13.ケイと戦うユーヤ
言っている意味が解らない。何だ、相応しいって。
めっちゃ薄い胸を張っていやがる。何でだ?
うお、睨まれた。本当になんなんだ。
「済まんな、ユーヤ。何つーか、付き合ってくんねェか?」
「ご飯食べたい」
「じゃあ、先に朝御飯にしようぜ。気持ち悪くなっちゃうかもしれないけど」
ケイはクライネの方に行くと、既に盛り付けられているサラダを机に置いていった。
机は部屋の中央に配置させられている。
クライネを含めて机の周りに集まり、朝食会が始まる。
僕はフォークでキャベツを刺し、口に運ぶ。シャキシャキしていて美味しい。
「超しゃきしゃきじゃん。新鮮大好き」
「えぇ、私の家裏の畑で育てたものです。他にもいろいろと育てています。今後をお楽しみにしてください」
「魔眼は使わないで楽しんでおこう」
ケイが馴染んでいる。さっき会ったばかりのはずなのに、打ち解けている。僕にはできない芸当だ。
いや、僕が会ったことないだけで、他の者は知り合いっぽいんだよな。実際エルから教えてもらったしな。
「何見てんの?」
ケイが話しかけてきた。いや、と言いながら目を逸らす。
不思議だ。ケイを見ても強そうに見えない。それでもエルが戦ってみろと言った。
何かの強さがあるのだろう。そこは戦ってみないと分からないが、絶対に何かある。
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朝食後、僕とケイは中庭に出た。
何で戦うのか、僕はよく分からない。でも、戦わなければならないらしい。僕は刃の潰れた剣を抜いて構えた。
ケイは膝を曲げるようにして腰を落とし、膝に手を当てている。肩を中に入れるストレッチをしている。
最近の僕は負け続けている。ミデリーにエル、そしてアイネ。皆が強者。
強者に勝つには正攻法じゃ無理だ。上から潰されてしまう。いつかは正攻法で越えるべきなのだが、今はできない。客観的な判断による結論だ。
奇襲。だまし討ち。これしかない。
剣を構えながら、ケイを見る。
「ちなみに、いつ始めんの?」
「ん? あぁ、合図的なこと? それならいつでもど……
「フッ!」
ケイが話し終わる前に攻撃を仕掛ける。
鋭い一閃。僕史上でも上出来な奇襲だ。
しかし、ケイはそれを躱した。最小限の動きで、かつギリギリで。
気付いてから修正しても、当たらない位置だ。
「あ、ぶ……」
ケイが冷や汗を掻きながら、剣身を見て息を拭く。
ケイは独特なステップを踏んで間合いを取る。
僕はそれを逃さないように踏み込んで剣を振るう。ケイの逃げ足の方が早く、剣が届かない。
どんどん距離が開く。追いつくために僕も足の回転数を上げる。
「悪手」
そんな言葉が聞こえてきた気がした。
ケイは急激に止まり、むしろ反転してこちらに向かってきた。
「ナッ!?」
僕も止まろうとする。しかし、向こうの行動の方が速かった。
ケイは屈み、自らの体を石ころにした。僕はその石ころに足を引っかけた。僕は何とか踏み止まろうをするが、勢い余って手を着く。そのまま体を一回転して反転させる。
ケイは口端から血を流しながら背を丸めている。ん? どの時のなんだ? あの血。
ケイが丸めていた背を伸ばす。どこも痛くなさそうだ。嘘だったのか?
ペッと血を吐き捨てたかと思うと、手を招いてきた。
挑発だ。簡単に乗っちゃだめだ。これに乗ると自分のペースを乱すことになる。乱されれば負ける。相手のペースになっているということだからだ。
冷静に考えてみる。
ケイは魔眼族だ。どんな魔眼を持っているのかを不明だ。それでもあの戦い方を見ればわかる。
僕の動きが見えている。それを裏切るにはどうすればいい。
そう、より疾く。
これしかない。
僕は剣を腰に溜めて、足に力を込める。そして力一杯に踏み出す。
さっきの二倍は早い。明日は痛くて歩けないかもしれない。それでも打つ。
ケイは分かっていたかのように横に逸れ、棒を取り出して水平にした。そこにあるのは僕の腹。
ドゴンと当たる。
僕は手を当てながら、ケイに剣先を向けて反転した。
「は?」
僕の視線の先では、ケイが倒れていた。
「え? 何? どうした?」
「……」
答えが返ってこない。ケイのことを見ると、かなりの汗を流していた。しかも、右の手首が外れていた。
『えぇ~~~~~~~?????』
僕は思わず叫んでしまった。




