1.実は初対面なユチェ
私の影、薄すぎ!?
自宅にある実験棟で、私は自分の口元を両手で覆った。ユーヤのことを観察するために、遠隔の目を飛ばしているけど、それを通して気付いたのだ。私の影って薄くね?
確かに私は滅多に外出しない。ミデリーほどユーヤにちょっかい出しているわけではない。
ちょくちょく見ていることはすでにバレている。何だったら遠隔の目、一回捕まっているし。エルにもアイネにもアリスにも捕まっているし。
どうしよう。ここいらで一回、私も会った方がいいのではなかろうか。
そうと決まれば行動だ。今作っているケープは後回しにして、会いに行こう。
私は実験棟の扉を押し、外に出る。
「う~、寒っ」
実験棟には換気システムを完備させているが、断熱性能もしっかりさせている。実験棟の中にいると、外の温度が分からなくなってしまうのだ。
もう秋か。熱さのピークはもう過ぎているから、かなり過ごしやすくなっている。
もっと暑い想定でいたから寒いと感じただけだ。30度想定の24度と、18度想定の24度では、寒暖の感じ方が違うのだ。
「あ、お姉様」
「ん、おぉ、ミィチャレスじゃないか。どうしたんだい?」
「はい。新しく作った試作品を試運転するのです。お姉様、成功するように祈ってください」
「え、ヤダ。祈んないよ」
「え!?」
「だって、ミィなら、私が祈らなくたって成功するでしょ? 私の自慢の妹なんだもん」
「お、お姉様」
「え!?」
ミィが泣き出してしまった。私はこういう時にどうすればいいのか分からない。ワタワタしていると、アーノルドがやってきた。
「ミィ。姉さんの言葉で泣くのいいけど」
「いや、良くないよ。お姉ちゃんびっくりだよ」
「実験してその結果を報告するのがいいんじゃない?」
「そ、そうですね」
泣き止んだミィチャレスがパタパタと走って実験棟へと入っていった。
「扱いに慣れてるね」
「家族且つ同士だからね」
「フーン。……同士?」
「まぁまぁ姉さん。姉さんこそどうしたの? 実験器具を置いて出てくるなんて珍しい」
「前々から話に出してるユーヤ君なんだけどさ」
「うん」
「会いたい! ユーヤ君に会いたい!」
「成る程ね。初めて知ったのが春の中旬。それを考えると、だ~~いぶ我慢した方かな」
「だろ!?」
「明らかに大人に対して使う台詞じゃないけどね」
アーノルドが整った顔を歪ませながら、盛大に溜息を吐いた。そのまま頭を抱える。
「まぁ、姉さんが会いたいっていうなら、どうにか会わせたいよね」
「さっすがアーノルド。私の自慢の弟!」
「まったく。平気でそんなこと言うんだから。そうだな。もう秋になったし、収穫祭のことでも利用する?」
「そ☆れ☆だ!」
私はアーノルドにオーバーなリアクションをしながら指を差した。
収穫祭、そんなものあったな。いろいろと私も準備しなきゃいけなかったわけだし、忘れていたけど。ロザリオのおっちゃんと話していたけど、ユーヤ君をこっちによこしてもらおう。
何かやってもらうことあるかな?
……あるかな?
「ねぇ、アーノルド?」
「ん? どうしたの、姉さん」
「呼んで、どうするの?」
「ん?」
「いや、別に呼ぶのはいいんだけどさ。呼んでどうしよう。何もすることないよ」
「うん。成る程ね」
アーノルドが顎に触れながら、少し下を向いた。頭の中でいろいろとシミュレーションしているのだろう。
ポルクス家の当主は私だ。でも私は全くと言っていいほど事務仕事ができない。その仕事をほぼ全部をアーノルドに任せている。
アーノルドはとても有能だ。私はこういう時には全く頭が働かない。モノづくりならいけるんだけどね。
実質当主としt仕事をしている関係で、アーノルドはポルクス家の仕事のほぼ全部が頭の中に入っている。その中で、ユーヤ君が関われそうなものを探してくれているのだろう。見つかるといいな。




