表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
2.エル
23/145

9.娘と会うユーヤ

 刃を潰した剣を振り上げる。自分の成りたい自分を思い浮かべ、それに一歩でも近づくように剣を振る。

 僕の汗が玉のようになって飛んだ。五、六滴の汗がパタタと地面に落ちる。


 夏らしい澄み切った青空から日差しが降り注いでくる。既に夏真っ盛りを迎え、ギラギラと照り続ける暑い太陽に見下ろされながら、煌めく剣が風切り音を鳴らしていた。


 ここは僕の家の中庭。井戸を挟んで向かいでは、クライネが畑の植物と対話している。然魔法をかなり使える者にはできることらしい。僕には適性がないためよく分からない。


 豊かに生える芝生の上で、僕は一人、素振りをする。

 五回の素振りだけでもう汗だくだ。


 僕は汗をかなり吸い込んだシャツを雑に脱ぎ捨てる。窓に投げ入れたシャツがビチャッという音を立てた。そんなに吸っていたのか。僕は日陰となっている壁に背を寄りかからせる。先程の素振りを反省し始める。


 駄目だ。やはり僕は目標がはっきりしていない。僕はただ強くなりたいという目標しかない。何でとか、どうしてとかがはっきりしていない。具体的なものにしよう。

 ……よし、ミデリーだな。ミデリーを倒すことにしよう。


 じゃあ、今の素振りでいけるのか? 無理だな。即答できる。あれの底が見えないから。

 どうすればいい? 駄目だ。浮かばない。もう一度戦ってほしい。


「うん?」


 僕が顔を玄関の方に向ける。ミデリーが来た。

 ヤバい。僕は今汗だくだ。しかも上半身裸。これ、僕失礼に当たるんじゃないか?


 ミデリーと同様の赤髪をサラリと横に流しながら、こちらに首を傾けてきた少女。こちらを観察してきている。

 何? というか、露出、多くない? 腹も肩も外に出ているし、ズボンが短くて太腿がばっちり見えている。


「自主練中であったか」

「あぁ」

「邪魔であったなら、その自主練が終わるまで待っていようか?」

「いや、いい。自主練はいつでも中断できるようにしているから」

「よし、では紹介しよう。これが私の娘、アリスだ」

「どうも初めましてアリスです。よろしくお願いします!」


 元気な挨拶だ。元気過ぎてこっちが気圧されてしまいそうだ。いや、気圧されたら負けだ。


「む、むむ。オーラが凄い。でもでも、私だって負けないよ!」


 何かハァアアア!! と気合を入れ始めた。え、何? 何しているの?

 ミデリーを見ると、顔がにやけていた。あ、これミデリーって親馬鹿だな。


「どうだ? 可愛いだろう?」

「え、あ、あぁ、そうだね」

「ちなみに年は十四。もうそろそろ成人させようと思っているんだ」

「僕の二つ上なのか」

「年下!?」


 年を言うと、アリスが食いついてきた。年下だと何かあるのか?


「お母さまから聞いているわ。貴方がとても強いってね」


 アリスの目がきらきらとしている。ここにミデリーの血を感じる。これは戦闘好きか?

 というか、今滅茶苦茶話を聞き流しているが、娘自慢が長い。アリスは照れて止めようとしているが、ミデリーはすべて躱し続けている。

 この自慢の仕方、何かクンを思い出してしまう。


「と、いうわけで!」


 急に声が大きくなった。僕は肩をビクリと震わせる。

 ミデリーが太陽のような笑顔を向けてきている。嫌な予感がする。というか嫌な予感しかない。どうせこの娘と戦えっていうんだろ?


「私の自慢の可愛い娘、アリスと戦ってほしい」

「何で?」


 ほらぁ。ほらぁ、やっぱりそうだ。僕の思った通りだ。やっぱり戦え、だ。


「お願いしますっ!!」


 元気いっぱいだ。アリスは凄く元気いっぱいだ。しかも顔の周りがキラキラ輝いているように見える。これは避けられない。


「……分かったよ。僕の自主練として付き合ってもらおうかな」

「全力で頑張らせていただきます!」



 やっぱり元気だ。

 ところで、何が”というわけで”だったのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ