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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
3.アイネ
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9.龍を堪能するユーヤ

「ゴァ!!」


 アイネの口から炎弾が出てきた。僕は痛む体を鞭打ち、何とか避ける。

 アイネが石板を割り砕いて、急接近。

 急激に足を止め、アイネの拳を躱し、本気の一撃を叩き込んだ。アイネはその勢いに乗って後ろに跳んだ。

 腹には鱗がないのに、感触が硬い。腹筋硬すぎだろ。


 圧倒的な力不足。攻撃したはずなのに、ビキッと手首に亀裂が走り抜けた。瞳をあらん限りに見開く僕は、アイネの攻撃に備えて腹に力を込める。


「ほらよ」


 轟音を立てて、爆砕。僕の内臓が破裂した。口から血が零れ落ちる。それでも僕は立ち続けた。


 アイネは笑みを浮かべる

 僕は倒れるようにして前傾となり、疾走した。


 アイネは猛々しい笑みを浮かべ、両腕を広げる。

 これまでに負った傷によって、僕の体は重く遅い。大粒の汗を飛ばしながら走る僕の姿を見て、アイネは長脚を放った。

 長大な上段蹴りが僕の側頭部に叩き込まれる



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 駄目だ!! ここで終わったら、僕は何も成長できない。

 僕の前進は止まらない。

 アイネの笑みは張り付いたまま。


 僕は剣を振るう。アイネの腹筋に当たった剣は、限界を迎え、折れた。それでも止まらない。止まっちゃ駄目だ!

 僕は剣の柄を投げ捨て、拳を握り締めた。アイネの腹部を殴る。


 やはり固い。僕の拳の方が壊れた。アイネは口角を上げたまま耐えきった。


「仲間で来たぜ、その拳!」

「がぁぁっ!?」


 僕の腹部に拳が叩き込まれる。さらにそこから接射砲撃。腹部で爆砕した火炎に、再び地面から足が剥がれる。

 アイネの右手首が煙を上げている。自分の腹部を焼かれた僕は、瞳を見開く。

 やがて宙を舞っていた僕の体は背中から落ちた。


「お?」


 アイネの動きが止まる。


 僕は生まれたての小鹿のように立ち上がろうとする。既に骨が何本か逝ってしまっているし、内臓が破裂してしまっている。

 エルの時はこれほどまでに怪我しなかった。アリスの時もミデリーの時もそうだ。


 エルと戦っていた時には、ミデリーの優しさとエルの容赦のなさに目が行った。でも、今回はそれを更新してきた。

 エルの戦いには優しさがあった。途中で気絶させてきたから。でもアイネには容赦がない。骨も内臓も滅茶苦茶だ。


「ヒュ~、カッケェ。立ってんじゃん」


 プルプルと立つ僕に対して、アイネは口笛を吹いた。


 エルは力と技術を持ち合わせ、その上で両方を使いこなしていた。

 アイネも力と技術を持ち合わせておきながら、技術を使わずに力で圧倒してきている。


 僕は疾走し、アイネの腹を狙う。顔面は遠くて狙いづらい。


 アイネはそんな遅々とした攻撃など、軽々と躱し、足を引っかける。僕はゴロゴロと転がり、謎のモニュメントにぶつかって止まった。


 すぐに影が差す。僕の上にアイネがいる。防御? 回避? もう無理だ。攻撃しかない!

 アイネの右拳に向かって拳を繰り出そうとする。しかし、駄目! 体が動かない!


 バチンッ!


 僕の目の前に現れたそれがアイネの攻撃を止めた。


「あん?」

「え……」


 それは人の手の形を持っていた。

 それは深い青髪を持っていた。

 それは赤い呼気を吐いていた。

 それは、そいつの名は。


「エル!?」

「怒んなよ、アイネ。飯の時間だ」


 両者が睨み合う。

 アイネはそのまま力を抜き、拳を開放した。


「分かった分かった。体動かして腹が減ったし、エルに止められたし、ここで終わりだ」


 エルが僕の手を取り、立たせてきた。足がプルプルで力が入らない。


 膝がガクリと折れた。


「お?」


 僕は顔をエルの胸に突っ込ませた。


「ぼろっぼろじゃねぇか」


 エルは僕の頭を胸に抱えたまま、後頭部を撫でてきた。だんだん力が戻ってくる。


「……これ、何かしてる?」

「魔法で回復しているぞ。済まんな。私は回復得意じゃねぇんだ」

「いや、有難う」


 そして、若干の回復をした僕は、自分の脚で家まで歩いた。

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