表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
1.ミデリー・ランレイグ
13/145

11.怪物のような動きに翻弄されるユーヤ

 僕はミデリーの顔を見ながら構えた。


 ミデリーは肉食獣のような笑みをこちらに向けてきている。

 腕組みをし、堂々と立っているだけのはずなのに、隙が見えない。どうやって隙を作らせるかが重要。今、僕の手にあるのは刃の潰した剣のみだ。遠距離の手段があればいいのだが、さてどうしよう。


「フム。武器はそれだけか?」

「言うわけないだろう」

「それもそうか」

「ところでいつ始めるんだ?」

「うん? あぁ、合図を決めていなかったな。別にも―――

「フッ!!」


 話をさせている隙に攻撃をする。


「ナッ!?」

「驚きを顔に出してしまっては弱みになるぞ」


 全力で振ったはずの剣が、ミデリーの体を通り抜けた。間違いなく当たったはず。今、この距離を見ても、剣が当たっているべき距離のはずなのに。


 ミデリーは腕組みをしたまま、僕の顔面に膝を叩き込んできた。鼻が曲がった。中の骨が折れたかもしれない。中が傷ついて鼻血が垂れ流れてしまう。


 しかし、闘志は失わない。


 僕は馬鹿だ。重要な基礎知識を持ち合わせていない。それでも考える頭はある。

 考えろ。どうして当たらなかった。


「良いぞ。考えるのは素晴らしい。もっと考えろ。脳内で、何度も繰り返せ。可能性をすべて試して、一つの真実に辿り着け」


 ミデリーは僕の目では追えない速度で迫ってきた。体が自然と反応する。ミデリーの腰を折る気で刃を潰した剣を振るう。


 しかし、ミデリーの蹴りはそれよりも早かった。

 僕の胸部にミデリーの蹴りが刺さる。肋骨が折れた。口から何かが出てくるわけではない。むしろ何も入ってくれない。

 上から水が降ってくる。


 ……水?


「あぁ、済まない。壊しちまった」


 ミデリーの声が聞こえてくる。何だ? 今、何かを壊したのか? 何かクライネの声も聞こえてきた。

 あぁ、まさか、井戸が壊れたのか?


「くっそ」


 意識があったにもかかわらず、体が動かせなかった。あの時点で、もう決着は出ていたはずだ。いや、もっと前から決まっていた。剣を躱された時点で僕の負けだ。

 しかし、ミデリーは僕を負けさせなかった。僕には分かる。この時間を楽しみたいのだ。ならば、その期待に応えなければならない。


 僕が立ち上がる。井戸の制御をしようとしていた土塊が壊れ、水が溢れてしまっていた。


「それは後で何とかしよう。何なら私自身も手伝おう」

「どうでもいい。今は戦闘だ」

「あぁ、済まないね。礼を失した」


 駄目だ。隙がない。勝てる光景が浮かんでこない。

 僕が地面を爆発させるように走り出す。


 机半個分ほどの間を開けて、止まり、剣を素早く振るう。この場にいる者のどれだけがその剣速が見えているのだろうか。

 ミデリーはそんな全力の剣速を、最小限の動きだけで躱していく。肉食獣のような笑みは一切崩れていない。


 余裕。圧倒的余裕。僕はそこまで弱いのか!?


 全力で剣を振るう。ミデリーの笑みは崩れない。それどころか腕組みを解いてすらいない。


 ミデリーが僕の攻撃を避けながら、右足の靴を脱いだ。その靴が飛んでくる。


「く!?」


 その靴を避けるために首を傾ける。


「そりゃ目で追っちゃいけないよ。隙になる」

「え」


 首を戻すと、そこにはミデリーの足裏があった。ムギュリと頬が歪み、そのまま押し込まれていき、倒された。


「ほらよ」


 そして、足が離れた隙に逃れようとするが、すぐに胸を踏まれ、押さえつけられた。胸部の骨が折れ、内臓が破裂させられ、押さえつけられただけでも痛みがひどい。

 手が出なかった。指先にも、その先の爪にも引っかからなかった。全てが空振った。何もさせてもらえなかった。


 どうする? この勝負は負けだ。圧敗だ。ミデリーが強すぎる。どうすればよかったんだ?


「良い顔をするじゃないか、ユーヤ! 良いぞ、私は好きだ!」

「くっそ!」


 顔? 今、僕はどんな顔をしているんだ?


「いいぞ。強くなりない。強く在りたい。それが顔に書いてある。好きだぞ! そういう男! まぁ、一番はナルクトだけどな。ホレ」

「ぐぉ」


 ミデリーは足を離す瞬間、一度強く踏みつけてきた。

 痛みが来るかと思ったが来なかった。


「あれ?」

「理属性の魔法だよ」


 ミデリーが剣を引き抜き、腰に付ける音が聞こえてくる。僕は地面に四肢を投げ出したまま、それを捉える。

 次は絶対届いてやる。この爪の先だけでも届かせて見せる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ