5.奴隷を助けるユーヤと謎の獣人
僕が叢から飛び出す。
「あん?」
「何だ?」
男達がこちらを向く。四人ともが剣を抜いた。
「大事な商品に疵をつけるなよ」
リーダー格っぽい男が周りの男性に指示を出した。
商品だと? 余計に怒りが湧いてくる。正式な主人ではないのに暴力を振るったのか。
ジリジリと距離を縮める。
僕は人を殺したことがない。だからこそ少し躊躇ってしまう。
「ハァ!」
小柄な男が低い位置を走ってくる。僕はそれ以上の速さで近づき、剣を踏んだ。
「な!」
僕は力を込めて小柄な男の顎を蹴り上げる。威力が強すぎたのか、下顎が砕けて黄ばんでいる歯が舞った。
敵の仲間が目を見開いて、剣を振りかぶった。僕は剣で舞っている歯を打つ。歯が高速で二人の男にぶつかった。一人リーダー格の男は剣を持っていない左手で防いだ。
この中で一番強いのはこの男だ。他の2人は雑魚。気絶させれば問題ない。
歯を食らって前傾となる二人の男の腹と頬を殴った。
すでに三人が気絶した。最後の一人は水面のような表情をしている。
ちらりと獣人族の方を見る。女獣人は目を見開くことなく、半眼を送ってきていた。あれ? 何で?
男が距離を詰め、剣を振り下ろしてきた。僕はそちらを見ずに受け止める。さらに男の蹴り始めを足で押さえる。
「ち! ガキのくせして!」
男が距離を取るために後ろに跳んだ。僕は腹を狙って剣を振るう。
あれ? 体が重い。体調が悪いわけではない。朝起きた時には何ともなかった。絶好調だったとは言えなくとも、快調だった。
しかし、今不調になっている。なぜだ? 何かされたのか?
いや、聞いたはずだ。クライネから聞いた。これは魔法の一種だ。
魔法は全部で十二種類。火、水、然、風、地、氷、光、闇、理、雷、金属、暗黒。その中で闇属性の魔法が今回の現象に当てはまる。
闇の魔法は対象の身体能力やその他ステータスを低下させるものだ。
今の僕は闇の魔法を受けている。誰にだ? いや、もちろん使うとしたら目の前の男だ。
「ハァ!」
少し動きの遅くなった僕を見て、いけると思ったのだろう。剣を連続で振るってきた。
僕はすべてを剣で打ち落とす。剣を振るうたびに少しずつ速度が落ちていく。そこに勝機を見ているのだろう。
申し訳ないが、僕の勝ちは揺るがない。これが敵の本気であるならば、あと3か月は低下が必要だろう。
「くそ!」
男が再び距離を取った。そして男は全力で剣を投げつけてきた。マズイ。避けるのは簡単だが、今僕の後ろには女獣人が……いない!?
あれ? いない!? え、いつの間にいなくなったの!?
僕は憂いがなくなったことで難なく剣を躱した。
男は二振りのナイフを装備して、走ってくる。男は長剣だけではなくナイフも使ってくるのか。
スピード重視の攻撃に対して、僕は今まで通り長剣で撃ち落とす。
「二振りでもこれかよ!」
僕は重くなった体を用いて相手する。流石にずっと相手をしているわけにはいかない。
僕は長剣でナイフを弾き、力一杯回し蹴りを叩き込む。力を入れすぎて地面が抉れた。
男の腹が凹んだ。
「これで終わりか」
僕が振り返っても、そこに女獣人はいない。
「どこに行ったんだ?」
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妾は妖力を手と首に集め、鉄の首輪に手を掛けんした。妾の力をもってすれば、このようなけったいな首輪なんて、何ともありんせん。
妾は木の膠のように鉄の首輪を引き裂きんした。
「まったく」
妾は分かりやすう大きな溜息を吐きんした。
妾はそこそこの悪行をしてやしたグループのスパイをしてやした。元々は人の脚に縄でもかけ、転ばせる程度でありんした。
時の噂では、人身売買にまで手を染める程成長したようでありんした。
そこで妾は商品に扮し、グループを一網打尽にしようと考えんした。その矢先、あの童が間に入ってきたのでありんす。
「あの童のせいで、バフォメット教のアジトが分からなくなっちまいましんした」
そして、妾は再び溜息を吐いちまいましんした。




