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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
4.ケイ
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2.収穫祭の準備をするユーヤ

 ゴトゴトと揺れている。

 これに抗わなければ、頭がぐらぐらと揺れて気持ち悪くなってしまうだろう。というかなる。僕はなった。

 今は外を見ながら気分を落ち着かせようとしている。


「大丈夫ですか? あと二十時間ほどかかりますが」

「長ぇ。走ればそんなにかかんないのに、何でこの馬車使ってんだっけ」

「も、申し訳ございません。その、我々に合わせていただいて」


 客を刺激しないように。

 そんな心遣いが聞こえてきそうな声音と冷や汗が見えている。僕はそれを見ると、すぐに窓枠に顎を置いて外に目を向けた。

 自分の脚で走ったり跳んだりするのは問題ないのだが、馬車の揺れはしんどい。


「ユーヤってこの程度の揺れにも苦しむんだな」

「……初めてだから慣れていないんだよ」


 対面でニヤニヤするエルに、僕は唇を尖らせる。


 今この馬車に乗っているのは、僕とクライネとエル、そしてポルクス家の執事の四人だ。僕の隣にはクライネがビシッと座っている。お尻のみで座っており、椅子に腿が乗っていない。さらに背が壁にくっついていない。きっちりびしっとした座りだ。


 エルは対称的だ。足を遠くまで投げ出している。さらに足を大胆に組んでいるため、短いスカートの奥が見えてしまっている。

 エルはそれを知っているのか、こちらに挑発的な目を向けてきた。それに加えてスカートをパタパタとさせて見せつけてくる。


「はしたないですよ、エル」

「ユーヤが求めるなら、馬車内でもおっぱじめやるぜ」

「エル!」

「おうおうおう。そんな怖い顔すんなよ」


 エルは両手を上げて降参ポーズを取った。エルはのらりくらりするのが得意なため、今回もやり過ごすのだろう。ところで、エルのあの仕草にはどんな意味があったのだ?

 ちなみにアリスとメリッサはランレイグの屋敷に帰った。必ず帰ってくると言っていたため、ただの一時帰宅なのだろう。アイネは二人に付いて行った。


「アリスたちは何で呼ばれたんだろうな」

「私達と同じ理由だろ」

「ん?」


 僕は何も分かっていない。この時期の呼び出しって結局何の用なんだ?


――――――――――――――――――――――――――


 収穫祭。


 秋に行われる祭り。作物の無事の収穫を祝うためにレイベルス国で行われる祭祀行事である。

 一般的には農産物の収穫時期に重なる秋に行われている。昔、約五万年前のあたりで人類が狩りから栽培に変わったとされている。それによって、この祭りが始まったとされる。起源は四季祭の中でも一番古いとされている。

 収穫に関する感謝を示す歌や踊りの他に、生産物を広く宣伝したり、販売したりするための商業的な色合いもある。とか。


「その収穫祭の準備をしてほしい」


 ポルクス家に到着した際、当主と思しき青髪の青年が出迎え、そう言った。

 正直、なぜポルクス家なのかが分からない。ランレイグ家やヒッパクト家ならば分かる。それなりに繋がりがあるからだ。


 しかし、ポルクス家は初対面のはずだ。なんか聞いたことがあるような気がするが、どこだったか。クライネから聞いたような。


「ユーヤはあちらで姉さんからの指示を仰いでください。エルさんはあちらで荷運びを、クライネさんはこちらで選定の作業を手伝ってください。お願いいたします」

「分かった」


 何で僕だけ呼び捨てなんだ? 僕自身は平民だから呼び捨てで当たり前なのだが、一人だけそうだとちょっともやもやする。

 もしかして、二人は偉い人なのか?

 僕は言われた通りに行こうとすると、クライネが止めてきた。


「ユーヤ様」

「何?」

「我々の名を押さえられております。警戒が必要でしょう」

「何かあったら、全力で暴れな」


 耳元で囁いてきた。告げるだけ告げると、二人は去っていった。

 

 確かにそうだ。何で僕達の名前を知っているんだ? ロザリオかミデリーあたりが教えたのだろうか。

 まぁいいや。姉のところに行かなくちゃいけなかったな。そういえば姉の容姿について聞いていなかった。マズイな。分からないと辿り着けないぞ。


 ……いた。絶対あれだ。さっきの男性とそっくりの姿がいた。あれで無関係なはずがない。

 僕は姉と思しき者の元まで歩いて行った。

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