7.アイネと話すユーヤ
「よぉ~~、邪魔するぜ」
「邪魔するんだったら帰ってくれ」
「済まん済まん。定型文だよ、定型文」
とても身長のある女性だ。エルも背が高く、190㎝あるのだが、それよりも高い。2m以上はあるのではなかろうか。
顔の頬や腕などに紫の鱗が張り付いている。
「鱗?」
「うん? 何だ、珍しいか?」
「まぁ、初めましてだな」
「じゃあ、よく見ておくといい。私は見られても恥ずかしくないからな」
女性は自分の紫の鱗をコンコンと叩いて、ニカッと笑った。
「ところで、家主は中かい?」
「……僕が家主だけど」
「何だと? まだガキじゃないか」
「あ?」
ガキで何が悪い? 思いっきり睨んでやる。
「悪い悪い。もしかしてあれかい? ガキみたいな見た目をしておいて、実は齢三桁超えみたいなやつかい?」
「……正真正銘のガキだけど?」
「じゃあ、あれか。ガキって言うな的なやつか」
「えぇ、そうですね」
「そりゃ済まないことをしたな」
女性は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ところで、ミデリーはいるかい? 家に行ったらサァ、執事に追い返されちまったんだよ。ここに行け、みたいな感じでさ。それで、知らねぇ?」
「ミデリーは知らないな~」
「私も知らねぇ」
この中の誰も知らないのか。そういえば、最近ミデリーを見ていないな。どこに行っているんだ?
「アイツとの戦いはいつもヒリヒリしていて楽しいからな。体がアレを求めちまっているのさ」
誰が見ても分かる。こいつは戦闘狂だ。
「つーわけで、エル!」
「や~だ~、申し訳ね~。私は夕飯を作らないといけないから、今回はパスで」
「は?」
は? 僕も声が出そうになってしまった。え、エルのやつ、夕飯を作る気でいたのか。それなのに、あんながっつりと寝ていたのかよ。
「あ、アリスのやつも夕飯を作っているから、暇なのはこいつだけだぜ」
エルは僕のことを指差しながら、家の中へ入っていった。
「……お前、戦えんのか?」
「僕はアリスより強くて、エルより弱いよ」
「気に入った」
女性は二の腕を地面と水平に上げ、爪を強調するように開いて顔の両側に持っていった。
「アタシはアイネ。ミデリーとエルの戦友、アイネだ」
「僕はユーヤ。何も特に言うことはないけど、最強を目指しているユーヤだ」
「最強? そりゃあいい。目指すといい。私でも諦めかけている夢を、果たしてみな」
そこで、アイネが何かに気付いたように目を丸くした。
「そういえば、今って飯作ってんだよな」
「そうだね」
「あんま近くでドンパチやってっと、迷惑になんじゃねぇか?」
もしかして常識人か? 戦闘狂の振りをした常識人か? いや、普段は常識人だが、戦闘になった途端豹変するタイプの戦闘狂かもしれない。
「じゃあ、どこで戦うかな?」
「いや、森の中はモンスターがいるから止めておいた方がいい」
「あん? アリスより強いくせに魔物が怖いのか?」
「いや、純粋な力比べに邪魔がいたら楽しめないだろう?」
アイネが両手で口元を覆った。
「何だよ、お前。そこまで考えてんのかよ。こんなん、惚れてまうやろー」
「何言ってんだ?」
「定型文だよ、定型文」
「何のだよ」
分からなさ過ぎて呆れさえ出てくる。分からないものは分からない。
「じゃあ、あっちにある広いところでやるか」
アイネに言われるままに僕も広場へと向かった。




