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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
2.エル
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11.怒られるユーヤ

 僕は体を動かす時に生を実感する。強くなりたいと願う僕は、強くなる時に必ず体を動かしている。

 僕は、生きるとは目標に向かって突き進んでいる、その瞬間のことだと考えている。僕にとって目標とは強くなることだ。


 だから僕は体を動かすこと、体が動くことに生を感じるのだ。


 ここまで言って、結局何が言いたいのか言うと、今の僕は生きていないということだ。


 僕はベッドの上で溜息を吐く。

 僕は今の状況を全く理解できていない。なぜ僕はベッドの上にいるのか。なぜこんなにも全身が痛いのか。なぜクライネが口を利いてくれないのか。そして―――


「ん、ふぅ」


―――なぜアリスが一緒のベッドにいるのか。


 アリスは僕の腕に自身の腕をがっちりと絡ませている。血液の循環といえばいいのか、心臓の脈動といえばいいのか、そんなものまで感じてしまう。


「寝づれぇ」


 悪態を一つ。

 何も理解できていないが、とりあえず今の状況を整理しておくか。


 まず問1、なぜ僕は今ベッドの上にいるの?

 答、僕が気絶したから。安静させる簡単な方法は横にすることだ。土の上で横にするのが忍びなかったからベッドに寝かせられたのだろう。まぁいい。それは構わない。


 問2、なぜこんなにも全身が痛いの? アリスと戦っていたし、ミデリーの一撃を受けた。体が痛いのは当たり前だ。しかし、それだけでは考えられないくらい痛い。平手を受けた記憶はあるが、それ以降の部分がない。


 とりあえず平手を受けたはずの右頬に触れる。違和感がない。魔法か?

 もう怪我が残っていない。そのせいでただ痛みだけが残っている状態なのだ。

 平手の後の僕に何があったんだ? そこはもう知っている者に聞くしかない。


 問3、なぜクライネは口利かんなの?

 答えとして考えられる可能性は二つ。

 まずアリスをよく思っていない。この可能性の場合、アリスが家にいることが嫌だからこそクライネは機嫌が悪い。これであるなら、アリスがいなくなればいい。

 二つ目は僕が気絶している隙にミデリーから何か言われたのかもしれない。それで怒ったのか哀しんだのか、それで口利かんになったのだろうか。


 少し目線を動かせば、ドアを通して畑が見える。その畑ではクライネが雑草抜きをしていた。

 クライネがこちらに気付いてこちらに顔を向けてきた。いつもなら表情を変えずに腰を折って礼をする。しかし、今回は違う。とてつもない目つきを向けてきた。物を凍らせそうなほどだ。

 何も話してくれない。


 問4、なぜアリスがここにいるの?

 これに関しては何も見当がつかない。あるとするならばミデリーだ。

 ミデリーがアリスをここに置いて行った。クライネが置いて行けと言うとは思えないため、ぶっちゃけミデリーが原因だろ。


「とりあえず寝たふり止めろ」

「あれ? 気付いていたの?」

「分かりやすかったぞ」


 アリスが上半身を起こす。汗をかなり掻いたようで、髪やら服やらが肌に張り付いている。


「いやぁ、負けちゃったよ。勝てると思ったんだけどなぁ」


 アリスが壁を見ながら、唇を尖らせて反省している。


「移動の仕方が単調だった。だから僕でも対処できた」

「成る程ね。まさか十二歳に対処されちゃうなんてね。ところでこの家ってシャワーある? 汗流したいんだけど」

「何でこの状況に順応してんだよ。この状況明らかに変だろ。というか、シャワーって何だよ」


 アリスが目を丸くし、しまったという顔で口元を手で覆った。


「えっと、水浴びってできる?」

「最近庭に井戸を作ったんだ。そこでなら汗を流せるぞ」

「外での露出か。少し恥ずかしいな。まぁ、この郊外なら問題ないか。君が覗きをしなければね!」


 バチコーン☆ こちらにウインクしてきた。何? 何の合図?


「で? その井戸はどこ? 早く流した~い」


 アリスが長い髪を自分で持ち上げ、風を通して涼しげにさせている。


「長いと暑いだろ。切らないのか?」

「私この髪好きだから、あんま切りたくないんだよね」


 二人でベッドから下りながら裏口を通る。無口なクライネといつの間にか畑仕事をしている女性の後ろを通り、井戸をに向かう。

 そこに井戸がなくなっていた。何かあるとすれば、瓦礫のみ。


「あれ?」

「およ、井戸の様子が」

「ユーヤ様」


 後ろからクライネに声をかけられた。


「先程、ユーヤ様はおっしゃいましたね。なぜ私が怒っているのか、と。そうおっしゃいましたね」

「あ、あぁ」


 物凄い威圧感だ。思わず気圧されてしまった。


「これです」


 クライネは井戸を指差した。それだけで何が言いたいのか分かる。


「私、言いましたよね。二回目は駄目だって」

「うん、言ってたね。私も聞いたよ。井戸を壊すなって目が訴えてた。ハッ!? これって私も怒られるやーつ!?」

「いえ」


 驚くアリスに対して、クライネは即答した。そして、ゆるゆると首を振る。


「この時、アリス様は気絶をされており、こちらのメリッサに介抱されておりました。故に一切関与しておりません」

「僕もさっきまで気絶していたんだけど」

「いえ、ユーヤ様は原因です」


 僕は必死にない頭を働かせる。原因って何だ?


「まずユーヤ様はアリスのことを化け物、と評しましたね。アリス様のことをこれ以上ないくらいに愛していらっしゃいますミデリー様は、大層ご立腹となったようでして、八つ当たりをなさいました。こう、パッカーンと」


 クライネが平手打ちの素振りをした。

 あぁ、成る程。そりゃ僕が原因だ。


「まぁ、きっと明日にはまぁ、修復されますわ。まぁ、ミデリー様はこういう際のアフターフォローは、まぁ、欠かしませんもの。まぁ」


 メリッサと呼ばれたメイドが、手をワタワタさせながら説明する。


 しょうがない。じゃあ、汗を流すために沢まで行くかぁ。

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