3.いざ、レイベルス国へ、ケイ
僕は分かりやすく突っ伏していた。だってしょうがないじゃないか。今、この国にはエルがいないんだもん。
僕は体を起こして伸びをした。
助けてほしい。実は以前アイネと会ってから、まだ一度も休みがない。ひゃ、百日以上も休みなし、とか、普通有り得ねぇよなー!!
一週間の平均睡眠時間が30分は危なすぎる。マジで眠い。急いで起きる必要がないと言われれば、二、三日は連続で寝ることができるだろう。
まぁ、もし眠る時間が与えられたとしても、そこまで眠ることなんてできないだろうけどね。
不安だからだ。僕は自分の持っている能力のせいで人が寄ってこない。仕事上の付き合いすら最低限しかない。
この能力を悪用しようとする者や悪用されないように暗殺しようとしてくる者などがいた。
下手に熟睡すると殺されてしまう。
でも、エルは違う。腹芸をしておきながら、そんなの関係ねぇと僕の側にいてくれる。
僕を裏切る気がない。だから僕も裏切らない。僕の頭脳を再現してくれる肉体派な彼女。
僕は彼女の隣でしか深く眠れない。
僕は彼女にしか心を許せていない。
「エルがいないの、寂しいな~~」
机に座りながら、足をバタバタする。
休みを貰えたのなら、エルのところに行きたいなぁ。でもレイベルス国に行って、エルのところに行って、とか考えると、一週間の休みは欲しいな~。一週間も休み貰えるはずないんだけどね。
コンコン。
戸が叩かれた。何だ、衛兵か。
「入っていいよ~」
「失礼します! ケイ様、国王様がお呼びです! 国王様の執務室までお越しください!」
うるせぇ兵士が礼をして戸を閉じた。
本当にうるさかったため、僕は小指で耳の穴を掻いた。
「まぁ、いいや。ウル君が呼んでいるって言うなら、行った方がいいか」
僕は椅子から立ち上がり、もう一度伸びをした。肩からパキパキ音が鳴る。
「あぁ、休みが貰えたら、エルへ逢いに行くだけじゃなくて、マッサージ屋も行った方がいいな。もちろんエッチじゃないやつ」
誰が聞いているわけではないが、誤解されないように補足しておく。一応だよ。一応。
コンコン。
「入ってくれ」
ウル君の声を聞き、中へ入る。
「よく来てくれた」
「やっほ~~~。ウル君が僕を呼ぶなんてどうしたの? 年単位振りじゃない?」
「そんなに空いていたか」
「僕に逢いたくないんだろ、君。分かっているよ。まぁ、この眼なら仕方ないけどさ」
「いや、済まない。権力者は怖いんだ、君のことが」
「それくらい、分かっているよ」
僕は不貞腐れた風を装い、ズボンのポケットに手を突っ込んで立った。後ろの方に体重を傾けた。
「早く終わらせたいんだろう? さっさと本題に入ろうぜ」
「分かった。実は君にクレームが入っているんだ」
「え~~、品行方正、清廉潔白、賢良方正、方正謹厳、謹厳実直、おまけに聖人君子。そんな僕にクレームかい? 何か内容は読めちゃっているけどさ、一応君の口から聞いておこうか。何だい、そのクレームは?」
ウル君は話しづらそうにしている。早く話せ。何のために本題から入ったと思っているんだ。
「君、ずっとお城にいるよね。メイド、執事、兵士、あらゆるところから苦情が入っている」
「いやぁ~~、そんなこと言われましても、ウル君を含めて皆が僕に仕事を振ってくるからだぜ。もう5年は家に帰れてないよ」
「そ、そんなこと言わないでくれよ」
僕は魔眼族としてもちろん魔眼を持っている。魔眼に魔力を流せば、意図的に光らせることが可能だ。今は水色と緑色に光っている。
ウル君はびくびくしている。周りの取り巻きはもっと怯えている。心を読めば暗いことをしているのが分かる。それがバレるのが怖いんだろう?
「で? 苦情が入っているって言われたって困るよ。僕は仕事たっぷりだから休めないしさ」
「いや、休ませる」
その言葉はこれまでの飄々としたものではなく、確固たるものだった。心の底からの言葉だ。
「出来んの?」
「やるよ」
「じゃあ、一週間の休みをくれ。体と心のメンテナンスがしたい」
「……」
「出来るんだよね」
「分かった! 分かったから眼を光らせないでくれ!」
泣きそうな顔と声をしながら、了承してくれた。
じゃあ、行くしかねぇよなぁ、レイベルス国へ!




