4.愚痴るケイ
「アタシはエルに逢いに来た!」
僕を見ながら、後ろの夜回り兵に向かって宣言した。兵は剣を収めなかった。
「あれ? 収めねぇぞ?」
ぞわっと背筋が震える。この龍人、ゴリゴリに殺気が漏れていやがる。僕はこいつの殺気遊びに慣れっこだから、ぞわっと背筋を凍らせる程度で済んでいるけど、後ろの兵は泡を吹いて倒れ気絶寸前だ。まだ意識を保てているだけマシだ。優秀、優秀。
「止めてくれよ、アイネ」
「あん? 何が?」
「僕の部下をいじめないでおくれ。トラウマになってしまって使い物にならなくなっちゃうよ」
「この程度で、か? そんな軟弱で大丈夫か?」
「この程度って言ったって、君、神話級の強さだからね?」
「おっと、そうだった」
本気で忘れていたのか、茶目っ気たっぷりにテヘペロをしている。君がそんなことをやったところで、恐怖しか湧かないぞ。後ろの兵士ちゃんなんて、神話級って譫言しながら放心状態だよ。
ん? お前が連れてきたんだろって? あーあー、聞こえない―い。
「さて、いつまでもイジメるのは止めよう、アイネ」
「いや、イジメてんのお前だかんな」
「エルだったね」
「あ、こいつ。まぁそうだな。幼馴染だし、全部知ってんだろ?」
「幼馴染とか関係なくね? あと幼馴染じゃないし。まぁ、盗み見るよ」
犯罪者とかいうな。お前等だって位置情報を共有したり観察したりしてんだろ、読者。
僕の右眼が黄色に光る。
「いつ見てもキモイな、目ん玉光るって」
「おいおいおい、目の前に本人がいる時の言い方じゃないないだろ。泣くぞ。みっともなく泣くぞ。ちなみに光ってんのは、今使ってますよアピだから、光らせないこともできるぞ」
「マジかよ」
おい、自然界じゃ生き残れないから死んだなとか言うなよ。僕の逃げ足舐めんなよ。無茶苦茶速ェし、反射神経とか動体視力もバチボコいいから即行逃げれるし、避けれるからな!
「エルエルエル~」
右目をギョロギョロさせながら、エルを探す。
エルがいない。あれ? 国内のどこにもいない。あんまり考えづらいけどガンドスかな?
……いない。
僕は魔眼だけには絶対の自信を持っている。いるのに見つけられない。
一旦、自分を疑ってみて、国内をもう一周。いない。まさかエルのやつ国外にいんの? 許可取れたのか。というか、だとして、どうして僕の元までその話が来ていないんだよ。
許可取りはっと、うわっしてある。こっちは即見つけられたわ。サインは、えぇ~~~~国王じゃん。しかも、休暇一年、国外へ行く許可じゃん。
どうやって取ったんだ? やっぱ脅し? 国王を脅すとか、どんなネタ持っているんだ? ヒェ~~。
で、その本人は?
いた。マジで国外だ。ここはレイベルス国か。ミデリーがいる国だな。納得、納得。
「お前、その反応は見つけたってことだな~。どこにいんだよ」
「ここはレイベルス国だね」
「よっしゃ、ミデリーのとこだな」
「あ、いや」
言うと、アイネは飛び去った。多分ここはミデリーのところじゃない。言う前に行ってしまった。まぁ、いいか。
「エルもアイネも自由な奴だな。何だって強い奴はこうも人のことを考えずに自由に振る舞うんだ。まったく」
何か後ろから、貴女も大概ですよ、とか聞こえてきたが、無視しておこう。
「あーあ。僕も海外行きたいなぁ」




