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僕はただ強くなりたいだけなのに  作者: suger
1.ミデリー・ランレイグ
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10.驚愕するロザリオ

 私とミデリーが談話室を出てから三十分、私は驚愕していた。私の目の前に繰り広げられている光景を、信じられずにいた。

 そう、ミデリーはヴォジュア・オールドウッドを倒した者を発見したのだ。

 まさか、本当に見つけるに至るとは。ミデリーは自分の鼻をトントンと叩き、胸を張っている。二十歳も年下の女性に、こんなに苛立つとは思わなかった。


 まぁ、見つけてくれたのは有り難い。その点では感謝している。


 だが、初手から戦う気なのはどうなのだろうか。


 ミデリー? 何で剣を地面に突き立てて、相手を威圧してるんだい? その威圧のせいで私が前に出れないから、後ろにいるしかない。何か、私、悪の大幹部みたいになってしまっているんだが?


 帰りたい。

 もう泣きたい。トゥインシー、私帰りたい。駄目? 駄目かぁ、ま、そうだよね。


 さて、交渉人としての本願を発揮しなければならない。まずはあの警戒を解かなければなるまい。


「少年!」


 前に出ようとした瞬間、ミデリーが口を開いた。またタイミングがズラされた。もう泣いていいかい?


「うるさっ! 何、あの人」

「ユーヤ様、あの方は南方貴族ランレイグ家の現当主のミデリー様です」

「え、貴族?」

「ハッハッハッ! 私は確かに貴族だ。しかし、野蛮にかけては私は一級品だ。貴族の令嬢みたいにダンスしたり茶しばいたりなんかより、剣を振るっている方が好きなタイプだ」

「気が合いそうだな」

「だろ?」


 肉食獣のような笑みをするミデリーと、水鏡のように冷静に睨むユーヤを交互に視る。

 ヤバい。話しかけられない。


「あ、あ~~、えっとここで戦うのかい? 何かこう、場所を移動した方がいいんじゃないの?」

「フム」


 ミデリーは僕の言う事を聞き、顎に手を置いた。


「少年。君が自由に使える土地はどこまでだ? あんまり外に行き過ぎると、他者に迷惑をかけてしなうだろう?」

「……僕、嫌われ者だから、自由に使える土地なんてほとんどないぞ。おじさんが立っているところだって、僕の自由に使える場所じゃないし」

「……そうか、狭いな」


 哀しそうに言う少年に、ミデリーが思案する。


「まぁ、構わんだろ」


 ミデリーが思考を終わらせた。


「構わんって。あんまり荒らすと、僕が怒られるんだけど。の、ですが」

「今更、対貴族のような話し方をしなくていいぞ。私は所詮強いだけの雌だ。気遣う必要などない」

「いや、構わんって何でそう思うんだよ」


 すでに戦おうとしているミデリーを止め、話を終わらせまいとする。ホントに若干だが、嫌な予感がするのだ。何か放っておいちゃいけないタイプの。そこはきちんと明確にしなければならない。


「そりゃお前、ここはお前の領地だろ」

「おい、それってよ」

「お前が使うって言えば使えるだろ」

「領民からの不信感に繋がるじゃないか」

「それこそお前お得意の交渉事で何とかしろ」

「あぁ、やっぱり?」


 嫌な予感は当たった。ミデリーはやはりランレイグ家だ。自分が有利になるように他者を巻き込む。


「はぁ、分かったよ。私が何を言っても君はどうせ聞かないんだろう?」

「ハハッ! 分かっているじゃないか!」

「私は諦めるよ。ここの住民には私が話をしよう」

「よし! 話は纏まったぞ! そっちは?」

「こっちも」


 いつの間にかエルフの姫殿下がいなくなっていた。


「おや、クライネ様がいらっしゃらないな」

「井戸づくりの作業を再開しに行きました」

「ドロップ、手伝ってきてくれるか?」

「エルフと協力とはな。寒くなってくる。一瞬で終わらせてきてやる」

「ありがとう」


 ドワーフ族のドロップは早足で敷地内に入っていった。待てよ? そもそも姫殿下に井戸づくりをさせているのか? 不敬? クラリス王女様に知られたらいろいろと巡り巡って処刑されてしまうのではないだろうか。

 僕はミデリー達の方を向き直った。


「よし、憂いはなくなった。闘おうぜ、少年!」

「今更だが、名乗った方がいいのか? 僕はユーヤだ」

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