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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
5.イアウカ
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10.イアウカと戦うミデリー

 敵対した瞬間に切り込もうとした。しかし、イアウカは想像していた以上に速かった。

 地面を撫でるようにして前足が振られる。


 私は剣を間に入れ、防御するが、それでも吹き飛ばされた。素直に上手いと思う。真横の薙ぎじゃない、掬い上げるような振り。

 私は空中で体を反転して着地する。


 やはり慈悲深い。一撃で終わらせないようにしている。それに、周りに被害が出ないようにしている。

 優しい。優しいなぁ、おい。これが最強の姿か。


 宝剣を振ってバランスを取り、迫ってくる銀狼を迎え撃つ。頭の位置が五メートルの高さにある巨体だ。牙の攻撃が少ない。気を付けるべきは爪の方だ。


 上から前足が降ってくる。


 一撃、私の真横に打たれる。その振動が骨身を襲ってきた。あぁ、こりゃ駄目だ。受けたら骨が逝くぞ。往なすのもリスクが高い。躱すのが一番だ。

 その前に、今の一撃の風圧が凄い。髪が持っていかれてしまう。


 次の一撃が来る。まだ風が終わっていないのに。

 口角を上げる。風を利用しよう。

 自分から足を離すと、風に飛ばされる。おかげで一撃を逃れた。


 気付いた時には次の一撃の準備。


 速い。脚撃が降ってくる。それは雨といえるほどに。

 後ろに跳ぶだけであれば、すぐに袋の鼠だ。横へ飛んだり、あえて前に出たりもする。


 反撃ができない。集中していけば、足撃の一つ一つが見えてくる。それでも反撃に繋がらない。


 優しい。本当に優しいやつだ。イアウカは魔法が使える。周知の事実だ。それを使っていないことを考えると、まだ本気を出していない。

 まだ私を帰らせるプランを残してやがる。何て優しい奴だ。


 あ、これは無理だ。避けられない。私は宝剣を横にして、受け流す。

 痛い! 受け流せた。それでも痛い。骨に来ている。流せなかったら本当に死ぬぞ。


 上へ帰って行こうとする銀毛の脚を睨み、一気に攻転する。

 銀狼の真下へダッシュ。イアウカは三本の脚で後ろへ飛び、逃れようとする。


 私は腰元に用意していたナイフを投げつけた。狙うのは目。


 狙いに気付いたイアウカは目を閉じて頭をずらし、毛で受けた。それなりの力で投げたはずだが、銀毛で弾かれてしまった。毛を分けて肉まで到達することがないのか。

 そこでイアウカが魔法を使った。一瞬にして私の後ろに移動する。


 再び掬い上げ、打ちあげるような前脚。私は宝剣をぶつけて、直撃を避けようとする。


 分かっていた。防ぎきれない。止まらない。簡単に宙へと投げ飛ばされる。


 イアウカが口を広げた。牙か。

 私として飛べぬ生き物だが、このまま食われる気はない。

 私は背中から炎を噴き出し、落下スピードを上げる。


 宝剣を振るい、銀狼の口端を切っていく。爆発の威力と、重力を利用し、普通に振るよりも大きな力を発揮する。


「おぉおおおおおおおおお!!」


 力一杯に振り抜く。

 どうだ。私はコングラを超えたか?


 その油断を打ち壊すように尾が叩いてきた。


 おいおいおい。普通尻尾ってのは柔らかいもんだろ。何で私の骨が二、三本逝ってんだよ。皮膚が破けて血が噴き出している。尻尾ってのはそんなんだっけ?


 空中で体勢を整えようとする。


 暗黒魔法を発動してくる。空中にいては躱すことができない。自分を中心として火魔法を発動させ、魔法を防ごうとする。

 それではすべてを捌き切れるわけではない。爆炎を抜けてきた暗黒魔法を剣で弾く。空中にいるせいで体がくるくる回ってしまう。


 暗黒魔法だけではなかった。いつの間にか火、水、然、地、雷。魔法も一級品か?


 フフッ。いつの間に、か。私が実際の頃から感じることのできなかった感覚だ。懐かしい。

 最高の気分だ。向こうはおそらく違うだろう。


 私が戦っているのは悦楽のため。向こうが戦っているのは生存のため。根本が違う。


 私はこの時間が長く続けばいいと願ってしまう。向こうはむしろ早く終わってほしいと祈るだろう。

 惜しいことだが、私はイアウカの方を尊重する。早めに終わらせてやろうじゃないか。


 イアウカの前脚が叩き落とすように振り下ろされる。

 簡単にやられる気はないが、私に耐える術がない。

 私は高速で地面に激突する。威力は私の身体だけでは収まらず、地面に罅を作った。それでも衝撃は抜けきらない。


 私の身体がバウンドする。


 イアウカは休みを与えてくれず、前脚を薙いだ。

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