7.船上のケイ
船。
それは人や物などを載せて水上を渡航する目的で作られた乗り物の総称だ。
特徴として、一度に大量の貨物を運べることだ。輸送時間はかかる一方、運べる量・費用・環境への配慮などが優れている。
これだけ言われたのならば、船最高やん、となるかもしれない。しかし―――、
「うげぇ」
―――僕は、船が苦手だ。
もう酔ってしまっている。出発から二日。すでにきつすぎる。実は出発から三時間程度で酔い始めていたため、もうどうしようもない。
僕は船に弱い。僕自身がそこまで激しい動きができないからだと踏んでいる。
「ヤバい」
僕は口元を押さえながら、船内を走る。そして、僕は船の縁に掴まりながら、オロロロロと吐いた。
「大丈夫ですか?」
声のする方を見る。制服を着た人間種。船員の格好をしているが、似合っていない。
「私はこの船の船員です。このタオルと水をご使用してください」
嘘つきだ。僕の審偽眼が鈍痛を訴えてきている。鑑定眼からは水の中に睡眠薬が入っていることをお知らせしてきている。
自称船員からタオルと水を受け取る。
僕が飲むのを待っている。
この男性は詐欺師というより誘拐犯だ。小さな子を攫い、小児愛な貴族に売る。人身売買グループの一員だ。
まぁ、このグループの活動拠点はレイベルス国かホンスクロ国だ。僕が深入りしてやる必要はない。
僕は水を口に含んで漱ぎ、海に向かって吐いた。タオルで口の周りを拭う。
「はい」
僕がタオルを渡すと、誘拐犯が少し眉を顰めながら受け取った。渡されると思っていなかったのか。それほど強い睡眠薬だったのか。僕は毒薬に詳しくないからよく知らないが。
僕はゆっくりと身を屈める。指が船の床板に触れると、すぐに横へ移動し、男の脚を刈った。
「うおっ!?」
油断していたからか、男性は前につんのめり、布を持つ両手を床に着いた。
「このっ!」
男性は身軽そうに側転し、こちらを向く。お、怒った怒った。まぁ、怒らせるためにやったから当然なんだけどね。
僕は分かりやすく対面の手摺まで走る。こう見えても僕は逃げ足が速いのさ。
クルリと振り返る。もちろん男性は追ってきている。頑なに血が上っている。こういうやつはやりやすくて助かる。
僕は男性の右手首を右手で掴みながら、体を回転させる。僕の腰を相手の腰にぶつけた。
回転の力を利用して男性を浮かせる。そのまま腰を手摺にぶつけさせた。
手摺が変形するほどの威力。僕は男性を何とか傾け、布ごと海に落とした。
―――――――――――――――――――――
五時間後、船は港に着いた。
僕はもうぐったりだ。死にそう。こういう時は酒の勢いに任せるしかない。
僕はフラフラのまま酒場に向かっていく。
トンと肩がぶつかった。
「あん? 何ぶつかってんだ、こらっ!? 俺の肩の骨が逝っちまったかなぁ!?」
絡まれた。不良にがっつりと絡まれてしまった。いつもなら普通に走って逃げるのだが、今は不調すぎる。まともに相手をしたらまた吐いちゃいそうだ。
「おい、聞いてんのかよ!!」
不良は僕の肩を乱暴につかむと、強引に正面へ向かせた。おい! 止めろ! 吐くぞ!
「ウォロロロロロロ!!」
「うわっ!?」
ほら、吐いちゃった。
私の吐瀉物が不良の服にかかってしまった。ごめん。でも抑えきれなかったんだ。
「テメッ! よくも!」
不良が逆上する。まだ気持ち悪いから暴力なんか振るわれたらまた吐いちゃうよ。
「おい……、このガキ、顔色悪すぎねぇか?」
不良の一人が逆上不良を止める。僕の青すぎる顔を見て、拳を下ろした。
「チッ」
不良は舌打ちして去っていった。
よかった。また吐くところだった。さて、早く酒を呑もう。もう船なんか乗りたくない。




