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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
3.アイネ
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1.溜息を吐くアイネ

 レイベルス国を含むミードレット島の南、マレットス国を含むアンテンマリク島の北。そこに広がるのはコロビキア大洋。大洋にはいくつもの島が浮かんでおり、アタシが住んでいるグリエラはそんなところにある。

 ミードレット島とアンテンマリク島、どちらの島へ行くにも船で一日以上かかる。


 そんな立地にあるからこそ、この島に来る者はまずいない。この島のどこを歩いても住民にしか出会わない。


「つっまんね」


 アタシは自分の頬の鱗をコンコン叩きながら、欠伸をした。アタシはもう一度欠伸をしながら、腰をボリボリと掻く。


 つまらない。それはアタシの素直の感想だ。

 ここは人が全くと言っていいほど来ない。アタシの願いはただ一つ。


 強い奴と戦いたい。


 強い奴が来てくれない。私は強い奴と戦いたいというのに。


「はぁ」


 溜息を吐く。


「アイネ!」


 叫んできたのは巨大な龍。星見に優れた存在である。


「何だ、五月蠅い」

「お前は竜人だ。私は龍だ!」

「まだそんなこと言ってんのか」


 ウズマクレの言ってきたことにうんざりする。


 龍と竜人には確執がある。

 龍から竜人に対しては、竜の字を使うな。もしくは竜を名乗るな。そんな感じのやつだ。序列を完璧に付けたがる。

 竜人から龍に対しては、プライドの塊め。威張り散らしやがって。こっちはこっちでこんな感じ。


 だからこそに種族は仲が悪い。今みたいに喧嘩を売られることが多い。龍種族は世界でも五体しかいないのだから、もっとどっしりと構えていればいいのに。

 ちなみにアタシは竜人ではなく、龍人である。ただ祖先に龍がいるだけの竜人ではなく、龍の先祖返りを起こしている龍人なのだ。音じゃ分かりづらいけどな。


 二十メートルを超える体長を持っており、空を飛んでいるため、眺めているだけで首が痛い。


「竜人であるくせに龍よりも上位に居やがって」


 年老いた龍特有の皺枯れた声でこちらを詰めてくる。

 つーか、どうでもよくない? 強い奴には、凄い強い尊敬(スゲーツエーソンケー)。弱い奴には、まだまだこれからだから諦めんな、一緒に原因探そうぜ。これでいいじゃん。何でいがみ合ってんの?


 アタシは自分の頬の鱗をコンコンと叩きながら、溜息を我慢する。


「貴様! 今、溜息か欠伸か我慢したか!?」


 ヤベッ、バレた。


「んなことぁねぇよ」


 アタシは岩から腰を上げ、お尻に着いた砂を払う。


「んで? 何がしたいんだよ」


 何となくわかる。また優劣を付けに来たのだ。私に自分の力を見せる、直接、私に向けて。どうせウズマクレのことだからまずはその巨体で圧し潰すように下りてくるところからだろう。


「喰らえ!!」


 そんなことを考えていると、ウズマクレが突進してきた。やっぱりか。


 アタシは思い切り飛び上がり、龍の頭上に来る。あまりの速さに、ウズマクレは目だけしか追えていない。

 アタシはその頭に踵落としを降らせる。ウズマクレは砂浜に沈む。砂が大きく舞い上がったせいで、周りに被害が。


 ヤッベ。島も揺れた。お爺たちが怒るな、これ。


 砂を巻き込みながら頭が上がってくる。動きが速いが、その分的はデカい。当たるなら問題ない。

 アタシは細腕だが、魔力を使えば龍の力を再現できる。その拳を龍の目と鼻の間に叩き込む。島が揺れるだろうけど、ごめん、お爺許して。


 案の定、島が揺れた。木々から鳥たちが飛び立ってしまう。砂も舞い上がっていく。砂の高さが八メートルを超えた。

 龍の鱗が割れる。所詮鱗だ。どうせ一月もあれば復活するだろう。柔らかいだろうが。どうせウズマクレは水と風しか操れない。

 もう一発、鱗に拳を叩き込む。再び割るが、そこで止まってやらない。

 ここからは連打、と行きたいが、アタシは弱い者虐めをしたくない。この辺で許してやろう。


「あーあ、つっまんね」

「くそ!」

「また遊んでほしけりゃ、もっと力を付けな」


 アタシはウズマクレから下り、少し歩いて岩に座った。

 ウズマクレが飛び立つ。


 つまんねェ。ここで気骨を見せて襲い掛かってくりゃあ、ちょっとは面白いっていうのに。


「つっまんね」


 不満を口にする。溜息と欠伸も一緒に出た。


「よし」


 アタシはパシンと膝を手で打ち、立ち上がって拳を作る。


「エルに逢いに行くか!」

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