3.マレットス国に来たアイネ
エルに逢いに行く!
そう宣言したアタシはまずお爺達のところに向かった。
さて、お爺達は何というだろうか。
「なぁ~~にを言っているんだ?」
同意を得られなかった。
えぇ~、マジかよ。
お爺達は基本的にこの島、というか郷を大事にしている。かなり閉鎖的だと言っていい。島の特性とでも言えるだろう。
基本政治とうちでは呼んでいるが、普段は五人のお爺の話し合いによって政を行っている。だから外島へ行くことを否定されたアタシは、実際に行ってはいけない。
しかし、私は外に行きたい。強い奴に逢いに行きたい。具体的にはミデリーやエルに逢いに行きたい!
お爺達に否定された。でも行きたい。じゃあどうする?
暴力、暴力♪
まず一番近くにいるお爺を殴る。一秒後にはそのお爺は建物の壁に激突し、外へ垂れ下がった。
次は一番近かったお爺の向かいに座っていたお爺。感情任せに襲い掛かってきたため、とても隙だらけ。一番目を殴った右手をそのまま顎下に入れてやる。鱗をいくつか飛ばしながら天井に突き刺さった。
三、四番目の竜人はブレスを放とうとしていた。素早く二人の後頭部を掴み、両者の顔面を互いにぶつける。額が割れて、血を噴出した。そのまま気絶。
最後のお爺はこの中でも一番強い。ランクで言えば伝説級上位のはずだ。既にブレスの準備が整っている。後は放つだけ。というか龍人一人に対して過剰戦力だろ。一番のお爺程度なら、体が消し飛ぶぞ。
しかし、郷長といえど、ブレスには時間がかかる。アタシがまず殴ってからすでに三秒弱。あと一秒かからずに発射されるだろう。
ガバリと口を開けようとした瞬間に蹴り上げる。下顎を砕かぬように手加減している。ブレスの直撃は避けたいからだ。
ブレスが暴発した。
お爺達の溜まり場、評議会とか言ってたっけ? が倒壊する。
「じゃあ、アタシはマレットスに行くぜ。反対は?」
一番目は両腕両脚を広げて地面に倒れている。
二番目は地面をキスしている。
三番目は分かりやすく瓦礫に埋まっている。
四番目は叢で隠れている。
五番目はアタシの手の中で虫の息だ。
誰も私の問いに返答しない。反対意見は出てこない。
アタシは満面の笑みを浮かべる。
「誰も反対してこないってことは肯定ってことだよな? じゃあアタシは島の外へ行くぜ」
アタシは五人目を投げ捨てて飛び去った。
空を飛ぶのは気持ちがいい。
こういった時、凡百の奴等は風を切る感覚を例示するだろう。
しかし、アタシは違う。いや、それもあるのだが、一番は肩甲骨周りの筋肉を動かすことだ。これが一番気持ちいい。こう、血行が良くなるような感じ? 肩コリが解消される感覚といえば伝わるのだろうか。これが本当に気持ちいいのだ。
「あん?」
悦楽状態に浸っていると、目の前から鳥人がやってきた。いや、人の腕を持っているから有翼人族か。
「お、おい! アンタが何者か知らないが、逃げろ!」
「どったの?」
「スクセニート・アグバードだ!」
「アンタも逃げた方がいい!」
「烈火炎鳥~~?」
アタシは呆れながら、そのまま進む。有翼人族は弱い。烈火炎鳥くらいならぶっちゃけ楽勝だ。
ただ嬉しいのは強敵にも立ち向かうという点。野性がなかなか立ち向かってくれないアタシにとっては、挑まれるだけで新鮮な気持ちをなってしまう。
ただ残念なのは弱いという点だ。今の私にとって、本当の雑魚だ。
目の前で翼をはためかせて体勢を変えると、蹴りの形となる。
そんな鈍い蹴りに当たるわけがない。くるりと回りながら腕を振り上げる。
強者の笑みを浮かべながら、振り下ろす。触れる前から鳥の腹が撓み、皮が破けだした。実際に触れる頃には爆散している。
ほら、つまらない。
落ちていくスクセニート・アグバードに向かって有翼人族が飛んで行くのを見て、アタシは飛び去った。
マレットス国に着く頃にはもう真っ暗となっていた。
「何だ? エルの気配がないぞ?」
ガンドス国とマレットス国の国境付近、ピレッツァ山の周囲を飛んでみるが、エルが見つからない。
「何をしに来た、小娘」
「小娘言うなや、サワタマルク」
千歳程度年上のくせにアタシよりも弱い龍が何か言っている。ぶん殴ってやりたい。
「エルのやつ、知らないか?」
「あの強き吸血鬼か。知らんぞ。最近は戦争を行っていない故な」
「しゃーねーなー。じゃあケイに聞きに行くか」
翼をはためかせて王都へ向かった。
一時間もすれば王都に着く。
どうせケイのことだからもうバルコニーに出てきてくれるだろう。
ほら出てきてくれた。
「よぉ~~ケイ、久し振りだなぁ」




