9.崩れ落ちるケイ
隣の元傭兵がこちらを視ている。
分かるよ。僕って可愛いもんね。目の保養になるもんね。いいよいいよ。減るもんじゃないし。ジャンジャン見な。
さて、冗談は置いておいて、この男性は僕のことを凄く心配しているな。さっきのお婆ちゃんと女児は武装した父親とともに下りてしまった。元傭兵としては自分の力が必要ないと判断したからか、付いて行こうとしなかった。
その点、僕は一人だ。下りたところでエルがそこにいてくれるとは限らない。しかも、元傭兵にエルのことは話していない。話すのが億劫だからだ。
でもこいつ、キモいんだよな。僕のこの体に本気で性的魅力を感じていて、明らかにポイント稼ぎしようとしているんだよな。
……ばらしておこう。僕は魔眼族で、人の心を読むことができる。君のピンクのそれ、全部見えているぞ。
「な、なぁ、もしよかったら」
「なぁ、兄ちゃん。僕はな、魔眼を持っているんだぜ」
「……え?」
元傭兵が目を丸くする。
「そのピンクのものを咎める気はないぜ。生き物の自然な反応だもんな」
「な!?」
「ちなみに僕自身は未経験者だぜ。妄想で活用するといい。ちな僕はここで降りるから、じゃあね。あ、これはあげるよ」
「へ?」
元傭兵はホカホカのものを受け取った。不思議そうに広げると、それは布である。逆三角形の布に小さなリボンが付いている。
「ブッ!?」
これはあれだ。いわゆるパンツというやつだ。
元傭兵は耳を真っ赤にしながら両手で潰してポケットにしまった。
僕は手をヒラヒラさせながら別れを告げた。
僕はズボンのポケットに手を突っ込んだまま村を歩く。皆思うだろう? いつ脱いだんだって。そこは不思議時間が過ぎたってことで。
土の匂い。草の柔らかさ。自然を感じる。それでも人がいる。商いをし、そこに住み、生きている。日常じゃない賑わいもある。
ズボンの裏記事に直接デリケートゾーンが触れている。ちょっと落ち着かないな。上げなきゃよかった。
僕はかなり幼児体型だ。エルやアイネではサイズが合わない。一緒にいるエルフちゃんはスレンダーモデル体型だが、背がある安産型。僕の腰とか股とかのサイズが合わない。
この男の子が一番僕の体のサイズに近いのか。……ま、僕にその辺のプライドなんてないからいいんだけどね。
「パンツ貸してくれって言ったら貸してくれるのかな?」
村の人に聞こえないように呟いた。
魔眼を発動させながら歩いているため、迷うことはない。歩けば歩くほど人の気配がなくなっていく。村の人達は全員中央に向かっている。何だろう。
あった。これが今エルの住んでいる場所か。もう人の気配がしないから、いる気がしないんだよな。
魔眼はまだ使わない。魔眼って魔力使うから疲れるんだよね。
コンコン。
シーン。
ま、知ってたよね。いないの。
「何処だよ、エル」
魔眼を発動させる。
おっと、いるのは村の中央じゃないか。しかも、隣村の。
「う~~わっ。マジかよ。この村の中心なら会いに行けるけど、隣町じゃ無理だろ」
僕は溜息を吐きながら扉に背を預ける。皆隣かよ。
何か疲れちゃったな。僕がドアに凭れながら空を見る。
どうしよっかな。今日これから何するかな。
ぐ~~。
考えていると、僕のお腹が鳴った。腹減ったな。そう言えばここに来るまでの間に屋台やら出店やらあったな~。
よし、行こう。飯を食いに行こう。最近は美味しいご飯を食べていないからな。味より保存を重視した携帯食しか口にしていなかった。温かくて美味しいご飯を食べたい。
皆が帰ってくる前に好きなものを好きなだけ食べよう。
「よ~し」
僕は美味しいご飯を求めて歩き出した。




