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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
3.アイネ
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6.普通に過ごすユーヤ

 チュンチュンと雀が鳴いている。最近体が痛い。床で眠っているからだ。

 なぜか今でもアリスはいるし、その専属メイドのメリッサもいる。クライネもエルもいる。ここは僕の家なのに皆が我が物顔だ。


 今はクライネとメリッサとアリスが夕飯の準備をしている。クライネはどうやら家事初心者らしく、アリスとメリッサから教えてもらっている。掃除の仕方や洗濯の注意点など吸収している。今も調味料の作り方からやっている。というか、アリスって貴族のお嬢様じゃなかったのか? 何で家事ができるんだ?


 料理を作るのに時間がかかるだろう。あれこれ指示を出したり質問したりしている。何というか居づらい。僕が何かしなくちゃいけないことがない。居づらい。

 何でだろう。何もしない奴と思われたくない。これはあれか? 僕も何か手伝うことはないか聞いた方がいいのだろうか。


「な、なぁ」

「何?」


 声を掛けたところ、答えてくれたのはアリスだ。アリスは心底なぜ話しかけられた分からないという顔をしている。


「僕にできること、ある?」

「え、いや、無いけど?」


 結局アリスの顔は変わっていない。疑問は解消しなかったようだ。


 じゃあ、僕は何をしようか。料理において出来ることはなさそうだ。勝手に行動して怒られるくらいなら、一旦ここから離れるか。


 ンゴー、ンゴーといびきをかいて眠っているエルが信じられない。もう昼だというのに爆睡中だ。実はこいつ、朝飯前に寝始めているんだよな。

 エルのことを少し知っているアリスが話していたことなのだが、どうやら彼女は夜行性らしい。別に昼間を起きていることも可能らしいのだが、疲れるから嫌なのだそうだ。

 完全に晒している腹をボリボリと掻いている。寝返りを打ち、エルが壁の方を向いた。ズレているズボンの隙間からパンツが見えている。本当に我が物顔だな。


 僕はベッドから腰を上げると、刃を潰した剣を手に取り、中庭に出た。僕は中庭にある畑を見渡す。クライネのおかげで青々としている。

 僕は刃の一枚に手で触れた。いいなぁ、これ、美味しそうだ。いつも素振りをしている場所はここから右なのだが、何となく、本当に何となく左を向いた。


 何かある。木造の住宅。え、木造の住宅がある。え? なんで? いつの間に?

 一度、刃を潰した剣を見る。もう一度住宅を見る。もう一回剣を見て、家を見る。やっぱりある。


 いつ作られたんだ? 自分の顎に触れる。


 そういえば、ここ最近クライネとエルとアリスが、家事以外の時にも一緒にいたな。あれか? あの時に造っていたのか?

 う~ん、どうしよう。正直、興味がないと言えば嘘になる。ただ問題なのは、勝手に行っていいのかどうか、だ。あそこは僕の土地の範囲じゃない。どうする?


 そこでふと気付いた。あれ、僕、いつの間にか住宅に体が動いてしまったのか。

 一歩分。たかが一歩分だが、近づいた。成る程。僕の心は行きたがっているということか。

 ならば行こう。これはもう行くしかない。


「何をされているのですか? 変な踊りを踊られて」

「うおっ!?」


 まさか声を掛けられるとは思わなかった。おかげで変な声が出てしまった。


「いや、何、あの建物がきになってしまってな……変な踊り?」

「こんな感じの不思議ステップだったよ」


 そう言うと、アリスは驚くほどキレッキレのステップを踏んだ。本当にそのダンスを僕がしたのだろうか。


「あれは私の家ですね。簡易的ではありますが、建てさせていただきました」

「成る程ね」

「ほら、流石に5人で寝るのは厳しかったじゃない? だから私、ちょ~~~~っと本気出しちゃった」


 無駄に可愛さアピールをしているアリスは置いておこう。こういうのは触れたら戻ってこれなくなる。


「後で案内しましょう」

「ありがとう」

「私達はこの野菜を摘み、ご飯をお作りします。まだ時間がかかりますことはご了承を」

「いいよ。僕は素振りしているから」


 クライネが恭しく礼をして家の中に入っていくと、入れ替わるようにエルが出てきた。完璧な寝起き顔だ。

 寝ぼけ眼をショボショボとさせ、髪を整えていないボサボサ、服の中に手を突っ込んでボリボリ掻いている。


「ユーヤ」

「どうした?」

「もしさ。これもしもの話なんだけどさ。これ以上女性が増えるってなったらどう?」

「それは強者が挑んでくるってこと?」

「いや、この家に泊まりに来るってこと」


 この家に人がさらに増える? 普通に迷惑だ。この家にはそんなに人が入らないぞ」

 エルは僕の前を横切って、井戸の縁に座った。


「そりゃ困るよ」

「やっぱ?」

「ただでさえ狭いっていうのに」

「この家の周りに、クライネみたいに建てるのをありにしたら? 別宅みたいに」

「……それなら別にいいかな」


 何で聞いてくるのだろうか。これから増やす予定があるのだろうか。


「安心しろ。増えても後二人くらいだよ」

「二人?」

「おう。一人目は私の超親友。たぶんそろそろこっちに来ると思う。人の心を自在に読める魔眼族だ」

「魔眼族。噂でしか聞いたことないなぁ」

「もう一人はあれ」

「あれ?」


 エルが指を向けるその先には、圧倒的な威圧感を放つ女性がいた。

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