョロと挙動不審に動かしたり、指を高速で合わせたりしている。ユーヤも僕の魔眼を知っている。隠し事は無意味であることが分かっているだろう。


「ケイ」


 その声は少し湿っていた。

 

「フフフ。話す気になったかい。エルもそうだけど、いくら僕が心を読めると言っても、言わなきゃ分からないことだってあるんだよ。声音による表情とかね」

「分かった」


 ユーヤは握り拳を作った。


「ケイ、もう駄目だ。僕一人ではもう限界なんだ! 力を貸してほしい!」

「何をしてほしいの?」

「大迷宮へ行きたい。って、えぇ!?」

「あん? 今更気付いたのか? 僕はさっきからずっとこの格好だぜ」

 

 ユーヤが僕の格好に気付いた。僕の下着姿を見て恥ずかしがってんのかと思ったが、違った。厳冬によくそんな薄着するな、だった。


「寒くてしょうがないさ。僕だって後悔している。……ベッド入ってもいいかい?」

「……しょうがないな」


 ユーヤがベッドを開けてくれる。

 僕は遠慮なくベッドに入る。


「あぁ、そういえば、大迷宮に行きたいんだっけ。いいよ。ただし、僕からも条件がある」

「ん? 何だ」

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