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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
4.ケイ
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12.以心伝心なケイ

 雲行きが怪しくなってきたな。


 何がどうこうでマズいという話ではない気がするが、僕にとってはマズイ話だ。


 皆は勘違いしている。魔眼族が強いと思っているのだ。主に僕の責任であるが、そうなってしまっている。

 まず魔眼族の強みは、種族の名前にもなっている魔眼だ。全部で八種類あり、八割は一つ、残り二割は二つ以上魔眼を持って生まれてくる。それが強さに直結していると言ってもいい。

 しかし、魔眼は持っていればいいというものではない。魔眼の強さが強ければ強いほど、肉知的な強さが弱くなる。


 次の強みは……。強みが……。強みがない。


 体格は人間族の子供とほぼ同じだ。観測されている最大の身長は百六十五㎝。その分の筋力しかないため、武術の修得が遅いという特徴も持っている。


 強みがないと言ったが、しいて言うなら、魔力総量だ。魔眼を扱うために必要になることから、魔力がかなり多い。全種族の中でもトップクラスだ。

 しかし、この魔力は魔眼か魔法防御にしか使っていない。魔法攻撃に回しても上手くいかない。実際僕は二百年近く修業しているが、二種しか扱えない。そのうちの一種は初心者にすぐ追い抜かれるような下級しか使えない。


 僕には二百年近くのキャリアがある。それが僕の強さであって、魔眼族の強さではない。それを魔眼族の強さと思われてしまったのだ。


 僕は魔眼四つ持ちだ。それにふさわしい体を持っている。超弱弱しい体だ。いくら鍛えても筋肉が付かず、武技魔技の習得も遅い。

 エルが手伝ってくれなければ、今頃僕はモンスターに蹂躙されて死んでいただろう。

 エルは僕の強さを知っている。僕の強さを正しく知っている。


 きっとエルは心の中で、僕とユーヤが戦うように仕向けてくるだろう。


 ほら、僕と戦ってほしいと思っている。どういう風に言いくるめるか思案しているもん。


「エル」

「ん? まだ起きてんのか? 寝たんじゃないのかよ」


 僕にしか聞こえないように、エルが会話してくれる。


「明日ね、明日」

「明日? 協力してくれるのか?」

「うん。今日はもう眠いし、体力がもうない」

「相変わらずだな。走り込みからか?」

「ブランクがあるんだからお手柔らかにね」


 やはりエルの背中は安心する。安定感があるし、不安になることがない。


「ブランクがあるなら大丈夫なのか?」

「んー、ま、いざとなったら理属性魔法で何とかするさ」

「……死ぬなよ」

「平気平気。僕は極致だぜ。油断だってしない。疑うかい?」

「いや? 私がお前を疑う事なんてないよ」

「エル、好き~~」


 全体重を預けていたが、それまで以上に体重をかける。


「ん? …………ん」


 エルは何も言わずに受け入れてくれた。心を読んでも、エルは真実を語ってくれる。好き。

 エルは腹芸をする。別に裏表がないわけではない。それでも僕を裏切ろうという意志を感じない。

 だから僕も裏切らない。エルが戦ってほしいというなら戦うし、抱かれろというのならロマンを大事にしながら抱かれる。


 今回はこのユーヤと戦う。理由付けだってできている。完璧だぜ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日、僕は元気いっぱいに起き上がった。


「おっはよー、諸君! ケイちゃんのお目覚めだぜ?」


 僕は目の横でピースをしながら、朝の挨拶をする。

 エルはコーヒーを飲みながら、僕の頭をポンポンとした。

 アイネはユーヤのベッドで二度寝している。こいつはかなりの自由人なので、無視していいだろう。


「おはようございます」

「……おはようっていうか、誰?」

「お互い様じゃね?」


 クライネは挨拶を返してくれる。クライネは僕が魔眼族であるのを知っている。最低限の会話をしてくれるので、僕の中での評価は結構高めである。

 眉根を寄せている少女はアリス。こっちとしても誰? という感じだ。ほうほう。ミデリーの娘か。上級上位!? 僕と同じかよ、末恐ろしいな。

 あとはアリス付きメイドであるメリッサ。スカートの裾を少し持ち上げて礼をしてくる。洗練されているな。二十歳なのに偉いな。


 そしてユーヤ。挨拶を返すわけでもなく、めっちゃ見てきている。何で? 美人を見る目じゃなくて観察するような目なの何で?

 ちょい心を覗いてみる。


 おいおいおい。僕が魔眼族であることを知っているじゃねぇか。だ、誰が言ったんだ。……エルかよ! じゃあ、いいや。

 ユーヤも何か、エルがいるから悪いことはしないだろうって思っているのは好感が持てる。抱かれてもいい。


 ユーヤ、お前いい奴だな。


「ユーヤ、外に出な。お前が相応しい男かどうか確かめてやるぜ!」


 もうウッキウキだぜ、僕は。

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