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ひりひり国とぴりぴり国

作者: 織花かおり
掲載日:2023/05/22

ひりひりとぴりぴりは、びりびりと相性が良いようで。


おや?

眠(ねむ)れないのかい?

こんなひりひりした空気の夜には、ホットミルクでもいれてあげようか?

ねこのぬいぐるみのひげを引っ張(ぱ)るのはおよし。ひげがぴりぴりしているよ。

なんだい。ねこの絵本を読んでくれって?

あいにくばあばの家には、1冊も絵本がないんだよ。

じゃぁ、お話を聞きたいって?

しかたないねぇ。とっておきの話をしてあげるよ。

でも、お話を聞いたら、すぐ寝(ね)るんだよ。


むかし、むかし、あるところに、仲の悪い国が隣(とな)り合ってありました。

北をひりひり国、南をぴりぴり国と言いました。

ある時、ひりひり国の王様は、「いつまでもお隣の国と仲が悪いのは我が国にとってよくないことだ」とぴりぴり国に「仲よくしよう」と遣(つか)いを送りました。

ぴりぴり国の王様も「たしかにそうだ、隣(となり)の国と仲良(なかよ)くなれば、たくさんよいことがある」とそれに応えました。


ひりひり国には、とても美しいお姫様がいました。雪のような白い肌(はだ)に、さらさらの銀色の髪、そして瞳(ひとみ)はひりひり国にある深い深い湖(みずうみ)を表したように青く、唇(くちびる)はそこだけ血(ち)が通っているかのように赤いのでした。


ぴりぴり国には、美丈夫(びじょうぶ)な王子様がいました。体は程(ほど)よくしまっており、浅黒い肌は男らしく、すらりと伸びた鼻や整った位置(いち)にあるきりりとした目や口は、王者の風格(ふうかく)を備(そな)えていました。


王様たちは、仲良くする証(あかし)として、自分のところのお姫様と王子様を結婚させようと約束しました。


約束通り、それからしばらくたって、お姫様はぴりぴり国に挨拶(あいさつ)にいきました。

ところが、ぴりぴり国の王様やお妃さまや王子さまがいくら待っても待っても、お姫様は白い大理石(だいりせき)でできた美しい宮殿(きゅうでん)には現(あらわ)れません。


「どうしたことか?」と知らせを待っていると、ひりひり国から伝書鳩(でんしょばと)が飛ばされてきたのです。

「わたくしには、ぴりぴり国に滞在(たいざい)するのは無理(むり)です。だって、強い日の光で、肌が真っ赤になってしまったのですもの。肌がひりひりして、今も辛(つら)いですわ」とのことでした。


ぴりぴり国の王様は残念(ざんねん)がりましたが、次の手を打ち、今度は王子様をひりひり国に行かせることにしました。


ところが、王子様も、王様とお妃さまとお姫様がいくら待っても待っても、暖かい色の煉瓦(れんが)でできたひりひり国の宮殿にはやってきません。


「どうしたことか?」と知らせを待っていると、ぴりぴり国から伝書鳩(でんしょばと)が飛ばされてきたのです。


「道が悪い所を馬車で移動(いどう)している内に、時間がたって冬になってしまった。ぴりぴり国の馬車では、冬のひりひり国には入れない。寒さでぴりぴりして、川が凍(こお)り、橋がつるつるで、危険(きけん)で渡(わた)れなかったので」とのことでした。


お姫様と王子が会えないことで、おこったのは国民でした。

もともと口が悪いので、何かあるとすぐケンカになります。


「お肌におしろいでもぬってくりゃいいんだ!かよわけりゃ、なんでも許(ゆる)されると思うな!」

「凍(こお)った川一つ渡れないなんて、弱虫もいい所だわねぇ」

「それに、滑(すべ)り止めがついていない馬車しかないなんて、技術が遅(おく)れているよな」

「あちらのお姫様、最初から来る気がなかったんじゃない?」

「なんだと!それはこちらのセリフだ!」



これらばかりではありません。

伝書鳩(でんしょばと)でお互いのことを悪く言う悪口合戦の始まりです。


「だいたいいつもぴりぴりして怒(おこ)っていて、あんたちのことは好(す)かない」

「こちらだって、いつもひりひりと神経がたっていて、一緒(いっしょ)にいると落ち着かない」

「それはあんたたちだろう?いつもぴりぴり神経(しんけい)が過敏(かびん)で、ささいなことでもきんちょうして。そんなことだと長生きできんぞ」

「なにを、平均寿命はぴりぴり国の方が長いぞ」

「ひりひり国の人間は、陽気(ようき)に歌を歌って、のどがひりひりするまで声をだせるほど、丈夫(じょうぶ)なんだ」

「いつもけがして風が吹くと、ひりひりして辛(つら)いって泣いているくせに!」

「そっちはけがが治ったあとも、ぴりぴり古傷が痛(いた)むそうじゃないか!」

「ふん!」

「ふん!」



それに心を痛(いた)めたのは、その原因(げんいん)を作ったお姫様と王子さまでした。

お姫様は、王子様に伝書鳩(でんしょばと)を飛ばしました。

「何か争(あらそ)いをおさめる良い方法はないでしょうか?」

王子様も伝書鳩(でんしょばと)で答えました。

「我が国とひりひり国は、色々なものが違う。共通のものが見つかれば、それを機(き)に仲良くなれるやも」


それだ!と思ったお姫様は、宮殿(きゅうでん)の図書館に行って、調べに調べました。

はじめは何もかも違って、何も見つかりませんでした。

ところが、古い文献(ぶんけん)に『びりびり草』と言う植物が載(の)っていました。

びりびり草は、強い植物で、寒いひりひり国にも暑いぴりぴり国にも生えているという事でした。


それを王子様に伝えると、「私に良い考えがあります」と返ってきました。


王子様は宮廷料理人(きゅうていりょうりにん)を集めて、びりびり草で料理を作りました。

口の中がびりびりするほど、辛(から)い料理(りょうり)です。


そんな辛(から)い料理(りょうり)を誰(だれ)が食べるかって?

心配いらないよ。

だって辛(から)い料理(りょうり)を食べる時、のどがひりひり、舌(した)がぴりぴりするだろう?

ふふふ、やっとわかったようだね。

そのびりびり料理で、ひりひり国とぴりぴり国は仲良くなったのさ。

 

 おいしいと感じるものを食べると、いさかいなんてどうでもよくなっちまう。

そして、それが自分の所のお姫様と王子様の努力(どりょく)の結晶(けっしょう)だと知ったら、うれしくってありがたくって、仲が悪いどころか、一番の友好(ゆうこう)を結(むす)んだ国、つまり大親友(だいしんゆう)の国になったそうだよ。

ひりひり国の国民もぴりぴり国の国民も、口の中をびりびりさせながら、お互い笑い合ったのさ。


さ ぁさぁ、もう寝な。

まだ?じゃぁ、本当にこれでしまいだよ。


お姫様と王子様は、それから結婚(けっこん)して、北と南のちょうど中間にびりびり国っていう国を建(た)てたんだとさ。

さあねぇ。その国がどこにあるのかまでは知らないよ。

びりびり料理(りょうり)を食べてみたいって?

こどもにはまだ早いから、やめておくんだね。



さぁ。寝る時間だ。

そのぴりぴりしたお目目(めめ)を早く閉(と)じないと、明日の朝、目をひりひりこすることになっちまうよ。

ねこのぬいぐるみも、おや?マーヤってつけたのかい。

マーヤもしっぱをぴりぴりしながら、ぼうやが寒さでひりひりしないように側(そば)にいるよっていってるさね。

だから、安心(あんしん)してぐっすり眠(ねむ)るんだよ、良い夢(ゆめ)を。


おやすみ、ぼうや。


おしまい



最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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織花かおりの作品
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作成:コロン様
― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかよいお話でした。 仲良くなれるのかな?と心配したけど、美味しいもので仲良くなるって、いいですね。楽しく読ませていただきました!
[良い点] こんにちは。読みました。面白い作品です。ひりひりとぴりぴりがあたかも二人の人間で、相性が悪いながらも相対しているような状況を想起しました。そしてびりびりというのが、この二人が共栄する様に仲…
2023/07/14 14:28 退会済み
管理
[一言]  ひひひ、って笑いそうなお婆さん。  ねこのぬいぐるみ。  お話にはいるまえから、イメージが掻き立てられますね。  結婚は胃袋をつかめとか、なんとか言いましたっけ? それにしては規模の大き…
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