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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
4.ケイ
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10.食らうケイ

 腹が減った。

 この腹を満たすために、まずは店を探さなければ。


 お? よさげな小路。ここに入ってみよう。

 そもそも何が有名な村もとい地域なのか、僕は知らない。


 ん? この店美味しそうだな~。でも、この腹に肉やら香辛料やらのガツンと系。遠慮しておこう。この胃袋が元気になったらまた来よう。


 小路を奥の方へ進む。


 ふむ。ここは呑兵衛通りのようだ。飯を食うって感じじゃないな。お酒を呑みながらおつまみ。魅かれるが、今は食事系だ。


 さらに奥へと進む。


 ここは工芸エリアか? 食べ物っぽくない。別の道へ出た方がいいな。


 僕はこういう時に魔眼を使わない。その時にピンときたものを食べるのだ。リサーチなんかしない。

 ここは、何屋か分からないな。怖い。冒険は極力控えたい主義なんだ。

 居酒屋でも構わないんだけど、問題は飯物のあるなしなんだ。この空きっ腹を液体と少量のつまみで満たしたくない。


 お? おにぎり処? おにぎりといえば森に生きる精霊や猿獣人が育てているトゥエイロを握り固めたものだったかな。

 いいね。ここにしよう。


「いらっしゃいませ」


 ドアを開け、中に入る。三人。一人は主人の猿獣人。毛が入らないように気を遣った服を着て、手付近の毛は剃っている。残りの二人はおばちゃんの客。美味しそうにおにぎりを頬張っている。


「こちらの席へどうぞ」


 店のカウンター向こうから促される。僕は素直に従い着席。


「はい、おまち」


 先客におにぎりが出される。トゥエイロの隙間からおかずが見えるな。そういえばおにぎりはトゥエイロの中に具と呼ばれるおかずを入れるんだっけか。

 壁にメニューが書かれたボードがかかっている。あれがもしかして全部具か? いいじゃないか。テンションが上がる。


 ガンスダッドボルテールにプルスエリア、鯛、鮪、コントエリア等の魚介類に、牛、豚、鳥、ジンダタ、アルミラージ等の肉類、ミーツやポートルートやダイコン等の野菜類。面白い。こんなに種類があるなんて。


「こんなにも美味しいなんて、いっぱい食べちゃうわ。う~ん」

「そうね。ねぇ、大将、これまで一番食べた人って何個食べたの?」

「そうですね~、百個は食べてましたね~。このメニューの端から端まで全部」

「まぁ、そんなに?」


 まぁ、そんなに? 随分な大食漢だ。僕は少食だし、リハビリしなきゃいけないって考えると無理だね。

 それに、全部は野暮だ。大将の腕を信じて、大将の持つ何種類もの味から、いくつかを選び、どんなハーモニーにするかは客のやるべきことだ。要は、食べたいものを食べたい。ま、全部選んでもいいんだけどね。


 まずは千里眼で戦況を把握するように、メニュー全体を見るんだ。

 あっちはおかずだな。具じゃない。本物のおかず。おや、汁物はこっちか。


 よし、全体像は掴めた。あとは僕の直観力だ。


「すみませ~ん」

「はい、お決まりですか?」

「えっと、アベランチの魚卵、ゴロバス貝、ネギ鮪とあとはアユの塩焼きとガンスダッドボルテールの炒め物、それからプルスエリアのアラ汁でお願いします」

「はい、お飲み物は」

「えっと、お水で」

「はい、お水ね」


 僕は満足気に手を拭く。あ、あっちの方が、いや、戦いは始まったばかりさ。


「はい、お待ちどー」


 三分ほどで汁物とおにぎりがやってきた。


 幕開けを飾るのはアバランチの魚卵のおにぎり。アバランチは上級上位のモンスター。そうそう手に入るようなものじゃない贅沢品だ。それをおにぎりに。最高だ。

 お~、しっかりとした味付け。御馳走で通ずる美味しさだ。


 汁物は温かくてしみじみと、胸が、体が温まる。


 ゴロバス貝のおにぎりはっと。お? マレットスの城内で食べたものとは別人感。これはこれで良き。

 ネギ鮪。これは自国でも間違いなしの名コンビ。あ~、やっぱり名コンビ。頼んで正解だ。たまらん。


 さて、第二陣だ。次は何のおにぎりにするか。塩焼きや炒め物も援軍に来ると考えると。


「すみません」

「はい」

「ランドゥアリーの魚卵と、ヴァイパーと、しょうがをお願い」

「はいよ」


 よし、僕のお腹はむしろ空き始めた。


「はい、アユの塩焼きね」


 匂いで攻めてきやがる。まだ腹を空かせてくるのか。


「背鰭を取って齧り付いちゃってください」


 猿獣人の店主の言う通り、背脂を取って齧り付く。


 美味し。


 川魚の塩っ気に独特の香ばしさ。美味し。こういうのがいいんだよ。汁物とも合う。


「はい、おにぎり」


 僕は一も二もなく齧り付く。

 ランドゥアリーの魚卵のプチプチさ。たまらん。


「知り合いの獣人協会の奴が届けてくれるんだ」

「成る程ね」

「昔っから釣りが上手くてね。よく釣ってくるんだ。客は新鮮な魚が食べられる。私は仕入れが助かる。いいことづくめさ」

「ははは」

「ははは。はい。ガンスダッドボルテールの炒め物だよ」


 この匂い、ニンニクか。また食欲増進かよ。


 しょうがは辛口か。舌を刺してくる。ガンスダッドボルテールに負けない美味さ。

 ヴァイパーは、いいな。食べたいことなかったけど、美味いな。こんな味なのか。マレットスでも流行らせようかな。


 いいな。豪華王道。そこに当てはまらない覇道。その道を歩む者だっている。そこで成功する者も。ま、たくさん頼んだけど、どれが王道か知らないけどね。


「ごちそうさまでした」


 勘定を払い、外に出る。


 フー。いっぱい食べてしまった。それでもまだ食べたいメニューがたくさんある。

 また来よう。


 僕は満腹満足でエルのいるところへ向かった。

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