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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
1.ミデリー・ランレイグ
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3.姉の奇行を心配するアーノルド

「落ち着いた?」

「あ、あぁ、アーノルド。私は大丈夫だ。済まないね、心配をかけたよ」


 目の前で姉さんは胡坐をかいた状態のまま、ぶつけた頭の箇所の周りをボリボリと書いている。下着が見えそうになっているが、姉さんは私の事を男として見ていない。見られても困るけど。

 姉さんが急に頭を掻き始めたことで、氷嚢を押さえていたミィがビクッと肩を震わせた。


「姉さんは昔からそうだよね。無茶する時と夢中になる時は視野が狭窄する。後は、いい”素材”と”素体”を見つけた時。私は姉さんが悪い人に騙されないか心配だよ」

「面目ねぇ!」

「ま、そこが姉さんのいい所でもあるから、無理に治せとは言わないよ」

「ア、アーノルド……」


 姉さんが大層感動している。姉さんが嬉しそうにしていると、私まで嬉しくなってくる。ミィが姉さんの手を握りながら、氷嚢を押さえている。尊い。


 おっと、私が感動していては、話が進行しない。このポカポカほわほわの甘々空間をもっと味わっていたいが、仕方ない。ここは私が心をモンスターにしよう。メイド長のミケも戸惑っているしな。


「それで、姉さん」

「んあ?」

「何を見ていたの? あんな奇声を上げてさ。姉さんが急に大きな声を出すもんだから、ミィもミケも驚いてしまっていたよ。ほら、書類を落としたり、コーヒー零したり」

「うごごごご、ごめんなさい」

「あ、あ、あ、あの、私は別に怒っていないから」

「わ、私もでございます」

「え、本当!?」


 姉さんの顔が、パァアアアという効果音が付きそうなほど明るくなった。尊い。やはり恋愛は女の子同士でするべきだな。


「怒っている怒っていないの話ではないんだよ。事実として被害が出たんだ。それぐらい衝撃的だったってこと。で? 何を見たの、結局」


 その質問を聞いて、姉さんはニヤリと口角を上げた。うちの姉さんはとても顔がいいから、どんな表情をしても似合うな。静謐な青い髪も相まって、目を奪われてしまう。


「モンスター討伐さ」

「……それくらいなら普通じゃない? どこに興奮したの?」

「いや、普通じゃない。こいつはロザリオのおっちゃんのところに、クンちゃんが討伐要請を出していたくらいなんだ」

「マジか、そんなことがって驚きたいんだけどさ。何で姉さんがそんな超重要そうな機密事項を知っているんだ?」

「……ピューピュピューピュピュー」

「…………口笛姿が可愛いから見逃してやろう」

「よっしゃ」

「え!?」


 姉に半眼を向けながら許すと、ミィが声を出して驚いた。ミケも目を見開いている。二人は知っているだろう? 私は姉に弱いのだ。


「話を戻すよ。それで? 何と戦っていたの? その人達は」

「何と戦っていたのかの前に、一つ訂正させてもらうよ。人達ではなく、人、さ」

「……一人、だと?」

「うん。敵の名前はヴォジュア・オールドウッド。伝説級中位のモンスターさ」


 私は息を呑んだ。私だけでなく、ミィも呑んだようだ。ミケはモンスターに詳しくないため、私達の反応が理解できず、困惑している。


「そんなの、ランレイグ家とか、異種族での最強格くらいしかできない芸当だろう?」

「今のミデリーちゃんの娘、アリスちゃんはまだ倒せないかな」

「そんな芸当ができるなんて、どんな達人なんだ」

「もしこれが白髪の、皺だらけのじっちゃまだったら、私は興味を持っていなかっただろうね。達人っぽいし」


 電流が走った。身体に仕込んでいるもののせいで、本当に電流が流れてしまい、私は思わず立ち上がった。


「電式筋肉動力装置?」

「あぁ、まぁ、そう」

「大変だね、こういう時」

「あぁ、まぁねっていうか、さっきの発言。姉さんが見たその討伐者って」


 私の唇が震える。それを見た姉さんは口角を悪戯っ子のように曲げた。


「え、幼い男の子(ショタ)?」

「フッフフ、正解!」

「……マジか」


 私は驚愕した。

 これは忙しくなるぞ。


 私は自身の唇を舐めた。

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