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遂に来た!ビールだ!!

 新従業員チャップが加わって丁度1週間が経った。

 やる気溢れる新人チャップは獅子奮迅とも言える働きを見せ、店の回転率が目に見えて上がった。厨房では盛り付けを手伝い、ホールに出れば接客に配膳に会計にと東奔西走する。ルテリアによるとこの世界の識字率はそう高くないらしく、読み書き計算が出来ない人も結構いるそうなのだが、その点チャップは実家の食堂で勉強していたので即戦力になってくれた。

 彼のやる気に触発されたものか、近頃はルテリアも張り切っている様子で、実に良い傾向であると言えよう。


 ともかく、店の回転率が上がるということは、当然来客が増えるということ。チャップの働きもあり、文哉のギフトは遂にレベル7に上昇した。

 レベルアップしたギフトの詳細は以下の通り。






************************************


ギフト:名代辻そば異世界店レベル7の詳細


名代辻そばの店舗を召喚するギフト。店舗の造形は夏川文哉が勤めていた店舗に準拠する。

店内は聖域化され、夏川文哉に対し敵意や悪意を抱く者は入ることが出来ない。

食材や備品は店内に常に補充され、尽きることはない。

最初は基本メニューであるかけそばともりそばの食材しかない。

来客が増えるごとにギフトのレベルが上がり、提供可能なメニューが増えていく。

神の厚意によって2階が追加されており、居住スペースとなっている。

心の中でギフト名を唱えることで店舗が召喚される。

召喚した店舗を撤去する場合もギフト名を唱える。


次のレベルアップ:来客5000人(現在来客985人達成)

次のレベルアップで追加されるメニュー:コロッケそば


************************************






 遂に、遂に来たのだ。今回のレベルアップにより、遂にビールがメニューに追加された。

 異世界で広く流通しているエールよりも明らかに数段美味いラガービール。そこまで酒を嗜まない文哉にも分かる、これは異世界の酒呑みたちの間に革命を起こすものだと。

 チャップによるとこの異世界にもラガーは存在するそうなのだが、その製法はウェンハイム皇国という、カテドラル王国とは険悪な仲の、かつては戦争までした間柄の国が独占しているらしい。しかも製造は国が囲うブリュワーのみが行い、出来上がったビールも王侯貴族が独占して一般に流通していないのだという。憎らしいことにこのラガーが美味い為、ウェンハイム皇国は外交の場でラガーの力を使うこともあるそうだ。

 ウェンハイム皇国の王侯貴族は揃ってロクなものではない。良識を疑うような連中ばかりだ。ルテリアもチャップも口を揃えてそう言っていた。


 ともかく、辻そばのメニューに酒呑み垂涎のビールが追加された。

 ギフトレベルの上昇を確認したのが閉店後なので販売は明日からだが、しかし明日の夜は大いに荒れることだろう。流石に朝から酒呑みで溢れたりはしないだろうが、しかし夜に来店したお客は驚くだろう。それまでは料理しか出ないと思っていた店にいきなり前触れもなく美味い酒が出るのだから。しかも見た目が慣れ親しんだエールとほぼ同じなので抵抗感なく頼めるだろうし、飲めばその美味さに驚き周囲に喧伝する筈だ。

 明日を経て、その次の日の来客は爆発的に増加するだろう。皆がビールを飲みたいと辻そばを訪れること請け合いだ。これからしばらく、夜の営業は戦争になる。ルテリアにもチャップにも、その覚悟をしてもらわなければならない。まだ加入したばかりのチャップには少々酷な話だが、それでもやってもらわなければ店は回らない。彼も立派なこの店の戦力、しかも男手なのだから期待を寄せるのは当然だろう。


 しかもだ、次のレベルアップではコロッケそばが追加される。カラリと揚がったサクサクのコロッケも、そばつゆを吸って少ししんなりとしたコロッケもビールに合う。それはもう抜群に合う。これが追加されればいよいよもって異世界の人たちのビール熱は最高潮に達するだろう。その歓喜を想像すると嬉しい反面、自分の手腕で乗り切れるのだろうかと怖くなるくらいだ。


 だが、文哉が立ち止まることはない。この世界の人たちに辻そばを大いに楽しんでもらう。それこそが文哉の望みなのだから。


※西村西からのお願い※


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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