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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
3.アイネ
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5.ミデリーに逢いに行くアイネ

いやぁ~~、ケイに会えてよかった。アイツは世界中のどこかに探し物があったとしても見つけ出してくれるだろう。

 しかも今回はエルが関わっている。あいつが動かない筈がない。アイツはエルのことが大好きだからな。


 実にラッキーだった。


 まぁ、欲を言うのであれば、あのまま二人と戦いたかった。兵の格好をした奴は弱いだろう。アタシの腕振り一発で撃沈するのは確定か。

 本人の言葉を信じるなら、ケイも腕振り一発で終わるだろう。いや、息一つで沈むと怒られたことがあったか。それでもアイツは粘る。回避能力が抜群なのだ。一回は試してみたい。


 ケイは明らかに強い。アタシはそう思っている。魔眼族らしく、身体的な能力は弱すぎると言っていい。しかし、それがなければ最強に近いスペックを持っているのが魔眼族だ。相性差をひっくり返す程の力がないことが残念だ。


 夜空を飛ぶ。さっきと比べてあたりが暗い。星やら月やらに照らされて気持ちいい。一人だけステージに乗っているような気分だ。


「~~♪」


 鼻歌を歌いながら、アタシは仰向けになる。腹を月に晒す。もちろん服を着ているから腹筋を見せているわけではない。何だったら服を巻くって晒してもいい。アタシは体を晒したい派だからな。


「んあ?」


 進行方向にモンスターが現れた。サメみたいな姿をしている。何だ、ファングパンスールか。烈火炎鳥に比べたらかなりの雑魚だ。ま、ちょうどお腹空いていたし、狩るか。

 ファングパンスールの群れに突っ込もうと考えた時、敏感にそれを察したようで逃げ始めてしまった。

 このまま逃げられるのはダルい。アタシはただ腹を満たしたいだけだ。あの群れ全部が欲しいわけではない。一、二匹欲しいだけだ。

 アタシは一瞬だけ力を解放して、音よりも速く群れに追いつく。


「ホッ」


 アタシは両手でそれぞれサメの首を掴んだ。他のサメ達は逃げていった。

 アタシは口から火を吐いて、サメを焼く。

 空中でサメを食らいながらレイベルス国を目指す。今、アタシが一番会いたいミデリーがいるランレイグ家の領地は国の南側。レイベルス国に辿り着いた時にはおそらくランレイグ領地だ。


 アタシは何度か領内で目撃されたことがある。こんな真っ暗な時間だが、問題ないだろう。


 火が見えてきた。どうやらレイベルスに着いたようだ。このまま一気にランレイグ家まで行ってしまおう。

 空中で翼を閉じると、そのまま滑空する。腹に力を込めて背を丸めると、体を回転させる。

 そして、足から墜落した。


「おや、アイネ様ですか。ランレイグ家はあちらですよ」

「おう、ズレたか」


 住民は一瞬驚いたような顔をしたが、冷静だ。これはこれで慣れすぎじゃないか?


 ミデリーの邸宅の庭に無断で侵入する。塀越え着地の際に少し穴を作ってしまった。ま、どうせアタシが直さねぇし、どうでもいいや。

 ところで、あそこの叢に下着モロ見えで突き刺さっているメイドどうしよう。上半身が見えないから誰か分からない。枝に引っかかっているせいで戻らないスカートくらいなら戻してやるか。いつまでも水色を眺めているわけにもいかないよな。


「ま、しゃーねー」


 アタシは脚を掴んでメイドを引っ張り出した。下着と同じ水色の髪をしているメイドだ。目をくるくる回して気を失っている。名前は確かマンダレイとかだっけ。


「お~い、起きろ~」


 声をかけつつ、宙づり状態で頬を叩こうとする。ちょっと待てよ。過去にケイにも言われたが、アタシは馬鹿力だ。ここで叩いてこの子に傷を創らないか? それどころか頭吹き飛ばすか。


「穴! 穴? 穴っ!?」


 薄緑色の髪のメイドが叫んでいる。隣のおじちゃんは声を失っている。クリモニアとハヴォーグだったっけ。


 アタシが何かしたか? いや、メッチャしているな。庭にデカい穴を作るとか、今も宙づりで持っている水色メイドどか、少なくとも二つはやらかしている。

 穴は私じゃどうにもできないが、メイドは静かに寝かしてあげた方がいいな。とりあえず首裏に腕を入れ添え、静かに背腰から下ろしてやる。

 そして、両手を上げる。敵意なんてないよ~~。本当だよ~~。


「あ、あ、あ、あの」


 薄緑メイドがおずおずと聞いてきた。どうやらこれでも怖いらしい。


「アイネ様!」


 邸宅から出てきた声がメイドの声を遮る。こいつは執事長のメッシャーだな。


「どなたかドワーフ族にお知り合いが?」

「スッゲーネチネチした言い方だな」

「では、これを誰が直すのです?」

「一つ断っておくが、アタシは無理だぞ。それと加えると、直せる知り合いはエンゼンくらいしか知らない」

「龍族……」


 アタシは唯一まだ勝てていない龍族の名前を出す。流石にそれを持ってこられるとは思っていなかったのか、メッシャーでさえ引いた。

 ちなみにアタシは破壊専門だから、直すなどという器用なことはできない。


「無理なことくらい分かっております。そのため、一刻も早くこれ以上の破壊が行われる前に去っていただきたい」

「言うなぁ」

「ここから北西の位置に、私は詳しい場所を知りませんが、アリス様とエル様がいらっしゃいます」

「お、じゃあ、アタシはそっちに行きゃいいんだな」

「えぇ、お願いいたしますよ」


 厄介払いされたが、アタシはこれからの戦闘が楽しみで、全く気にしなかった。

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