黒魔法フ○ア
俺は固まった。そりゃもう、冬のロシアの屋外で一晩放置したバナナのように。
「聞こえなかったのか?我が配下となれ、愛内青葉よ」
自称魔王の魔への誘い。どうするよ、俺。
これはもしや庵野君(仮)なりのジョークなのだろうか。それにしても、やけにリアルな鎧や兜だが。
ジョークなのだとすれば、ほどほどにネタにノってあげつつお断りしておくのがベターな答えだろう。
「ごめん、庵野(仮)。俺は悪に魂は売れないよ」
「そうか、残念だ」
刹那、自称魔王の振り上げた掌に紫色の光が収束し───
「ならば貴様を消し、我が輩が出席番号1番となるまでだ」
───メギ○ラオン───
視界一杯に広がる、核熱の光。避けられない絶対的な『死』が迫り…
「破ぁ!!」
叫び声と共に現れた青白い光が、魔王庵野(仮)の生み出した爆発を相殺する。
「おいおいおいおいフザケてんのかコラ…」
叫び声の主は、斜め後ろの席。軽くサングラスのように色の入った眼鏡を掛けた、坊主頭の男。
「そこはメギ○ラオンじゃなくてイ○ナズ…」
「そこじゃねーだろ、ボケ!!」
命の恩人に対しても、思わず叫んでしまうような恐怖と興奮に囲まれながら。
俺の非日常が、ここから始まった。