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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
5.イアウカ
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3.ミデリーを迎えるユーヤ

「別に三大モンスターのどれの縄張りが一番近いとかはいいんだけどさ、結局、ミデリーはどれかと戦おうとしているのか?」

「割と確率高いと思うよ」


 僕の疑問にケイが答えてくれる。


「ま、僕は件のミデリーを知らないんだけどね」


 ケイは舌を出し、手を後頭部へやり、片目を瞑り、もう片目は明後日の方を向いている。初めて会った時にもしていたが、その動作は一体何の意味を持っているんだ?


「これはね、テヘペロといって、とても由緒ある動作なんだぜ」

「エル」

「私は知らねぇ」

「と、言っているが?」

「エルを使うなんて卑怯だぞ」


 いや、そっちが嘘ついたんだろ。


「……テヘペロは照れ笑いとか誤魔化し笑いとかの意味で使う言葉だよ。テヘって笑って、ペロっと舌を出すんだ。ミスとか失敗したときとかに、周囲に愛嬌を振りまくニュアンスで使う軽い謝罪の動作さ。おどけていると言っていい」

「無駄に時間を使ったな」


 おふざけに付き合ってしまった。


「で、ミデリーが戦うと思う理由は?」

「あいつはよくコングラを超えてやるって言っていたからな」

「コングラ?」

「ランレイグ家歴代最強って言われている当主さ」


 エルが出したコングラの名を説明してくれたのはミデリーだった。


「よー、ミデリー、久し振りじゃん」

「あぁ、久し振りだな、アイネ」


 アイネが手を振ると、ミデリーも手を振って返した。


「アリスはいるかい?」

「あっちの邸宅だ」

「あ、お母様。どうしたの?」

「アリス。今まで放置しちゃってごめんね」

「ん? どうしたの、急に」


 本当にどうしたのだろう。そもそも放置したのはミデリーだ。いまさら何を言っているのだろうか。

 ケイが口を挟んでこないということは本物のミデリーなのだろう。


「アリス。私と立ち会ってみないか」


 反応は劇的だった。エル、アイネさえも驚愕している。普段のミデリーからでは考えられないのだろう。


「え、いいの」


 アリスはアリスでキョトンとしている。さっき僕と戦ったばかりだが、大丈夫なのだろうか。


「あぁ、いいぞ」

「いつも渋っていたのに?」

「あぁ、いいぞ」


 アリスはケイを見る。ケイはアリスの心を読み取ったのか、ゆっくりと頷いた。何のやり取りがあったのか分からないが、アリスは何かに納得したらしい。

 アリスは模造の短剣を構えた。ミデリーはただ立っている。それだけだというのに、圧倒してくる威圧感を放っている。

 アリスはどう攻めようかと悩んでいる。なぜか隙が見えない。隙がありそうな立ち方をしていそうなのに。


「ユーヤ、お前ならどう攻める?」


 それを今考えているんだが?


「攻めあぐねている。皆ならどうすんの?」

「僕は全力で逃げるね。あれと戦うのは得策じゃないし、戦える奴に任せた方がいい」


 納得だ。そもそもケイは非戦闘職である。戦う意味がない。


「アタシは真正面から叩き潰す」

「私もだな」


 二人揃って、考えるよりも体が先に動いてしまうタイプなのか。いや、考えた結果の行動なのか?


「考えたうえで、暴力によって何とかなるのがいけない」

「何事も、困ったときは暴力さ」

「間違った格言だな。いつか、挨拶したら死んだとか言い出しそう。でも、そうか。強者は真正面から捻り潰すもんな」

「絡め手を使っていいと思うんだけど……」


 ケイが何か言ったが、僕は深く考えることを止めた。


「アリス。来ないなら、私から行こう」

「フ!!」


 実質の死刑宣告。アリスは行動せざるを得なかった。

 分かる。分かるぞ、アリス。でも、それはきっと悪手だ。


 ミデリーは前へ倒れるように走り出し、アリスが反応するよりも前に攻撃を加えた。アリスも咄嗟に短剣で防ごうとするが、間に合わない。

 ミデリーの蹴りがアリスの胸に刺さる。あれは痛い。息ができなくなる。


 アリスは短剣を落とし、胸を押さえて膝を着いた。瞳が細かく揺れている。


 あれは駄目だ。もう堕ちる。そう思った直後、アリスは倒れた。


 終わってみれば瞬殺だった。かなりの差があるのは明白。アリスに追いつかれつつある僕が、ミデリーを何とか出来るのか?

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