18.逆転されたヒューイエン
ケイは追い詰められたように見せかけていたのか?
とある荷物の場所に我々は誘導された。それは二股に別れた銃のような見た目をした武器。
撃ち出す瞬間、僕の髭が反応した。マズイ。動け!
その直後、音が消えた。
耳がキンキンしている。髭が細かく震えている。
少しだけ首を動かし、部下を確認する。体が半分消えていた。あの武器によって打ち抜かれたとか、消し飛ばしたとか、そういうものではない。一瞬の高温によって融けたのだ。
肉が融け焼けていく臭いがする。一度も嗅いだことのない生肉、しかも今生きている生物の臭いには吐き気がしてくる。
気持ち悪い。
しかし、ここで止まるわけにはいかない。弔いだってしてやらなくちゃいけない。
そもそも、あんな武器、理解ができない。あんなもの、マレットスにあったか? あったとしても構わない。量産できるはずがないのだ。出来るのだとしたら、ケイ以外にも持っていないとおかしい。そうではないのは、できないからだ。
それに、こんな高威力のものをポンポン連射で撃てるわけがない。出来たら、本当に意味が分からない。こんな技術力をどこにどうして隠していたというのだ。
足に力を込め、立ち上がろうとする。
ズキリと足に痛みが走った。そちらに目を向けると、僕の左足の半分が融けていた。左脚の中指から外側が踵側も含めて削り取られていた。
あまり痛みがない。普通、こんなに抉れていたら、もっと激痛となると思うのだが、その神経すら逝ったか?
少し力を込める。冷静になれば、この痛みくらい耐えられる。
ケイのことを見る。岩に頭ぶつけてぐったりしている。頭から血を流して、かなり無防備状態だ。今、襲い掛かれば殺すことができる。
毒のない、普通の長剣を持ち、何とか立ち上がる。フラフラだが歩ける。傷が痛む。それでも血が出てこない。融けて固まってしまっているのだ。血液の循環はなくなっているに等しい。後で足を切ったり繋げたりしなければ死んでしまうだろう。
今はそれよりもケイを殺す方が先だ。
ケイの目の前に立ち、長剣を振り上げる。体がボロボロすぎて振り上げるだけでも精一杯だ。このまま振り下ろせばケイを殺せる。
ケイはこちらに中指を立てた。
「ここにいるの、僕だけだと思った?」
「……何?」
「ホイ」
どこか気の抜けた声。それと同時に側頭部に衝撃。
「ぐッ!? な、何だ!?」
見ると、そこには糸目金髪の獣人族がいた。何の獣人だ? 虎? 犬? 猫? どれでもない。どれであったとしても微妙に違う。
「あんさん、周りが見えてへんなぁ」
「な、何だ、貴様!」
獣人の娘は口元を扇で隠しながら、袖の中を探る。
「これなんやけど」
獣人が一枚の布を見せる。その布には獅子の頭に山羊の角が生えた、謎の生物が縫われていた。
「それは、バフォメット教の?」
「お? あんさん、知ってはる? どこにおるのか」
この娘はバフォメット教なのか? バフォメット教といえば、殺人や強姦、誘拐など、どんな犯罪も厭わない組織集団だ。まさか、この女が?
「妾はこの人たちを探しておりんす。知ってはります?」
「僕知っているよ~~?」
間延びした声。ケイが手を挙げている。
「代わりに起こして?」
「フム。等価交換というやつでありんすね? じゃあ妾の手を掴むでありんす」
「それで等価になってんのか分かんないけど」
ケイが助けを借りて、立ち上がった。
「ホレ、これいるけ?」
獣人の娘が長剣を渡そうとしている。それで僕を殺す気か?
「お?」
ケイが目を丸くして獣人の娘を見た。
「いいの?」
「協力者はんにええ顔すんのは、妾のためになりんすからね」
「ハッハ。成る程ね」
ケイがしっかりとした足取りでこちらに近づいてくる。
さっきまでぐったりしていたのに何があった? あの獣人の娘が何をしたというのだ?
ケイが長剣を振り上げる。軌道を考えると、僕の首を切ろうとしているな?
体が動かない。血が足りないのか、何かしらの魔法の影響なのか、なぜか避けることが出来ない。
あー、くそ。唐突に出てきたあの獣人の娘は何者なんだ。
そして、ケイが長剣を振り下ろした。




